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2016
05.22

金持ちの御曹司~危機管理~

チンとエレベーターが鳴って閉まりかけた扉の向う側から大きな体を捻じ込んで来たのは道明寺。完璧なセクシーさを身につけた男。
その表情はまさに捕食者の顔だった。

「牧野、おまえなんで俺から逃げてんだよ!」
「べ、別に逃げてなんかないわよ?」
「じゃあ、なにこそこそしてんだよ!」
「別にこそこそなんてしてないわよ?」
「それより、なんであんたがここにいるのよ?」
「あぁ?急いでんだよ・・」
「あんた急いでるんなら役員専用エレベーター使いなさいよ!」
うるせぇなぁ・・
おまえと二人っきりになりたいからわざわざこっちのエレベーターに乗ったんだよ!


チン・・
エレベーターの扉が開いたが誰もいなかった。
「ボタンを押し間違えた?」
ふたたびドアがぴたりと閉じられると2人だけの世界だった。

・・・たまんねぇ・・・
あのエレベーターでのことが思い出された。
そうだ・・あの鏡張りのエレベーターでの一夜だ。
想像しただけで漏れそうになる。
「ねえ、急いでるって何かトラブルが起きたの?」
ああ。
俺のスラックスのなかで起きてる。


いつもこいつに振り回されっぱなしの俺。
牧野にはしょっちゅうすきを突かれていて、なかなか思い通りにいかない。
・・ったく油断のならない女だよなこいつは。
たまには俺がこいつを振り回してみたいから執務室から追っかけてきた。

「なあ牧野・・」

ピンポンパンポ~ン~♪

『 こちらは道明寺ビル防災管理センターです。 
本日15時より予定通り社内避難訓練を開始いたします。
各部署で参加者リストにお名前が記載されている方は開始時刻10分前になりましたら1階エントランスロビーの指定場所までお集まり下さい。なお火元責任者の方は20分前にお集まり下さい 』

♪~ピンポンパンポ~ン

 


知ってる。

参加者リストにこいつの名前もあった。
それから各フロアに必ずひとりはいる火元責任者。
今年から牧野はその火元責任者の副担当になった。

オフィスビルの場合収容人数が50名以上の場合1名以上の防火管理者を置かなければいけない決まりがあるが、その下で補助する役割が火元責任者だ。防火管理者と一般社員の間のパイプ役。ま、連絡係ってことだよな。
何に対してもやる気満々のこいつは責任感も人一倍強い。
そんな火元責任者はフロアの入口にある赤いプレートに名前が書かれている。
赤なんてまるで赤札を思い出すから縁起が悪い気がするが仕方ねぇ。

「あ、あたしこれからこれに参加するの」
「おまえ、訓練に参加すんのか?」会話の流れから念のため聞いとく。
「そうよ?道明寺も参加する?」

いきなり支社長の俺が現れたら避難訓練になんてなんねぇと思うがいいのかよ?
・・ってか避難訓練って何すんだ?
俺は今まで一度も参加したことがないがいいのかそれで?

「避難訓練ってなにすんだよ?」
「今回はねぇ防火扉についての講習があって・・」

静かに下降を続けていくエレベーターがいきなりがたんと止まった。
「きゃっ!」
ぱっと照明が消え、非常用のライトが点灯した。
「牧野っ!大丈夫か?」
司は止まった拍子にバランスを崩して倒れ込こみそうになったつくしを抱きとめた。

まじかよ・・
なんだよこれ・・

今回ばかりは俺はなにも仕込んでなんかない・・
マジで閉じ込められた俺と牧野。
避難訓練がマジもんの訓練に変わるとは流石の俺も思わなかった。
なのに・・俺の体は不謹慎にもあんときの夜を思い出してヤバイ。
モノが猛烈に硬くなった。
今、ここでヤッたら牧野どのくらい怒るか?
試してみるか?
司は抱きとめたついでとばかりにつくしの首筋に鼻をこすりつけて匂いを嗅いだ。
いや、ダメだ。真夜中ならまだしも真昼のエレベーターじゃさすがの俺もこいつの為には危険を犯すことは出来ない・・・
でもちょっとくれぇいいだろ?

司は離れようするつくしの背中に手をまわすと、かわいらしいお尻をギュッと掴んだ。
キュッと引き締まった牧野の尻は最高だ!まるで俺の手に収まるように作られたこの尻!
サイズも形も、もちろん色も、もう最高!
「ち、ちょっと!道明寺なにしてるのよ!」
「存在確認・・」牧野の尻がここにあるかどうか・・
「な、なによ、そ、存在確認って・・」
つくしはもがいて司の腕から抜け出そうとした。
だが、司は逃がすものかと抱きしめた。
「離せ!道明寺っ!」
離すもんか・・・って俺はいつから尻フェチになったんだ?
いや、俺は尻フェチなんかじゃねぇ・・牧野つくし全部のフェチだ。
それにしても牧野の抱き心地は最高だ!ちょうど股間のあたりに当たるこいつの腹や胸板に押し付けた胸の柔らかい感触・・もうパンツの中でムスコが早く出してくれって痛てぇのなんの・・
今が真昼間じゃ無かったらあんとき以上に激しいのを一発・・
だが相変らず俺の腕の中のこいつは唸り声を上げて離せを連発中だ。
そんなに暴れんな!ひっくり返ったらどうすんだよ!
なんならこのまま体重を浴びせかけて倒してみるか?
オラ、どうだよ牧野?
司はわざと体の力を抜くとつくしに体重を預けた。
「ちょ、道明寺っ、お、重いっ・・」
「こ、こんなことしてる場合じゃない・・でしょ!」
ヒールを履いた脚が必死に踏ん張っていやがる。


チッ・・

仕方ねぇ・・・

たまにはこいつに俺のカッコいいとこでも見せてやるか?

「牧野、心配すんな。俺がついてるんだ問題ない。安心しろ」

こんな口調で危機管理能力に長けてることを分からせた。
知力・体力・時の運っての誰が言ったか忘れたが、体力だけは昔からすこぶるある。
何しろこいつを求める17の俺はどんなに大けがを負わされても犬なみと言われた回復力で立ち直ってきた。

司は誰に見られているわけでもなかったが、ハリウッドのアクションスター並の手際の良さでエレベーターの閉じられた扉を指でこじ開けようとしていた。

「ちょっと道明寺!なにしてんのよ!危ないからやめてよ!」
「心配すんな。開けたからって落ちやしねぇよ・・」

しかし俺たちは昔っからエレベーターには縁があるな。
何しろ初デートがエレベーターの中での一夜・・
司は内側の扉をこじ開けると、外側の扉をこじ開けた。



扉をこじ開けて見れば、エレベーターはフロアとフロアの間に止まっていた。

司は携帯電話を取り出した。
「ああ。俺だ。緊急事態だ。5分で道明寺ビルまで来い」
「道明寺・・」と心もとない牧野の声。
「心配すんな。救援を呼んだ」

救援・・
頼んだところを知ったらきっとこいつは怒り狂うだろうが、そんなこと知ったこっちゃねぇ。
「取りあえずは、ここから出るか・・」
「え?」
「大丈夫だ。心配すんな俺が先に出ておまえを受け止めてやるから」
司はエレベーターの床に腰を降ろし、下の階へと長い足を降ろすとするりと器用に体を外へと滑らした。

「し、支社長っ?大丈夫ですか?」
「ああ、エレベーターが急に止まった」
停止中のエレベーターの扉からいきなり出て来た俺に驚く社員の男。
「おい、おまえ。手を貸せ。中に人が乗ってる」
「は、はい!」
「だ、誰か呼んできましょうか?」
「いやいい・・」
「おい、降りてこい」
司は両手をエレベーターの中の人物に向かって差し伸べた。
「受け止めてやるから心配すんな」
女の脚が見えたかと思えば司はつくしをさっと抱きあげるとサンキュと、ひと言残して長い廊下の先を目指して歩き出した。
あっと言う間の出来事とアクション映画のワンシーンにありがちな光景を目の当たりにした男性社員は、ハリウッド俳優なみのカッコよさを持つ司の後ろ姿に
「カッコいいってこう言うことなんだ・・」
「・・けど、あの女性って誰なんだ?」
「どっかで見たような気もするけど・・」
と呟いた。




「牧野、ここからだと上に上がったほうがいいな」
「え?」
「上だよ、上」

まるでアクション映画のワンシーン・・
男が助けた女を抱き上げて階段を上り救援を待つ・・
ちくしょう!
やっぱ記録として残すべきだったか?
撮影班でも呼べばよかったか?
これ記録映画だよな?
ドキュメンタリーだよな?
タイトルは 『 沈黙のエレベーター 』・・・
今回はなんにもヤッてねぇからな・・
いや、なんか違うな・・

まあいい。


司は何がなんだか分からなくなっているつくしの体を抱きかかえたまま長い廊下の先にある非常階段を目指した。

「ち、ちょっと道明寺、どこ行くのよ?」
「ねぇ・・避難訓練はどうするの?」
「あほか、避難訓練なら今やってるじゃねぇかよ?」

まさにリアル避難訓練・・
企業の緊急事態においてのリスクマネジメントとしての考え方としては初動対応が肝心だ。
こいつがまだぼんやりしてる時を狙うのが一番いいに決まってる。
目をぱちぱちさせて俺を見上げる牧野はアホみてぇにかわいい。

世の中には3種類のオスがいる。
少年。男性。そして男。
少年は文字通りガキ。
男性は性別として女と区別するための呼び名。
男・・男らしいとか、男気があるとか・・
いまさに今の俺だろ?
牧野、そんな俺を見て惚れ直したか?


司はつくしを抱いて非常階段を最上階まで上ると屋上へと出た。

「悪りぃな、急なことで」

司は抱きかかえたつくしが腕のなかでじたばたする前にヘリコプターへと近づくと
押し込んでから自分もヘリに乗りこんだ。
「出してくれ」
「ちょ・・ちょっと!ま、待ってよ!」
「な、なんでヘリ?」
エンジンの轟音に負けじとつくしは叫んだ。
「どこ行くのよ!」

「あぁ?俺とおまえの思い出の場所」






***






「南の島・・久しぶりだよな・・」
俺と牧野がはじめてを過ごした場所・・
「・・・・・」
「なんだ、怒ってんのかよ?」
「当たり前じゃない!」
「避難訓練どうするのよ?」
「会社になんて説明するのよ!あたし火元責任者で訓練に参加する予定だったんだからね!」
道明寺のばか!
「いいじゃねぇかよ。避難訓練しただろ?」
マジもんの訓練したじゃねぇかよ!
「いったい何から避難したっていうのよ!」
「危険から避難したじゃねぇかよ?」
「それより・・おまえ火元責任者なんだろ?」
「ならちょうどいいじゃねぇかよ?」
「何がちょうどいいのよっ!」
「・・俺の火・・してくれよ・・」
司は何かを含んだように言葉をぼかすとつくしを見つめた。
「え?」
「だから俺の情熱の炎を何とかするのがおまえの責任」
「な・・牧野・・」
「俺もうこんなになって・・」
司は見事な持ち物をスラックスの上から触らせようとした。
「なにすんのよ!この変態っ!」
「なんだよ?その口の利き方は!その変態を好きなのはおまえだろうが!」



そうは言っても2人は愛し合う恋人同士。
つくしもそんな司には今更だ。



恐ろしいくらいに惹きつけられたガキの頃の思いと今の思いは同じ。
一番欲しくて手に入らなかったものを手にすることが出来た島・・
俺たち2人にとってここは何ものにも代えがたい神聖な場所だ。
何があってもこの場所に来れば2人の思いは同じはずだ。

司は押し黙り、射るような瞳でつくしを見つめた。
片方の眉が上がり、薄い唇がカーブを描くとあの日を思い出したかのように
愛してる、と口を開いた。
つくしの瞳が輝くと、司の首に回された腕はゆっくりと彼の頭を引き寄せた。


俺の情熱の炎をうまく管理してくれるのも火元責任者の責任だろ?
俺の中の情熱の炎は一生消えることはない。
胸が締め付けられるほどのこの思いはこれから先もずっと俺の心の中にあるはずだ。
俺の炎を消すにはおまえの炎でしか消すことが出来ない・・
けど俺とおまえの炎は消えることは決してない・・
決して消えることのない炎・・それは永遠だ・・

これから先何かあっても俺たち2人はこの島に戻ればまたいちからやり直せるよな?
司の願いはただひとつだけ。

それはあのとき果たせなかった2人の願い・・

永遠という時の流れの中で2人で抱き合って眠ることだ。

愛してる・・・牧野・・

これからもずっと・・








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