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2020
01.02

金持ちの御曹司~Prisoner~

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
そして今年の一作目。御曹司でございます。
少し長めに書きましたが、よろしければどうぞお読み下さいませ。
ただし、破廉恥な振る舞いをしていますのでご注意下さい。←え?いつものこと?
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「ねえ、真知子聞いてよ!」

「何?」

「あのね。あたし年末に何気なく見てたテレビ番組に支社長が出てるところを見たのよ!」

「ふーん。でも支社長がテレビに出るのは珍しくないでしょ?ニュース番組のインタビューとか。経済番組とか沢山出てるでしょ?だから別に珍しくないでしょ?」

「あのね、あたしが見たのはそういった類のじゃなくて、支社長がピアノを弾いている場面なのよ!」

「え?!ピアノを弾いてるところなの?!嘘!嘘!ちょっとそれ何の番組?教えてよ!あんた録画してないの?」

「それがさぁ。うちのレコーダーのハードディスク。妹が撮った歌番組に占領されてて空き容量が無かったのよ!よっぽどそれを消去して支社長のピアノを弾く姿を撮ろうと思ったけど、妹が絶対ダメって言うのよ。ほら今年で活動休止するアイドルグループが出てるからって、長い番組全部録画してるのよ?だから空き容量がなくて録画出来なかったのが悔しくて!」

「え~そうなのぉ?残念!それでどんな番組だったの?」

「それがね、その番組は空港の中に置かれているピアノを弾く人が主人公なの。
ほらよくあるじゃない。商店街とかにピアノが置かれてて、ご自由弾いて下さいって書いてあることが。あたしが見たのはそれの空港版。海外の空港なんだけど、空港のロビーに置かれたピアノに定点カメラが設置されていてね。そのカメラが映していたのが支社長なのよ!それにしても支社長がピアノを弾く姿って最高に素敵!スーツ姿の支社長が少しうつむいた姿勢で華麗にピアノを弾く。あたしあんな支社長の姿初めて見たけど益々支社長のファンになっちゃったわよ!それにあたし支社長が奏でるピアノの鍵盤になりたいって思ったわ!あのキレイな指であたしの身体を愛でてもらいたいわ!」









悪いが俺の指が愛でるのは牧野つくしの身体だけだ。
新年早々女子社員の立ち話を耳にした男は心の中で呟いたが、社員たちが話していたのは司が北欧を訪問した時のことだ。
いつもは空港に着けばプライベートジェット専用のラウンジに直行するのだが、あの日は恋人に頼まれた、その国らしさが感じられる土産を探し一般乗客が利用するターミナルに足を運んだ。そしてそこに置かれていたピアノが目に止まり鍵盤に触れた。
すると、指が勝手にメロディを奏で始めたが、曲はショパンの幻想即興曲だ。

司は英才教育を受けたが、その中にはピアノもあった。
だがだからといって得意という程のものではない。
けれど、みっちりと叩き込まれたピアノは趣味の範囲でという意味では充分聞くに堪えるはずだ。

そして弾き終えたとき、公共放送のプロデューサーで三津谷と名乗る男が近づいてきて名刺を差し出し、あなたがピアノを弾く様子を放送してもいいかと訊いてきた。だから構わないが?と答えたが、年末に放送されたとは知らなかった。
だが恐らく秘書に放送日の連絡はあったはずだ。そして秘書はその番組を録画しているはずだ。
だが司はそんなことはどうでもよかったし興味はない。
それなら今司が興味があるものはなにか。
それは福袋と言われるもの。
初売りで販売されるというその袋は、販売価格が決められはいるが、中には決められた価格よりも高価なものが入っていて特をすると言う。
だが司は袋に何が入っているか分からない状況で買い求めるというシステムに納得がいかなかった。それは必要ないものを買ってどうするというのかという思い。
だがあきらが言った。

「あれはな。中身が分かんねえからの楽しみがあるんだ」

そして詳しく聞けば、最近は中身がなんであるのか分かって買うというシステムが殆どだという。
それなら司も自分が望むものが入っている袋を探すことが出来るはずだ。
だがそれは販売などされていない司限定の福袋だが、司が福袋に入っていて嬉しいもの。
それは………


5位 牧野の等身大ポスター。
部屋に貼ってひたすら愛でる。そして花や飲み物や食べ物を供えて祈る。
何しろ牧野つくしは司にとって巫女であり宗教なのだから。
4位 牧野の顏のうちわ。
そのうちわで扇げばきっといい気持になれる。そして時々胸の前に掲げて「牧野最高!!」と叫んでみる。
そして片手には牧野の好きな青色のペンライトを捧げ持ち、牧野のポスターに向かって振る。
3位 牧野の唇の形が刺繍されたハンカチ。
仕事の途中でそっと取り出して唇に当ててみる。
そうすればいつでもどこでも牧野にキスしている気持ちになれる。
2位 牧野の香りが染み込んだタオル。
シャワーを浴びた後、そのタオルで身体を拭く。特に股間は念入りに。
そして1位は、言わずもがなで愛情。

5位から2位は金さえあればどうにでもなる。
だが1位の愛情は目に見えない。手に掴んで確かめることは出来ない。
いくら金を積んだところで手に入れることは出来ない。
そして司はそのことを身をもって知っている。
だからこそ彼女の愛情がいつも自分に向いていることを確かめたいと思う。
そう思う司は昨年の自分を振り返ったが、去年の司は煩悩の塊だった。
だが今年は違う。牧野と一緒に訊いた除夜の鐘で煩悩は清められたはずだ。
そうだ。違う。
今年の自分は去年までの自分とは違う。
だから執務室に戻ると、今日は定時で帰ると秘書に告げ溜まっていた書類を片付け会社を後にした。













美しさが無双と言われ、アルマーニも似合うが、華やかさと艶を演出するドルチェ&ガッバーナも似合うと言われるのは道明寺ホールディングスの跡取りだが、彼は母親からこの会社で勉強しろと言われ、系列会社のひとつであるタンポンやナプキンといった生理用品やオムツを製造する会社のサニタリー事業本部長を務めていた。

生理用品の会社だからといって女性だけが働いているのではない。
それに今の世の中は男女が平等に働くことが当たり前となっていることもあり、男の司が女性のために開発される製品を作る会社で本部長を務めることに差し障りなどあろうはずがない。
だから他の会社でならセクハラだと口にするにも憚られるようなことも、この会社ではそういったことはない。

「牧野。それでどうだった?使い心地は?」

司は会議室で部下の牧野つくしが試作段階で使用したナプキンの感想を訊いていた。

「はい。部長。こちらの使用感ですがサラッとした感じで肌触りは改良前のものと比べて良くなったと思います。それにこれは以前のものよりも薄くなりましたが吸水力も問題ありません。それにこの薄さならパンツスタイルでも外に響くことはありません」

牧野つくしは、司のひとつ年下でナプキンの研究開発をしている彼の部下に当たるが、実は司は彼女のことが好きだった。
出会いはスローモーション。階段を登っているとき上から落ちてきた彼女を受け止めたが、その瞬間恋の予感が甘く走った。心を鷲掴みされた。
今まで司の周りには大勢の女がいたが、こんな風に気持ちを揺さぶった女はいなかった。
だが司は事業本部長だ。上司と部下という関係上、彼女に自分の気持ちを伝えてはいなかった。
それは、伝えることによって彼女が気まずいと思う状況を作りたくなかったからだ。
だから司は彼女には興味がないといった態度をとっていた。
けれど、もう自分の気持ちに嘘をつくのは止めることにした。それは最近彼女が広報部長の花沢類に食事に誘われていることを知ったからだ。
だが彼女は誘いを断っている。しかし花沢類という男は策士だ。だからどんな手を使ってくるか分かったものではない。
そんなことから司は心の奥で焦りを感じていた。

「そうか。お前は会社に来る時はいつもパンツスーツだが色々と試してみたのか?」

「はい。一番多い日と言われる2日目ですが、私はその日、あえて白いパンツを履きましたが服が汚れることはありませんでした。それに長時間トイレに行くことが出来ない女性もいます。例えば接客業やサービス業の女性はなかなかトイレに行く時間がありません。我慢してしまうこともあります。そういった状況下での吸収性についても試してみましたが、一度吸水された経血が戻ってくることはありません。それに使用感はこれまでのものよりも格段に上です」

そう言った牧野つくしは、お手元に配布した資料をご覧くださいと言った。

「それから我社が開発した新素材ですが、肌が敏感だと言うモニターを集めて検証してみましたが、かぶれにくいという結果が出ています。ですがそれはあくまでもモニター基準です。それから肌に合う合わないは季節によるものもあると思われます。乾燥した肌の持ち主の場合の場合冬場になると自分の肌が乾燥することからデリケートな部分に痒みを生じることもあるようです。それからそれとは逆に夏には蒸れるといった状況もあると思われます。ですからどちらの状況にも対応でき、なおかつ漏れることがないようにしながらも通気性にも気を付ける必要があります」

「なるほど。それで牧野。お前の肌はかぶれやすい方なのか?」

司は目の前に置かれているナプキンに触れ肌触りを確かめた。

「いえ。私はそのようなことはありません。ですが私は量は多い方ですので吸収力の高さに重きを置いています。しかしこちらの新しいナプキンの吸収力はこれまでのナプキンの中で一番です。我社が自信を持ってお客様にお勧めできる商品です」

「そうか。お前は量が多い方なのか。それは大変だな」

「はい。ですから今までも頻繁に替えなければ不安でした。でもこちらは長時間でも大丈夫です」

司は仕事柄、女性の元を月に一度必ず訪れる生理について知っているが、その生理には個人差があり、女性が生理中も普段と変わらぬ顏で仕事をしていたとしても、実は生理痛で苦しんでいて、腹痛や頭痛や吐き気がするといった症状を抱えていることを知っている。
そして司は牧野つくしの生理周期を知っている。
彼女の生理周期は28日で、ほとんど狂うことはないと言う。
それに生理痛がそれほど酷くないということも。
だが何故司が彼女の生理周期を知ったのか。
それは過去の会議で、自ら今日は2日目ですが、と言って開発中のナプキンの使用感について述べたからだ。そして次の生理の時は別のナプキンを使ってみると言った。
そしてその日は、だいたいこの辺りですので会議はその日にお願いしますと言った。
そして実際、会議が行われた日は彼女の生理2日目だった。つまり牧野つくしの生理日は正確だということ。

そして司は、彼女の排卵日を知った。それは生理が始まっておよそ2週間後。
つまりいつ彼女を抱けば子供が出来るかを司は知っている。
司は彼女が、牧野つくしが欲しかった。
ただの上司と部下の関係ではなく、男と女の関係になりたかった。
そして結婚したかった。永遠に彼女を自分の傍に置いておきたかった。
だから既成事実を作ることを決めた。
それは彼女の排卵日を狙って彼女を誘い出すということ。
だから司はその日彼女を誘った。

「牧野。今日これからだが予定があるのか?」

「予定ですか?」

「ああ。お前が提出してくれたデーターで訊きたいことがあるんだが、どうだ?食事をしながら話を訊かせてくれないか?」

司はそう言って腕時計に目を落とした。
時刻は午後7時。研究室に残っていたのは彼女ひとり。だがそれはいつものこと。
牧野つくしは7時半頃まで会社に残ることが多い。それは上司である司だけが見ることが出来る勤怠管理システムから知っていた。

「ええ…..あの特に予定はないんですが….」と言った彼女は少し考えた後、「わかりました」と答えた。













「牧野。遠慮するな。ここは美味い肉を食わせてくれる店だ。しっかり喰え」

司がつくしを連れて来たのは、メープルの中にあるステーキハウス。
そこで料理長に最高の肉を出すように言った。
そして赤ワインを開けると彼女に勧めた。

「飲めよ。ここのワインは肉によく合うワインを揃えていて美味いぞ?」

つくしはそう言われ司が差し出したワイングラスに自分のグラスの縁を重ねた。
そしてグラスを傾け、ひと口飲むと口の中に広がるワインのまろやかさを感じていた。

「美味しい。部長。このワイン本当に美味しいですね?」

「そうだろ?このワインはお前が生まれた年のワインだ。美味いに決まってる」

「え?私が生まれた年のワインですか?でもどうしてそんなワインを?」

「どうしてか?それはこの年のワインは当たり年だからだ。だから飲んでくれ」

司はワインボトルを握ったまま、彼女に更にワインを勧め、グラスが空になるたびにおかわりを注いだ。すると食事が終わる事には彼女は酔っぱらっていた。
だから司は食事が終わり椅子から立ち上った彼女がふらつくと身体を支え、「大丈夫か」と言い心配をした。

「すみません、部長。いつもはワインを飲んでもこんなに酔うことはないんですが、今夜は飲み過ぎたようです。なんだか足に力が入らなくて…..」

「それは危険だ。酔った状態でお前ひとりを返すことは出来ない。ここはうちの会社の親会社が経営するホテルだ。部屋を用意しよう。少し休んでいけばいい」

司はそう言って牧野つくしの身体を気遣うように支えるとエレベーターホールへ向かった。
だが気遣っているように見えるのは素振りだけで、その顏には薄っすらとした笑みが浮かんでいた。


司は酔った彼女を最上階の自分の部屋の前に連れて行くと、鍵を開け彼女を中に押し込んだ。
そしてチャコールグレーのスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外すとソファの上へ放り投げた。
それから牧野つくしの身体を抱き上げ、ベッドルームへ運びキングサイズのベッドの上に自分の身体を浴びせかけるようにして押し倒したが、彼女の意識は朦朧としていた。

「……ん…..うん……」

「牧野……。牧野。好きだ。俺はお前のことが好きだ」

司は言いながら彼女の服を脱がせ始めたが、殆ど意識がない状況で抵抗はなかった。
だが意識が回復し抵抗したところで司の逞しい肉体を押し戻すことなど出来はしない。
そして司は意識のない牧野つくしを好きなように愛せることに倒錯した喜びを感じていた。
それは排卵日とされる日から彼女をこの部屋に閉じ込め、彼女のことを愛し、彼女の中に自分の種を注ぎ込み、子供が出来れば彼女は自分のものになるからだ。
だがそれは凶暴に女を抱きたいという気持ちとは違う。
ただ自分の中にある愛を与えたいという思い。そしてそれを受け取って欲しいという思い。
たとえそれが一方通行な愛だとしても、彼女に受け取って欲しかった。

「牧野…..好きだ。俺はお前が欲しい。欲しくて欲しくてたまらなかった」

司はつくしのブラウスを剥ぎ取り、ブラジャーを外し、顕わになった小さな胸に手を這わせ、頂きを口に含んだ。
だが彼女は目を閉じたままで、頭が微かに左右に揺れただけだ。

「ああ、牧野。お前はなんてかわいいんだ。俺はお前を一生大切にする。どこにもやらない。他の男になど渡すものか」

そのとき脳裡を過ったのは花沢類のことだったが、司は牧野つくしを裸にすると自身も裸になった。
そして華奢な腰を掴み、引き寄せて彼女の脚を開いて間に手を差し入れたが、そこは乾いていた。だが司が指を挿れ擦ると湿って来た。そして徐々に蜜が指を濡らし始めた。

司はそれから盛のついた雄になった。
自身の硬くなったモノを握り濡れた割れ目の中に入って突き上げることを始めたが、その瞬間。牧野つくしが意識を取り戻したのが分かった。

「ど、道明寺部長?」

第一声は、いったい自分に何が起きているのかわからないといった様子。
だがやがて自分の身体の上で自分を見下ろしている男が自分の中に入っていることに気付くと叫び声を上げてもがき始めた。

「いや――ぁ!止めて!出てって!私から出てって!」

だがつくしが目覚めたことに気付いた司は、彼女のどんな動きも押さえつけ、大きな身体でのしかかり手に力を込めた。

「嫌だ。俺はこれを止めるつもりもなければ、お前のナカから出ていくつもりはない。牧野。俺はお前を愛してるんだ。お前が階段の上から落ちて来た時、恋におちた。だから俺のものになってくれ。俺は世界中の全ての人間に向かってお前を愛していると言うことが出来る。牧野。俺を拒まないでくれ。受け入れてくれ」

汗ばんだ身体と掠れた声は、司の想いの強さを表していて、突き上げることを止めることもなければ、出て行くこともなかった。
むしろ、彼女が覚醒したことによって締め付けがキツクなった。だからさらに激しく突き上げ始めたが、彼女をシーツの上に縫い付けると中に精を放つまでこの行為を止めるつもりはなかった。

「ああ、牧野….」

司は苦しげに呻きながらも腰を振り、楔を打ち込むように身体を密着させた。
だが彼女は目に涙を浮かべなんとかして司から逃げようとしていた。

「道明寺部長!止めてぇ….」

「止めることは出来ねえ。それにお前を放すつもりもなければ、離れるつもりもない。俺はお前と結婚する。お前は俺の子供を産むんだ。牧野。お前は今が一番妊娠しやすいんだろ?俺はそれを知っている」

司は言うとニヤリと笑った、
長い間彼女を求め我慢していた身体は正直で、一度味わった牧野つくしの身体から出ていくことはしなかった。

「いや…..いやです。道明寺部長….止めて!いや!!お願い止めて―――!」

「どうしてだ?俺はお前のことを大切にする。絶対に幸せにする。お前に不自由はさせない」

司は言うと一意専心の表情を浮かべ牧野つくしの中に繰り返し突き進み、速度を上げた。
そして頂点を迎えると彼女の中に精をどっと注ぎ込んだ。

「いやぁ――――!!」











司はそこで目が覚めたが、そこは仕事を終えた男が向かった恋人の部屋のコタツの中。
タマからコタツで寝るのは気持ちいいと訊いていたが、コタツで恋人と鍋を食べた後、眠気に誘われ横になると寝ていた。
そして今年初めて見た夢は、司が部下の牧野つくしを手籠めにする夢だったが、いったい何のために除夜の鐘を訊いたんだ?これじゃあ去年と同じで煩悩丸出しだ。

だが司はニヤッと笑った。
そうだ。なかなか結婚してくれない女との結婚を早めるならこの手があると気付いたからだ。
恋人の排卵日を選んで避妊をすることなく彼女を愛せばいい。
そうすれば、恋人は妊娠して司と結婚することになるはずだ。

「道明寺?起きたの?」

恋人は司が起きた気配に洗い物をしている台所から声をかけてきた。

「ああ。メシ喰ったら眠くなって寝てた」

「コタツで寝るの気持ちいいでしょ?あたしもうっかり寝ちゃうことがあるわ。
あ、これからお風呂入るでしょ?でもあんたが寝る前に焚いてそのままだから、冷めてると思う。だから追い炊きしてね?」

「ああ。分かった」

司は起き上がると伸びをしたが、恋人の部屋に泊まるようになって知った追い炊きという機能。それは冷めた浴槽の湯を後から温め直すという機能だが、司の愛に追い炊き機能は必要ない。何しろ司の牧野つくしに対する思いは一瞬たりとも冷めることなく、いつも熱を持った状態で心の奥にあるからだ。
だから司は今すぐ彼女が欲しかった。


司は部屋を横切って台所で荒い物をしている恋人の背後に立った。

「なあ。牧野」

「ん?何?」

「片付けは後からでいいから風呂。一緒に入ろうぜ」

司は後ろから恋人が洗っていた皿を取り上げた。
そして恋人が驚いた顏をしているのを尻目に彼女を抱き上げたが、夢で見たような抵抗はなく、彼の首に両腕を回した恋人は身体を押し付けると「司」と小声で名前を呼んで首筋に唇を寄せた。
















永遠の繋がりを持つ間柄になりたい。
夢に出て来た男はそう考え無理矢理ことを運ぼうとしたが、司は恋人を傷つけたくないし、泣かせるつもりもない。それに司はそんな下劣なことをする男ではない。
だが高校生の頃、類と親しくしていた恋人の態度に心が砕かれ彼女を奪おうとした黒い歴史があった。
だがそれは思春期真っ只中の少年特有の切望と嫉妬がもたらした若気の至りであり今では笑い話だ。
それに、今の司はただ深く彼女を愛する男だ。
けれど、その愛が余りにも深すぎて激しく愛することもあった。
そしてその時思うのは、何があっても彼女を離すことはないということ。
だが離すことがないのではない。
黒く飢えた瞳をした男は彼女に囚われていた。
そうだ。
夢の中の自身が言ったと同じで初めて会った時から彼女に心を持って行かれた。
だから彼女から離れてしまえば自分がダメになることを本能で知っている。
それにふたりは出会うべくして出会った。それは運命。
そして抱き上げた小さな身体に熱いほどの温もりを感じるのは、彼女も司を愛しているから。

司は恋人をバスルームの入口で降ろした。
そして、彼女の顏を見つめながら彼だけに感じられる甘い香りを味わうため唇を寄せた。




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