目から入れる薬物と言われる男が今その目で見ているのは、インターネットの動画共有サイト。そこに「あなたへのおすすめ」といって表示されたのは「桃太郎」というタイトルの動画だが、桃太郎と言えば『むかしむかしあるところに、おじいさんと、おばあさんがいました』で始まる司でも知っている日本の昔話だ。
だが昔話というのは生物的にも科学的にも….いや、どう考えても全てに於いて納得がいかない話ばかりだが、それを恋人に言うと、
「あのね、昔話っていうのは、おとぎ話なの。それが本当かどうかは関係ないの。昔話は昔話で時代や場所の設定はないの。深く考えることなくその時を楽しめばいいお話なの。
ほら、コンサートとか演奏会に行ってその時その音楽を楽しむのと同じ。昔話っていう物語はその瞬間だけに存在しているものなのよ?」
という答えが返ってきた。
だから司はそんなものかと頷いたが、それにしても何故サイトは昔話を司に勧めてきたのか。
司は不思議に思いながらも興味本位でその動画をクリックした。
すると動画の初めに現れた文字はただの「桃太郎」ではなく「アダルト桃太郎」。
「….アダルト桃太郎?」
司は呟くと胡散臭そうに画面を眺めた。
それはアダルトと付く動画はエロに決まっているからだ。
司はそういったものに興味はない。だから見たことがない。
……いや。いつだったか総二郎が貸してくれたDVDが洋物のその手のモノで、そのことを知らずに見たことがあったが、それを恋人に知られ酷く軽蔑された。
だから「アダルト桃太郎」というタイトルの動画を消すと本来見たいと思っていたビジネスに関する動画を見た。だが見終わった後、再び「アダルト桃太郎」がお勧め動画として画面に表示された。
司は鬱陶しさを感じ動画共有サイトを閉じようとした。
だが少しだけ気になった。
だから好奇心から、ほんの少しだけという思いで「おすすめ」動画をクリックした。
むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「おや、まあ….なんと立派な桃でしょう。この桃をおじいさんへの土産に持って帰りましょう。きっとおじいさんは喜ぶわ」
と言って、おばあさんはその桃を川から引き上げました。
そして洗濯物と一緒に家に持ち帰ると、おじいさんが山から戻ってくるのを待ちました。
「おばあさん。今帰ったよ」
「おじいさん、お帰りなさい。ねえ、訊いて下さい。今日川で洗濯をしていたら川上から大きな桃が流れてきたんですよ。だからおじいさんと一緒に食べようと思って引き上げて持って帰りました」
おばあさんは、そう言って包丁で桃を切ろうとしました。
すると桃は、おばあさんが切る前にパッカーンとふたつに割れたのです。
そしてそこにいたのは男の子の赤ん坊で、大きな声で泣いていました。
司が見ている動画は「アダルト桃太郎」と言うタイトルだが一体どこがアダルトなのか。
登場人物は年老いた夫婦と赤ん坊でエロ動画には程遠い昔話の通りの桃太郎だ。
だから、そのことに若干だが残念という思いを心の中に抱きつつ動画を見るのを止めようとした。だがそう思うも、子供の頃に昔話を読み聞かせてもらったことがなかった司は、この際だと桃太郎の動画を最後まで見ることにしたが、ここ数日間は忙しい日が続き寝不足だったことから瞳を閉じると眠りに落ちていった。

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だが昔話というのは生物的にも科学的にも….いや、どう考えても全てに於いて納得がいかない話ばかりだが、それを恋人に言うと、
「あのね、昔話っていうのは、おとぎ話なの。それが本当かどうかは関係ないの。昔話は昔話で時代や場所の設定はないの。深く考えることなくその時を楽しめばいいお話なの。
ほら、コンサートとか演奏会に行ってその時その音楽を楽しむのと同じ。昔話っていう物語はその瞬間だけに存在しているものなのよ?」
という答えが返ってきた。
だから司はそんなものかと頷いたが、それにしても何故サイトは昔話を司に勧めてきたのか。
司は不思議に思いながらも興味本位でその動画をクリックした。
すると動画の初めに現れた文字はただの「桃太郎」ではなく「アダルト桃太郎」。
「….アダルト桃太郎?」
司は呟くと胡散臭そうに画面を眺めた。
それはアダルトと付く動画はエロに決まっているからだ。
司はそういったものに興味はない。だから見たことがない。
……いや。いつだったか総二郎が貸してくれたDVDが洋物のその手のモノで、そのことを知らずに見たことがあったが、それを恋人に知られ酷く軽蔑された。
だから「アダルト桃太郎」というタイトルの動画を消すと本来見たいと思っていたビジネスに関する動画を見た。だが見終わった後、再び「アダルト桃太郎」がお勧め動画として画面に表示された。
司は鬱陶しさを感じ動画共有サイトを閉じようとした。
だが少しだけ気になった。
だから好奇心から、ほんの少しだけという思いで「おすすめ」動画をクリックした。
むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「おや、まあ….なんと立派な桃でしょう。この桃をおじいさんへの土産に持って帰りましょう。きっとおじいさんは喜ぶわ」
と言って、おばあさんはその桃を川から引き上げました。
そして洗濯物と一緒に家に持ち帰ると、おじいさんが山から戻ってくるのを待ちました。
「おばあさん。今帰ったよ」
「おじいさん、お帰りなさい。ねえ、訊いて下さい。今日川で洗濯をしていたら川上から大きな桃が流れてきたんですよ。だからおじいさんと一緒に食べようと思って引き上げて持って帰りました」
おばあさんは、そう言って包丁で桃を切ろうとしました。
すると桃は、おばあさんが切る前にパッカーンとふたつに割れたのです。
そしてそこにいたのは男の子の赤ん坊で、大きな声で泣いていました。
司が見ている動画は「アダルト桃太郎」と言うタイトルだが一体どこがアダルトなのか。
登場人物は年老いた夫婦と赤ん坊でエロ動画には程遠い昔話の通りの桃太郎だ。
だから、そのことに若干だが残念という思いを心の中に抱きつつ動画を見るのを止めようとした。だがそう思うも、子供の頃に昔話を読み聞かせてもらったことがなかった司は、この際だと桃太郎の動画を最後まで見ることにしたが、ここ数日間は忙しい日が続き寝不足だったことから瞳を閉じると眠りに落ちていった。

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おじいさんとおばあさんは、赤ん坊に桃太郎と名前を付けて大切に育てました。
やがて20歳になった桃太郎は眉目秀麗な青年に成長しました。そして自分の名前の桃太郎はダサイからと司に変えました。
そして司に名前を変えた桃太郎は鬼ヶ島に住む悪い鬼の話を聞いて、その鬼を退治するため鬼ヶ島を目指すことになりました。
「じいさん、ばあさん。俺は鬼ヶ島にいる鬼を退治に行く。そこで鬼が持っている宝物を持ち帰る」
そう言った司に、おばあさんは、きび団子作って持たせました。
そしてその旅に同行することになったのは、犬田あきら、猿村類、雉沼総二郎の三人です。
三人は司の幼馴染みで見た目が美しいこともですが腕力にも自信があります。
四人は船に乗って鬼が住む島に向かいました。そして辿り着くと上陸して悪い鬼を探しました。しかし鬼はどこにもいませんでした。
「鬼。居ねぇな」
「そうだな」
「まさか俺らが来ると知って怖くて逃げ出したとか?」
あきらと類と総二郎はそう言って「どうする?そろそろ日が暮れるぞ?」と司を見ました。
するとその時でした。
「おい、あれ見ろよ!森の向こうに明かりが見えるぞ!」
と、あきらが言ったので三人はあきらが指差した方を見ました。すると森の奥深くに小さな明かりと煙が上がっているのが見えました。だから四人はその方向へ向かって駆け出しました。
そして森が開けた場所に見たのは、明かりが灯った一軒の小さな家だったのです。
「おい。ここが鬼の家か?けど『Bar鬼ヶ島』って書いてあるぞ?」
総二郎はそう言って扉に掛けられた木片を指差しました。
「へえ。ここの鬼ってバー経営してるんだ。それも営業中だって。おもしろいね」
類はそう言って笑いました。
しかし司はそんな類を睨み、「類。おもしろいもなにも鬼がバーを経営するわけねぇだろうが。そんなことよりさっさと鬼退治をして宝を持ち帰るぞ!それにここに島じゅうの鬼が集まってんなら、ちょうどいい。一気に退治しちまおうぜ!」と言って店の扉を勢いよく開けました。
するとそこにいたのは頭に小さな二つの角を生やした若い鬼の女。
「いらっしゃいませ」と言って司たちを迎えました。
四人はまさか鬼が若い女だとは思いもしませんでした。
それに鬼と言えば大きな男だと思っていたので、どう見ても自分達よりも若く背の低い姿に驚きました。
「あら。人間のお客さんなんて珍しいわね?」
女の鬼はそう言ってどうぞ、おかけになってと座ることを勧めました。
「お前、鬼か?」
司は訊きましたが、ぶっきらぼうなその言い方に鬼はムッとして、「ええ。私の名前は鬼沢つくし。この島でひとり暮らししている鬼だけど?」と答えました。
「へえ…そうなんだ。君、この島でひとり暮らしなの?寂しくない?」
類は村の娘たちも見たことがない天使の微笑みを浮べてカウンターに近づきスツールに腰を下ろしました。
するとその瞬間鬼は恥ずかしそうに頬を赤く染めたのです。
「なんだ。女の鬼か。それにしてもなんだか可愛いじゃん」
総二郎もそう言って近づくと「あ、そうだ。良かったらこれ食べない?」と言って司からもらっていた、きび団子を差し出しました。
「わあ、美味しそう!……でもいいの?」
鬼は総二郎の手に乗せられている団子を見て上目遣いで訊きました。
「いいんだよ、総二郎は食い物に対して興味がないから」
と類が答えると鬼は遠慮しながらも、「ありがとう!」と言って嬉しそうに総二郎から、きび団子を受け取りました。
するとあきらも、「俺のもやるよ」と言ってカウンターに近づき席に座ると、きび団子を差し出しました。
すると鬼は嬉しそうに「ありがとう」と礼を言いました。
そして、あきらと類と総二郎は、それぞれ飲み物を頼むとカウンターに座って鬼と話をはじめましたが、その光景を見ていた司は面白くありませんでした。

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やがて20歳になった桃太郎は眉目秀麗な青年に成長しました。そして自分の名前の桃太郎はダサイからと司に変えました。
そして司に名前を変えた桃太郎は鬼ヶ島に住む悪い鬼の話を聞いて、その鬼を退治するため鬼ヶ島を目指すことになりました。
「じいさん、ばあさん。俺は鬼ヶ島にいる鬼を退治に行く。そこで鬼が持っている宝物を持ち帰る」
そう言った司に、おばあさんは、きび団子作って持たせました。
そしてその旅に同行することになったのは、犬田あきら、猿村類、雉沼総二郎の三人です。
三人は司の幼馴染みで見た目が美しいこともですが腕力にも自信があります。
四人は船に乗って鬼が住む島に向かいました。そして辿り着くと上陸して悪い鬼を探しました。しかし鬼はどこにもいませんでした。
「鬼。居ねぇな」
「そうだな」
「まさか俺らが来ると知って怖くて逃げ出したとか?」
あきらと類と総二郎はそう言って「どうする?そろそろ日が暮れるぞ?」と司を見ました。
するとその時でした。
「おい、あれ見ろよ!森の向こうに明かりが見えるぞ!」
と、あきらが言ったので三人はあきらが指差した方を見ました。すると森の奥深くに小さな明かりと煙が上がっているのが見えました。だから四人はその方向へ向かって駆け出しました。
そして森が開けた場所に見たのは、明かりが灯った一軒の小さな家だったのです。
「おい。ここが鬼の家か?けど『Bar鬼ヶ島』って書いてあるぞ?」
総二郎はそう言って扉に掛けられた木片を指差しました。
「へえ。ここの鬼ってバー経営してるんだ。それも営業中だって。おもしろいね」
類はそう言って笑いました。
しかし司はそんな類を睨み、「類。おもしろいもなにも鬼がバーを経営するわけねぇだろうが。そんなことよりさっさと鬼退治をして宝を持ち帰るぞ!それにここに島じゅうの鬼が集まってんなら、ちょうどいい。一気に退治しちまおうぜ!」と言って店の扉を勢いよく開けました。
するとそこにいたのは頭に小さな二つの角を生やした若い鬼の女。
「いらっしゃいませ」と言って司たちを迎えました。
四人はまさか鬼が若い女だとは思いもしませんでした。
それに鬼と言えば大きな男だと思っていたので、どう見ても自分達よりも若く背の低い姿に驚きました。
「あら。人間のお客さんなんて珍しいわね?」
女の鬼はそう言ってどうぞ、おかけになってと座ることを勧めました。
「お前、鬼か?」
司は訊きましたが、ぶっきらぼうなその言い方に鬼はムッとして、「ええ。私の名前は鬼沢つくし。この島でひとり暮らししている鬼だけど?」と答えました。
「へえ…そうなんだ。君、この島でひとり暮らしなの?寂しくない?」
類は村の娘たちも見たことがない天使の微笑みを浮べてカウンターに近づきスツールに腰を下ろしました。
するとその瞬間鬼は恥ずかしそうに頬を赤く染めたのです。
「なんだ。女の鬼か。それにしてもなんだか可愛いじゃん」
総二郎もそう言って近づくと「あ、そうだ。良かったらこれ食べない?」と言って司からもらっていた、きび団子を差し出しました。
「わあ、美味しそう!……でもいいの?」
鬼は総二郎の手に乗せられている団子を見て上目遣いで訊きました。
「いいんだよ、総二郎は食い物に対して興味がないから」
と類が答えると鬼は遠慮しながらも、「ありがとう!」と言って嬉しそうに総二郎から、きび団子を受け取りました。
するとあきらも、「俺のもやるよ」と言ってカウンターに近づき席に座ると、きび団子を差し出しました。
すると鬼は嬉しそうに「ありがとう」と礼を言いました。
そして、あきらと類と総二郎は、それぞれ飲み物を頼むとカウンターに座って鬼と話をはじめましたが、その光景を見ていた司は面白くありませんでした。

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「おいお前ら!俺たちは鬼退治に来たんだぞ!それなのに何を楽しく鬼と酒飲んでんだ!」
司は他の三人が楽しそうにグラスを傾けている様子に腹が立って言いました。
しかし三人は司のことを無視しました。
「お前ら……俺たちの友情よりその鬼と飲む方が大事なのか?」
すると総二郎が言いました。
「ああ。つくしちゃんとこうして飲む方が楽しい」
「そうだ。総二郎の言う通りだ。少なくとも野郎ばっかで飲むより楽しい。それにつくしちゃんの食いっぷりは実にいい。女が美味そうに食べる姿は見ていて気持ちがいい」
あきらは、きび団子を口に入れ美味しいと言った鬼を見て頷きました。
「おれもそう思う。食べるつもりもないサラダをつついている女よりよっぽどいい」
類はそう言って手にしていたウィスキーを飲み干し、おかわりを頼みました。
「おいおい類。お前、麦茶みてぇにウィスキー飲んでるが大丈夫か?
それにしても、いつも寡黙な類がここまでお喋りになるってことは……もしかして類。お前つくしちゃんに惚れたんじゃねえの?」
総二郎の問いかけに類は頷きました。
そして「俺。鬼沢つくしのことが好きかも」と答えました。
「マジか?おい鬼沢つくし。類は女に興味がなかった。そんな男を夢中にさせるなんて、あんたスゲー女だな」
「そうか。ついに類も恋に落ちたか。いやこりゃめでたい!つくしちゃん。もっとこいつに飲ませてやってくれ!」
あきらと総二郎は口々につくしを褒めました。
ところが司は違いました。
「フン。こんな女のどこがいいんだよ。俺には全く理解出来ねえ。類。お前よっぽどゲテモノ趣味なんだな」
鬼沢つくしは司の言葉にムッとした表情を浮かべました。
「おい司。類が好きになった女だぞ?そんな言い方するな。つくしちゃんゴメンな。司は昔から口が悪い男だ。この男のことは気にしないでくれ」
あきらはそう言って、「そうだ。つくしちゃんウィスキーの水割り作ってくれないか?ここにある一番高級なウィスキーな。ほれ司。お前も飲んで落ち着け」と言いました。
つくしはウィスキーの水割りを作るとカウンターに置きました。
カウンターに近づいた司はグラスを掴むとグイッと一気に煽りました。
しかし司は「何だよこれは!」と言って顏を歪めました。
「何だよって口の悪い男に合わせたブレンドよ?」
つくしが作ったウィスキーの中にはスパイスのナツメグが大量に入れられていたのです。
「一体何が気に入らないのか知らないけどね、アンタのその態度は失礼極まりないのよ!」
そう言ったつくしはカウンターの中から司を睨みつけました。
「何が気に入らないかって?そんなモン決まってるだろうが!お前の態度が気に入らねえんだよ!」
「だから態度って何よ!」
「類に色目なんぞ使いやがって!」
「色目ですって?いつ私が色目を使ったって言うのよ!?難癖つけるの止めてよね!」
「難癖だと?」
「そうよ!私は色目なんて使ってないわよ!あ、もしかしてアンタ類さんのことが好きなんでしょ?だから類さんが私のことを好きだって言ったことが許せないのね!だから私のこと侮辱するのね?」
つくしはそう言ってニヤッと笑いました。
「阿呆!俺はストレートだ!類のことなんぞ好きじゃねえ!」
たとえ類が司のことが好きだとしても、司は男には全く興味はない。
「そうですか。それは失礼いたしました。それじゃあ何が理由か知らないけど私に突っかかるの止めてくれない?」
「お前…クソ生意気な女だな….」
「はいはい。クソ生意気で悪うございました!でも生意気だからってアンタに迷惑かけた覚えはないけど?それに私たちは今日初めて会ったばかり。だから迷惑かけようがないと思うけど?」
「迷惑かけようもなにも、その言い方が生意気だって言うんだ!」
あきらと類と総二郎はふたりのやり取りを傍で見ていました。
しかし、司がカウンターにいる鬼沢つくしの腕を掴んだのを見て、もしかして手を上げるのではないかとハッとしました。止めなければならないと思いました。
しかしそれは間違いでした。司は掴んだ腕を引き寄せ鬼沢つくしにキスをしたのです。
「どうだよ?ナツメグ入りのウィスキーの味は?」
「…..パンチが利いてていいんじゃない?だって刺激のない恋なんて恋じゃないもの」
「言うじゃねえか」
司はニヤリと笑みを浮べました。
すると女は司をまっすぐ見つめて言いました。
「ええ。それに私、恋をするなら対等だと思ってるから」
司はそこで目が覚めた。
「アダルト桃太郎」の動画は終わっていて結局最後まで見ることはなかった。
その代わり、夢で司オリジナルの桃太郎を見た。その夢には生意気な小鬼が出て来て、司はその鬼と恋に落ちていた。
そして司は実際には味わっていないとしても、唇にナツメグの味を感じていた。
それは、つい先日恋人がハンバーグを作ってくれた時のことだ。
司はハンバーグのたねを混ぜようとしている恋人の背後に立ち抱きしめようとした。
だが司の腕はナツメグをボウルの中に振り入れようとした恋人の腕に当たり、ナツメグはボウルではなくキッチンの天板に撒かれた。するとそこには甘くエキゾチックな香りが漂った。
ナツメグは大量に摂取すると、交感神経系に影響を与え、最終的にめまいや幻覚を示すことがある。それに興奮作用があると言われている。だからあの時の司はハンバーグをこねようとしていた恋人を抱きしめキスをした。
だがそれはナツメグのせいではなく、ただキスしたかったからだが、ハンバーグが焼かれることがなかったのはナツメグが作用したのかもしれない。
司は無性に恋人の作ったハンバーグが食べたくなった。
胡椒とナツメグを入れた肉をこねて、丸めて、フライパンで焼くだけのシンプルなハンバーグが。
だから携帯電話と掴むと恋人に電話をした。
「もしもし?今晩うちに来るんだろ?」
「______」
「食べたいものがある。リクエストしてもいいか?」
「______」
「ハンバーグ。お前の作ったハンバーグが食べたい」
司はもし誰かに、あなたへのおすすめがあります、と言われたらこう答えることに決めた。
自分で考え自分で判断して自分がしたいことをするから勧めてもらう必要はないと。
しかし、そんな男も相手が恋人となると違う。
「らっきょう?」
最近恋人はやたらと、らっきょうを喰えと勧める。
それは血液がサラサラになるからという理由だが、実は恋人の今のマイブームはお手製のらっきょうを漬けることだ。
だから今日もジャムの空き瓶に入れた、らっきょうを抱えて来るはずだ。
「___ああ、分かった。喰うよ。喰う。だからひと瓶でもふた瓶でもいい。持って来い」
司はそう答え電話を切ると、パソコンの電源も切った。
そして恋人が来るまでの間にシャワーを浴びることを決めるとバスルームへ向かったが、今夜はどんな愛し方にしようかと考えていた。
実はこう見えて司は股関節が柔らかい。だから司にしか出来ない体位というものがある。
だが今まで恋人の身体のことを考え、その体位は封印していたが、大量のらっきょうを受け入れる代わりに今夜はそれを試してみるのも悪くないのではと思い始めていた。

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司は他の三人が楽しそうにグラスを傾けている様子に腹が立って言いました。
しかし三人は司のことを無視しました。
「お前ら……俺たちの友情よりその鬼と飲む方が大事なのか?」
すると総二郎が言いました。
「ああ。つくしちゃんとこうして飲む方が楽しい」
「そうだ。総二郎の言う通りだ。少なくとも野郎ばっかで飲むより楽しい。それにつくしちゃんの食いっぷりは実にいい。女が美味そうに食べる姿は見ていて気持ちがいい」
あきらは、きび団子を口に入れ美味しいと言った鬼を見て頷きました。
「おれもそう思う。食べるつもりもないサラダをつついている女よりよっぽどいい」
類はそう言って手にしていたウィスキーを飲み干し、おかわりを頼みました。
「おいおい類。お前、麦茶みてぇにウィスキー飲んでるが大丈夫か?
それにしても、いつも寡黙な類がここまでお喋りになるってことは……もしかして類。お前つくしちゃんに惚れたんじゃねえの?」
総二郎の問いかけに類は頷きました。
そして「俺。鬼沢つくしのことが好きかも」と答えました。
「マジか?おい鬼沢つくし。類は女に興味がなかった。そんな男を夢中にさせるなんて、あんたスゲー女だな」
「そうか。ついに類も恋に落ちたか。いやこりゃめでたい!つくしちゃん。もっとこいつに飲ませてやってくれ!」
あきらと総二郎は口々につくしを褒めました。
ところが司は違いました。
「フン。こんな女のどこがいいんだよ。俺には全く理解出来ねえ。類。お前よっぽどゲテモノ趣味なんだな」
鬼沢つくしは司の言葉にムッとした表情を浮かべました。
「おい司。類が好きになった女だぞ?そんな言い方するな。つくしちゃんゴメンな。司は昔から口が悪い男だ。この男のことは気にしないでくれ」
あきらはそう言って、「そうだ。つくしちゃんウィスキーの水割り作ってくれないか?ここにある一番高級なウィスキーな。ほれ司。お前も飲んで落ち着け」と言いました。
つくしはウィスキーの水割りを作るとカウンターに置きました。
カウンターに近づいた司はグラスを掴むとグイッと一気に煽りました。
しかし司は「何だよこれは!」と言って顏を歪めました。
「何だよって口の悪い男に合わせたブレンドよ?」
つくしが作ったウィスキーの中にはスパイスのナツメグが大量に入れられていたのです。
「一体何が気に入らないのか知らないけどね、アンタのその態度は失礼極まりないのよ!」
そう言ったつくしはカウンターの中から司を睨みつけました。
「何が気に入らないかって?そんなモン決まってるだろうが!お前の態度が気に入らねえんだよ!」
「だから態度って何よ!」
「類に色目なんぞ使いやがって!」
「色目ですって?いつ私が色目を使ったって言うのよ!?難癖つけるの止めてよね!」
「難癖だと?」
「そうよ!私は色目なんて使ってないわよ!あ、もしかしてアンタ類さんのことが好きなんでしょ?だから類さんが私のことを好きだって言ったことが許せないのね!だから私のこと侮辱するのね?」
つくしはそう言ってニヤッと笑いました。
「阿呆!俺はストレートだ!類のことなんぞ好きじゃねえ!」
たとえ類が司のことが好きだとしても、司は男には全く興味はない。
「そうですか。それは失礼いたしました。それじゃあ何が理由か知らないけど私に突っかかるの止めてくれない?」
「お前…クソ生意気な女だな….」
「はいはい。クソ生意気で悪うございました!でも生意気だからってアンタに迷惑かけた覚えはないけど?それに私たちは今日初めて会ったばかり。だから迷惑かけようがないと思うけど?」
「迷惑かけようもなにも、その言い方が生意気だって言うんだ!」
あきらと類と総二郎はふたりのやり取りを傍で見ていました。
しかし、司がカウンターにいる鬼沢つくしの腕を掴んだのを見て、もしかして手を上げるのではないかとハッとしました。止めなければならないと思いました。
しかしそれは間違いでした。司は掴んだ腕を引き寄せ鬼沢つくしにキスをしたのです。
「どうだよ?ナツメグ入りのウィスキーの味は?」
「…..パンチが利いてていいんじゃない?だって刺激のない恋なんて恋じゃないもの」
「言うじゃねえか」
司はニヤリと笑みを浮べました。
すると女は司をまっすぐ見つめて言いました。
「ええ。それに私、恋をするなら対等だと思ってるから」
司はそこで目が覚めた。
「アダルト桃太郎」の動画は終わっていて結局最後まで見ることはなかった。
その代わり、夢で司オリジナルの桃太郎を見た。その夢には生意気な小鬼が出て来て、司はその鬼と恋に落ちていた。
そして司は実際には味わっていないとしても、唇にナツメグの味を感じていた。
それは、つい先日恋人がハンバーグを作ってくれた時のことだ。
司はハンバーグのたねを混ぜようとしている恋人の背後に立ち抱きしめようとした。
だが司の腕はナツメグをボウルの中に振り入れようとした恋人の腕に当たり、ナツメグはボウルではなくキッチンの天板に撒かれた。するとそこには甘くエキゾチックな香りが漂った。
ナツメグは大量に摂取すると、交感神経系に影響を与え、最終的にめまいや幻覚を示すことがある。それに興奮作用があると言われている。だからあの時の司はハンバーグをこねようとしていた恋人を抱きしめキスをした。
だがそれはナツメグのせいではなく、ただキスしたかったからだが、ハンバーグが焼かれることがなかったのはナツメグが作用したのかもしれない。
司は無性に恋人の作ったハンバーグが食べたくなった。
胡椒とナツメグを入れた肉をこねて、丸めて、フライパンで焼くだけのシンプルなハンバーグが。
だから携帯電話と掴むと恋人に電話をした。
「もしもし?今晩うちに来るんだろ?」
「______」
「食べたいものがある。リクエストしてもいいか?」
「______」
「ハンバーグ。お前の作ったハンバーグが食べたい」
司はもし誰かに、あなたへのおすすめがあります、と言われたらこう答えることに決めた。
自分で考え自分で判断して自分がしたいことをするから勧めてもらう必要はないと。
しかし、そんな男も相手が恋人となると違う。
「らっきょう?」
最近恋人はやたらと、らっきょうを喰えと勧める。
それは血液がサラサラになるからという理由だが、実は恋人の今のマイブームはお手製のらっきょうを漬けることだ。
だから今日もジャムの空き瓶に入れた、らっきょうを抱えて来るはずだ。
「___ああ、分かった。喰うよ。喰う。だからひと瓶でもふた瓶でもいい。持って来い」
司はそう答え電話を切ると、パソコンの電源も切った。
そして恋人が来るまでの間にシャワーを浴びることを決めるとバスルームへ向かったが、今夜はどんな愛し方にしようかと考えていた。
実はこう見えて司は股関節が柔らかい。だから司にしか出来ない体位というものがある。
だが今まで恋人の身体のことを考え、その体位は封印していたが、大量のらっきょうを受け入れる代わりに今夜はそれを試してみるのも悪くないのではと思い始めていた。

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