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2019
05.19

金持ちの御曹司~不機嫌な赤い薔薇~<前編>

暴君。
俺様。
理不尽。
と書いて道明寺司と読む。

かつてそう言われていた男は今では道明寺ホールディングス日本支社の支社長だが、そんな男に過去を振り返る時間を持つことがあったか訊けば無かったと答えるはずだ。
だが今は過去を振り返るべきだと思ったのは、時代が変化を迎えたからだ。
そうだ。時代は変わったのだから思考も新時代に合わせ変えなければならないはずだ。
だから、ビルの最上階にある執務室から遥か彼方に見える景色を見つめながら高校時代の恋人との色々を振り返っていたが少し前に耳にした話を思い出していた。





「ねえ香織。理想の恋人を漫画の主人公にたとえると誰?」

「そうねぇ......私の場合花より団子の主人公!道暗寺司かな?」

「あ~懐かしい!花より団子!一世を風靡したわよね。それにあれテレビドラマにもなったけどイケメン4人の男子高校生と貧乏な女の子の話よね?」

「そうなの!私ね、あの漫画が大好きで学生時代ハマってたの。一番好きな場面はね、道暗寺司が好きな女の子に雨の中で別れを告げられたときの彼が切なくてね。それも彼の母親の陰謀のせいでそうなったでしょ?だから可哀想でその続きが気になって眠れなかったわ」

「あったわねぇ。そんな場面。そう言えばあの漫画。道暗寺司派と花川数派で別れてたわよね?私は数が好きでね。女の子と数が結ばれるといいなって思ってたの。それに数のサラサラした髪とビー玉のような瞳って形容される目が大好きだったの。だってキラキラとして透明感があっていかにも王子様って感じでしょ?それに比べて道暗寺司って金持ちだけど人としてどうなのってタイプだったじゃない?いかにも俺様だし暴君だし。それにあのクセの強い髪型のどこがいいのか分かんないわ」

「そう?私はあのクセの強さが好きよ。それに時代はクセの強さを求めてたのよ。
ほら、お笑い芸人も言ってるじゃない?クセが強いんじゃって。そのクセの強さが道暗寺司の魅力なのよ。それにあのクセが強い髪型がいいのよ。暴君で俺様でも主人公の女の子を思うあの一途さがいいのよ。金持ちパワー全開で彼女のためならどんなことも出来る男なんてそうはいないわよ?」

「でもさあ。世界的規模の金持ちの家の跡取り息子と貧乏な家の娘の物語なんて漫画だからあり得る話しでしょ?現実の世界に置き換えて考えたら絶対上手くいかないわよ。それにしてもあの女の子。美人じゃないのにどうしてモテるのかしらね?金持ちの男って自分に無いものが欲しいってこと?」

「そうねぇ。そうなのかもしれないわね。人って無い物ねだりの動物だから」






司はその話を訊いて思った。
金持の男と貧乏な女。
カッコいい男とそうでもない女。
それって俺と牧野の話じゃん、と。
だからすぐにググってみたが、そこに出て来たのは女達が話していた通りイケメン高校生と貧乏な女が主人公の漫画のストーリー。
だが花川数という男がクセが強い主人公と人気を分け合っていたと言ったが、英徳学園での人気は司の方が圧倒的であり、そこは違うと言えた。

それにしても『花より団子』という漫画が女達の間で人気があったとは知らなかった。
そして女達は牧野つくしと同世代ということは、あいつもその漫画を知っていてもおかしくない。いやだが学生時代の牧野はバイトに明け暮れ漫画を読む暇はなかったはずだ。それにあいつは勉強家で漫画を読み更けるタイプではない。
だがもし牧野がその漫画のファンだとすれば、自分も読んでおく必要があると感じた。
だから司は秘書を呼ぶと言った。

「西田。お前『花より団子』って漫画を知ってるか?どうやら女達が好んで読んでいた漫画らしいが訊いたことがあるか?」

「支社長。私は漫画というものを読んだことがございません。それに、私が学生時代は蛍雪時代を愛読しておりました」

「蛍雪時代?なんだよそれは?」

「はい。蛍雪時代とは大学受験生向けの雑誌でございます。今のようにインターネットもなければ全国展開の大手予備校がなかった時代。私はその雑誌から大学に関する様々な情報を得ておりました。特に私のように地方在住の者にとりましては、あの雑誌は_」

「西田。もういい。お前の話はいい。とにかくその『花より団子』って漫画を持って来い」

司は西田の話を途中で遮り革の椅子に背中を預けると目を閉じた。
漫画の世界の主人公に憧れる女。
そんな女が世の中に多いというなら、牧野も憧れの主人公という男がいたはずだ。
そして『花より団子』の主人公はクセの強い男だといったが、もし牧野つくしの理想の恋人が、その男ではなく花川数だったらどうすればいい?

それにしても花川数という名前は花沢類によく似ている。
川と沢はどちらも水を表す漢字。
そして水で思い浮かべるイメージと言えば、清らかとか爽やかとか清々しいとか。
現に類は見た目が爽やかと言われ女からモテることは間違いない。
それに数と類。似た様な見た目の漢字で、司は子供の頃、類の名前を数と書いて姉に笑われた。
そして二人は友人ではあったが、牧野つくしに出会ってからはライバルだったことがあった。
だから牧野が、花川数が好きだったと言えば司はその漫画を燃やしてやるつもりでいた。










司は日本にいる類から届いた結婚式の案内を手にニューヨークの空港にいた。
激しい雷雨のため離発着を見合わせている。
そんなアナウンスと共に遅延の表示が並ぶ出発案内表示器を見ていた。
いつもなら自家用機での移動だが、メンテナンスとなれば民間機を利用するしかなかった。
くつろいでいたファーストクラス専用のラウンジを出ると、一般客で溢れる待合の椅子に腰を下ろした。それは単なる気まぐれから出た行動だが、後ろから聞こえてくる日本語の会話が耳に入り、声の持ち主である二人の男は興味深い話を始めた。

「おい。そう言えば物産の専務が結婚するって話。本当なのか?」

「ああ。どうやら本当らしい」

それは司が出席する類の結婚式に関するもの。
だが司は類の結婚相手を知らなかった。
日本を出て10年。出張で訪れることがあっても忙しさで類や他にいる幼馴染みの仲間たちと飲む機会も殆どといっていいほど無かった。
そして言葉は悪いが類が誰と結婚しようと興味がなかった。だからまさかここで類の女について訊かされるとは思わなかったが、相手がどんな女なのか知るいい機会だと耳を傾けた。

「そうか。噂には聞いていたが本当だったのか。でもあの専務は女嫌いだから一生独身でいるって訊いていたが気が変わったってことか?それで相手はどんな女だ?」

「いや実はな。話すと長い話になるんだが相手が訳アリと言うか、色々あったようだ」

「何だよ?訳アリとか色々とかって」

「女には高校生の頃付き合ってた恋人がいたが、その男が記憶障害になって女のことを忘れてアメリカに渡ったらしい。それでも女はその男のことが忘れられずずっと思ってた。そんな哀しみを抱えた女を傍で支えていたのが専務らしい。それから女はいつの日か恋人が自分のことを思い出して会いに来てくれると思ってたらしいが10年経った今でも思い出してはもらえなかった。それで10年もたったし、その男のことを忘れることにしたのか専務の思いを受け止めることにしたのか。とにかく専務からのプロポーズを受け入れたって話だ」

「そうか。専務の結婚相手は今どき珍しいくらい一途な女だったってことか。だが専務もそれに匹敵するな。だってそうだろ?他の男のことを思う女を10年も支え続けたんだから凄い男だな」

「ああ。あの専務は何を考えているのか分からないタイプだと言われるが、その女に対しては自分の思いを貫き通したってことだな」

「それにしてもまさか花沢物産の専務がうちの社員と結婚するとは思いもしなかった」

「ああ。俺も驚いた。何しろ相手は隣の部署の牧野だぞ。驚くなって方が無理だ」

「え?あの牧野か?あの地味でさえないって言われてる牧野が花沢物産の専務と結婚?!」

司は牧野という名前を訊いて後ろを振り向いた。
それは何故かその名前に聞き覚えがあったからだ。
そして話をしていた男達に訊いた。

「誰が誰と結婚するって?」

話をしていた二人の男は振り向いた男に驚いた。
それは何故その人がここにいるのかという意味でだが、司の凄みが効いた口調に言葉が詰まった。

「ど、道明寺副社長?ど、どうしてここに副社長が?」

司は二人の男達の胸に輝く道明寺の社章に目を落とし、さっき言った事と同じことを訊いた。

「だ、誰と誰って、あの、花沢物産の花沢類さんと、う、うちの会社の牧野つくしさんです」

そのとき司は牧野つくしという名に突然頭の中に10年前のことが甦った。
それは10年前、牧野つくしと船を降りたところで刺され、彼女のことだけを忘れたことを。好きだといった女のことを忘れ、彼女を捨て日本を後にしたことを。
司は、そのことを思い出し悲痛な叫び声を上げ、牧野つくしが類と結婚するということに断末魔の声を上げていた。









「失礼致します。支社長。何があったか存じませんが、そのように叫び声を上げられては困ります。それから『花より団子』をお持ちいたしました。こちらは書店から届けさせましたが37巻もございましてかなりの重さがございます。それにこれだけの本を読むとなればかなりの時間を要します。まさかとは思いますが仕事中に読むということはお控えいただきませんと業務に差し支えます」

司は段ボール箱を抱え、ごちゃごちゃと言う西田には目もくれず執務室を飛び出した。
それはたった今、夢で見たあり得たかもしれない未来を打ち消すことが必要だったからだ。




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2019
05.20

金持ちの御曹司~不機嫌な赤い薔薇~<後編>

牧野つくしのこととなると目の色を変える男が急いで向かった海外事業本部に牧野つくしの姿はなかった。
それならどこにいる?
司のその疑問に答えた男は牧野の上司で頭が禿げた男。
牧野が向かった先は海外事業部の資料室だと言ったが、司はこのビルのどこに資料室があるのか知らなかった。だから禿げ頭の男に言った。

「それでその資料室はどこにある?」

すると海外事業部の資料室は地下2階にある一室だと言った。
そこは地下駐車場のひとつ上のフロアで各部署の資料室があると言ったが、それは長い歴史を誇る会社ならではのデータ化されていない古い資料が山のようにある場所で、倉庫同然の場所だと言った。

「倉庫同然?」

「は、はい。ですから支社長自らが足を運ばれる場所ではございません。もし牧野さんにご用でしたら私が呼びに行ってまいります」

と言ったが司は断った。そして倉庫同然という言葉にニヤッとした。
そこは女ひとりで行くには無用心な場所とも言えるが、ここは天下の道明寺。
そこで何かが起こるはずはなく、だがだからと言って起こらないとも限らない。
だが司の恋人は腕っぷしが強い。右腕のパンチはライト級のボクサー並。右足のハイキックはムエタイの女子チャンピオンに勝るとも劣らないと言われていた。そんなキックを司が浴びたのは高校生の頃だったが、あのキックで恋に落ちたと言っても過言ではなかった。

司はエレベーターで窓のない密閉された地下2階の廊下に降り立つと海外事業部の資料室を探した。
そしてある扉の前で止るとドアノブを回した。だが鍵がかかっていて開かなかった。
だからドアをガンガン叩いてみたが、中から誰かが出てくることはなかった。
するとそこへ巡回中の警備員が現れた。

「おい。背が160位で眼がデカくて髪が肩まである女を見なかったか?」

すると警備員は、「その女性ならついさっき資料をかかえてエレベーターで上に上がりました」と言った。

司は資料室につくしが居なかったことを少し残念に思ったが、エレベーターに乗り海外事業本部へ戻ることにした。
そしてそこでつくしを掴まえ彼女の今の気持ちを確かめるではなかったが、もしかして今でも司がつくしのことを忘れ、彼女が作った弁当を他の女が作ったと信じた男に腹を立てているのではないかと思った。
そしてお前なんか知らねぇといって追い返したことも実は今でも根に持っていて、それが潜在意識として残っていたことから思念となって司の夢に現れたのではないかと思った。

「いや。だがあいつは過去を根に持つような女じゃない。それに類にしたってそうだ。あいつは俺たちにとってはダチ以外の何ものでもない」

と、ひとりごちたが、それでも類にしても、まだ心のどこかに牧野に対する思いを秘めていたとしてもおかしくない。つまり牧野と同じで意識の奥深くに眠らせている思いがあるということ。だからそんな二人の思いが司の夢に現れたとしたら、いつかそれが現実になるのではないかと思った。

「いや。まさかそんなことはないはずだ」

と口に出すも、それでも一度頭の中に巣食った思いは簡単には消えそうになかった。
だから早々に牧野を掴まえて本人の口から愛してるのは司だけ。という言葉を訊かなければ落ち着いて仕事など出来るはずがなかった。

だから司は、再びつくしの部署に行った。
だがそこにつくしの姿は無かった。

「牧野はどこだ?」

すると禿げの部長は、「も、申し訳ございません。一度戻って来たのですがその時、支社長がお探ししていると伝えたんですが今度は総務課へ提出する書類があるからと、つい先ほど向かったところです」

司はその言葉に、つくしが自分を避けているのではないかと感じた。
つまりそれは、司には会いたくないということ。
だが何故司に会いたくないというのか?
それを考えるとモヤモヤとしたものが心に湧き上がると同時に、二日前の夜から翌日の朝にかけての記憶をたどって、自分がつくしの気に入らない何かをしたのではないかと考えた。

あの夜は激しい愛の行為で眠らせる時間を与えることはなかった。声が枯れるほど司の名前を叫ばせ、司もつくしの名前を何度も何度も呼んだ。柔らかく濡れた場所を撫でまわし、歓喜の声を上げさせ高みに押し上げると、腰を両手で掴み、脚を開かせ強く腰を押し付けた。
その瞬間司の背中に突き立てられた爪の後は今でもくっきりと残っていて、あの時の二人は互いに全てを与えあった。

そんな夜を過ごしたのが二日前。
それから会ってはいなかったが、考えてみても思い当たるふしはなかった。
だから、「牧野?何が気に入らない?俺が何かしたか?」
と、ひとりごちると、総務課へ足を向けることにしたが、今度は悠長に廊下を歩くことはせず走った。そして扉が閉まりそうになっていたエレベーターに飛び乗ると中にいた男は驚いた顔をしたが、「総務課はどこだ?」と問われるとすぐにボタンを押した。そして「こちらが総務課のフロアです」と言われエレベーターから降りると再び廊下を走った。
そして「牧野はいるか?」と言って息せき切って現れた男に総務課全員が首を横に振った。






執務室を飛び出してから1時間。
司は牧野つくしに会えずにいた。
海外事業本部からまず地下の資料室へ行き、そこから再び海外事業本部を経由して40階にある総務課へ行き、今度は見かけた者がいるという34階の都市開発本部へ行くと次は19階の物流事業本部へ行った。そして25階にある宇宙航空機本部へも行ったが会えなかった。
そして会えないまま時間が過ぎ仕方なく執務室に戻ったが、ここは自分の会社で、このビルは自分の会社のビルで、自分は支社長で、牧野つくしは彼の会社の社員で給料を払っているのは司で、そして彼は彼女の恋人だ。
それなのに何故会えない?このビルの中にいることは確かだがどうして会うことが出来ない?それはつまり意図的に避けられているということか?
そしてそれが意味するのは、司は牧野つくしに嫌われたということになる。

「まさか….類か?」

そんな思いが再び頭を過ったが、そんなことは無いはずだとその思いを追い払うように頭を振った。
その時ノックの音がした。
そして入れという司の言葉を待たずに扉が開けられた。

「支社長。よろしいでしょうか?」

何がよろしいのか。よろしくないのか。
今の司は、つくしを失うかもしれないという思いから何も考えられなかった。
そして不機嫌だった。
だから司は立ち上ると西田に背を向け窓の外に視線を向けたが、背後に聞こえた音は男の靴音ではなく軽やかな足音。
そして、「道明寺?何かあったの?西田さんから私を探してるって連絡を受けたんだけど」と明るい声と扉が閉められる音がした。

司は振り返った。
そしてそこにいる人物が誰であるか知ると司の足はその人の元へ向かっていた。

「やだ。どうしたの道明寺?」

それは司がつくしを抱きしめたから。
そしてその声は苦しそうにしていたが、それでも笑っていた。
そうだ。笑いながら「ちょっと苦しいってば!」と言った。

「どこ行ってたんだよ!」

「え?どこって仕事してたわよ?今日は忙しくて上から下まで走り回ってるんだからね?」

真面目で努力家で、当然だが司よりも小さな女は、そう言って司の腕の中から彼の顔を見上げた。

「俺はどこに行ってもお前に会えなくて、お前が類と結婚するって知ってショックでどうにかなりそうだったんだぞ?」

「はぁ?何おかしなこと言ってるのよ?どうして私が類と結婚しなきゃならないのよ?」

「どうしてって、それはだな…..と、とにかく仕事をしてたんならそれでいい」

「もう本当に道明寺は時々訳の分からないことを言うから西田さんも大変よね?」

そう言った女は、司のデスクの足もとに置かれた段ボール箱に目を止めた。
そして司の腕から抜け出し蓋の間から覗く表紙に目を輝かせると一冊だけ取り出し手に取るとページをめくりながら言った。

「これ『花より団子』じゃない?なに道明寺この本どうしたの?ねえ、もしかして全巻揃ってるの?私この漫画のファンだったの。うわ~懐かしい!でもうち貧乏だから漫画なんて買えなくてね。優紀から借りて読んでたの」と言って笑った。

そう言えば。と司は、この漫画を西田に用意させた理由を思い出し、そして恋人の口からファンだったと訊かされたからには訊かなければならないことがあったことを思い出した。
それは、牧野つくしは、道暗寺司と花川数という男のどちらを理想の恋人と考えていたかということだ。

「なあ。牧野?」

「ん?なに?」

司の呼びかけに本をめくる手を止めた女は彼を見た。

「お前。この漫画に出てくる男。つまりクセが強い男とそうじゃない男のどっちが好きだったんだ?」

「あ。道暗寺司と花川数ね?この二人の名前って道明寺と花沢類に似てるって思ったけど、世の中にはびっくりするくらい似てる人がいるって言うでしょ?だからこの漫画の二人は道明寺と花沢類に思えて仕方がないの。だってなんだかこの主人公の女の子の家族もうちの家族とよく似てるし、それにこの女の子って__」

「牧野。いいからどっちの男が好きだったんだ?」

司は早くつくしの返事が訊きたくて言葉を遮り訊いた。

「どっちだと思う?」

笑顔で司を見上げる女は静かに言ったが、その口ぶりは彼が聞きたい言葉を知っているはずだと思った。
何故ならそれは、牧野つくしは司の顔に浮かぶ不安な表情を知っているからだ。







「私が好きだったのはクセの強い男よ」











どんな高級なデートよりも二人でいれればそれでいいという女は、司に抱きしめられると苦しい、離してよ!と言ったが司は離さなかった。
そして出来れば今日はこのままずっと抱きしめていたかった。


司は牧野つくしと一緒にいると魂が救済され精神が浄化される。
彼女のことは生きるパワースポットであり、彼女さえいれば嫌なことも辛いことも悩みも全てが解決する。
そして今はただ、あちこちに唇を付けて、その身体を味わいたい思いでいた。
そして今のこの感情はなんだ?と問われれば、ただ幸せだと答えるはずだ。



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