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2018
06.03

金持ちの御曹司~Field of Dreams~

大人向けのお話です。
未成年者の方、またはそのようなお話が苦手な方はお控え下さい。
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道明寺司と言う男はとにかくひと目を引くと言われ、そこに立つだけで誰もが彼に目を奪われる。
それがどれくらい凄いかと言えば、男も女もとにかくそこにいる人間の目をくぎ付けにし、その吐息さえも奪っていくと言われている。
そんな男がリムジンを降り、長いおみ足で颯爽とロビーを横切りエレベーターに乗り込む姿を見た数人の女性が息をすることを忘れバタバタと倒れたことがある。だから道明寺ビルの受付けには、酸素吸入器とAED(自動体外式除細動器)が準備されているのは言うまでもない。

そして彼が奪うのは目や吐息だけではない。
心も魂も奪っていくのだから彼は悪魔か?
それにしてもどれだけすごい吸引力を持つ男なのか。
そんな男は女子社員からダイソン司と呼ばれていることを知らない。
そして彼女たちは思う。
目や心だけ奪うのではなく、身体も奪って欲しいのと__。
私の全てを吸引して欲しいのと__。




そんな司の元へ毎年恒例の社内対抗野球大会決勝戦の始球式の案内が来た。
道明寺ホールディングス株式会社日本支社でレクリエーション活動のひとつとして行われる野球大会は、いくつかの部署で野球の心得のある男たちが集まりチームを結成し、対抗戦を繰り広げるが、決勝戦はドーム球場を貸し切って行われていた。

そして優勝チームに贈られる記念品は、チーム全員とその家族でのハワイ旅行。
まるでプロ球団の優勝記念旅行のようなご褒美に社員一同、いや家族も頑張ることは間違いない。だから早朝から練習に励むチームもいれば、土日で集中的に練習するチームもある。
そして中には練習の一環として55階建ての道明寺ビルを1階から30階まで走って上がる社員もいた。

そして野球。ベースボールと言えばある者にとっては青春の1ページだ。
英徳学園には野球部はなかったが、もし英徳に野球部があったなら司は間違いなくエースでピッチャーだったはずだ。そして彼がその雄姿を見せたいのはひとつ年下の牧野つくし。
野球部のマネージャーとして彼のピッチングを見守る彼女に、夏の全国高等学校野球選手権大会での優勝旗を持ち帰ることを約束したはずだ。

だが英徳に野球部が出来るはずはない。
何しろお坊ちゃんばかりの学園に巨人の星を目指す熱血野球少年や、ドカベンと呼ばれる顔のデカい男や、亡くなった弟の甲子園に行くという夢をバトンタッチされる兄がいるはずもなく、甲子園を目指すなどとんでもない話だ。

それに実は司は野球をした経験がない。
スポーツは誘拐防止のためにやらされた空手、柔道、合気道しか知らない。
だからグローブを嵌めたこともなければ、球を投げたこともない。
ただ男の子なら基本的なルールは知っていると言われている。
何故なら男の子は生まれつきバッドと二つのタマを持っているからだ。
それをどう使うかは自分次第だが、司はその使い道は牧野つくしに対してしか知らなかった。だがそれだけで十分。他に女に使うつもりなどさらさら無ければ、あの白い小さな手以外にバッドもタマも握らせるつもりもない。
つまり司のバッドが暴れるのは牧野つくしの中だけだ。
そして司の金属バッドはいつでも出番OKだ。

そんな男も今は社内に野球チームを作り楽しむことをしているが、ゆくゆくは道明寺ホールディングスが親会社のプロ野球チームを持ちたいと思う。
そしてその球団のオーナーは司だ。

だがなぜ司は球団の経営がしたいのか。
それは野球が司の人生にとって無視できない重要なスポーツだからだ。
何故野球が司にとって重要なスポーツなのか。
それは遠い昔。司がまだ高校生だった頃。タダで野球観戦チケットを手に入れた牧野つくしに誘われ野球観戦をしたことがあった。
そしてあの時、牧野が掴んだホームランボールが司の人生を変えた。

あのゲームを見たばかりに、テレビ中継で二人の姿が世界中に放送され、当時二人の交際に大反対していた母親に牧野つくしと一緒にいるところを見られ、引き離されることになり、そこから色々あって彼女のことだけを忘れるという失態を犯した。
そしてあの時彼女が掴んだホームランボールのおかげで彼女を思い出した。
あの硬球を頭にぶつけられ記憶が戻ったのは奇跡としか言えないが、あの女ならどんな奇跡でも起こせると信じていたから当然と言えば当然の話だが、過去の話はこれくらいでいいか?



もし司が球団オーナーになったら。











「牧野さん。今日もオーナーがお見えよ?」
「え?」
「そうよ、道明寺オーナーよ。素敵よねぇ。あの若さで道明寺ホールディングスの社長で球団オーナーよ?それにあのルックスに魅惑のヴァリトンボイス。あの声で名前を呼ばれたら私、失禁しちゃうかも!」
「やだ、神田さんたらっ!そんなことよりも、ほら、牧野さんそろそろ試合が始まるわ。今日も美しい声でアナウンスをよろしくね!」

牧野つくしは道明寺ホールディングスが所有する球団のホームグランドであるドーム球場でウグイス嬢を務めていた。そして彼女の声は鈴を転がすような声だと言われ、その声で名前を呼ばれた選手たちは一様に成績がよくなる傾向がある。
だからホーム戦でのチームの成績はすこぶるいい。

司は野球にはさして興味はなかった。
だがある球団の経営状況が思わしくなく、身売りを考えていることから買い取り、ほんの気まぐれから球団経営に乗り出した。だが球団の成績は思わしくない。それでもホーム球場での成績は全戦全勝というのだからその要因を知りたいと思った。
そして球団幹部から訊かされたのは、ひとりの女性の存在だと訊かされた。

『オーナー。うちのチームがホームで強いのは、牧野さんというウグイス嬢のお陰です。彼女の声が選手たちを奮い立たせるのです』

司はそんな報告を受け興味を持った。
そして牧野つくしの声を聴くため球場まで出向いた。

『3番、レフト、花沢。レフト、花沢。背番号49』

はじめてその声を聴いた瞬間、雷に打たれた。身体の芯が痺れた。
澄んだ声はまさに鈴をころがすような声。
美しい声だと思った。
司はその声の持ち主に会いたくなった。だが声がいいからと言って見た目もいいとは限らない。実物は見るんじゃなかった。声だけ聴いておけばよかったということは世間ではままある話しだから期待はしなかった。

そして司は試合が終わったあと、彼女を呼んだが、その愛らしい姿に惚れた。
背は司より25センチ低く、サラサラとした黒髪は肩口で切り揃えられていた。
肌の色は白く透明感が感じられた。そして唇は薄いピンク色が塗られ、頬もほんのりとしたピンク色に染まっていた。そして大きくて黒い瞳は彼の姿を映していた。

ああ。彼女は声だけではなくその姿も愛らしい。
なんて素敵な女性なんだと思った。
そして思った。その声で自分の名前を呼んで欲しいと。
その声をベッドの上で訊きたいと。



司はオーナーであることから球場内に特別な席を持っている。
それは年間シートや企業スポンサーだけが入れる場所とはまた別の場所。
本当のオーナーだけの部屋。
ある日彼は試合が終わった後、その部屋に牧野つくしを呼びソファに座らせた。

「牧野さん。今日の試合に勝てたのもあなたのおかげです。あなたの声が選手たちを鼓舞する。あなたの声が聞こえるだけでこの球場は沸き立つ。これからも選手のため、いや球団のため頑張って下さい。今日はあなたの日頃の労をねぎらうため、ささやかですが席を用意しました。あなたが好きだというオムライスとキャラメルパフェも用意しました。どうぞ遠慮なさらず召し上がって下さい」

「オーナー….」

「牧野さん。さあどうぞ。召し上がって下さい」

つくしはそう言われ、ありがとうございます。それではいただきます。と言って食事を始めた。

「….美味しいですね。これ。本当に美味しいです」

司は美味しそうに食事をするその様子を見て、身体が火照るのを感じた。
この女が欲しい。その気持ちが湧き上がり抑えることが出来なくなっていた。

司は飲み物を勧めた。
だがその中には彼女を眠らせるため強めの睡眠薬が入っていた。
そしてその薬が効き始めたのか、彼を見つめる瞳が光りを失いはじめ、何か言おうとしたが、言葉がまとまらなくなると、司は席を立ち彼女の隣へと腰を下ろした。

「牧野さん大丈夫ですか?」

「…..ええ。すみません….なんだか急に眠くなって…..」

「疲れたのでしょう。さあ、遠慮なさらず横になって下さい」

司はそう言ってやさしく彼女の引き寄せ、そのままソファに横にならせ、たくしい腿に頭を乗せさせ、彼女が目を閉じると黒髪を優しく撫で始めた。
司は満足そうに頷くと彼女の身体を抱き上げ隣の部屋に運んだ。
そして女が目を覚ましたとき、司は裸になって女を愛し始めていた。


「….やめてぇ….あっ..あっ…」

女の唇から声が漏れるたび、大きな手は胸の膨らみを覆いながら、しっかりと身体をシーツに抑えつけ、胸元にくすぐるような柔らかい口づけを落としながら女のささやかな抵抗を抑え込んだ。薬が効いている女は力が入らないが、それでもなんとか司の身体の下から抜け出そうとしていた。

「オーナー….どうして?….こんなことを?」

女がゆるやかに意識を取り戻したとき、ぼやけた視界の先に見えたのは球団オーナーの道明寺司。
彼がブラとパンティだけの自分の上に覆い被さっていた。

「牧野…俺はお前の声に惚れた。その美しい声に。いや、それだけじゃない。お前のその可愛らしい顔も好きだ。目が合った瞬間から恋におちた。だからどうしてもお前が欲しくなった」

司の身体の中心にあるバッドは熱く狂おしく、女を切望していた。黒い縮れ毛に囲まれたそれは太く重くそそり立ち、硬く張りつめた状態で彼女の中に入るのを待ち望んでいたが、それを見た女の黒い瞳には恐怖が広がった。

「怖がらないでくれ。俺はただお前を愛したいだけだ。お前を傷つけるようなことは絶対にしない」

そう言うやいなや、司が身を屈めて唇にキスをしようとした。だが女はベッドの上で頭を左右に振った。

「…嫌なのか」

「….止めて….お願い止めて下さい….」

「どうしてだ?俺のことが嫌いか?」

司は今まで女に止めてと言われたことはない。
それに彼のことを嫌いだと言った女もいない。
それなにに牧野つくしは止めてという。

「…..はじめてなんです。男の人とこういうことをするのが……それに私はあなたのことは何も知りません」

司は女の瞳が涙で潤んでいるのを見て、抑え付けていた手を緩めた。

「そうか….心配するな。それならこれから俺を迎える準備をしてやる。俺のことはこれから知ってくれればいい」

司は早速行動に移った。ブラジャーを体から取り去り、胸の頂を親指で擦った。

「…..あっ…..」

反射的に上がった声に舌で乳首を舐め硬く尖らせた。

「…あ….んっ…」

その声と同時に身体が反り返った。
平らで滑らかな腹の上に置いた大きな手をパンティのゴムの下に指を入れ、そのまま引き下ろしたが、しっかりと閉じられ脚は司の手の侵入を許さなかった。だが司は両手で脚を撫で上げ大きく広げ秘所を露出させた。そして女の脚が震え始めると、膝を掴み胸に押し上げた。

「あっ…..」

その姿勢は限りなくエロティックな姿態。
そしてそこに見えたのは、まだ誰も足を踏み入れたことがない秘密の場所。
女が女であることを示す淫らな場所はしっかりと閉じられていたが、司の視線に濡れはじめたのが分かる。だがまだ蜜は滴ってはいない。だが自らをさらけ出された女の口から喘ぎ声が漏れた。その瞬間司は湿った襞を指でゆっくりと撫でた。

「ああっ!」

「気持ちいいか?」

柔らかなその場所は司の指が撫でる以上のことを求めはじめた。
しっとりとした湿り気が増し愛液が滴り落ち、小さな花芽が膨らんで来たのだ。
それを合図に指を挿入し、濡れそぼった内壁を更に濡らそうと擦った。

「ああっ….」

唇から零れた声は快感の声。その証拠にヌルヌルとしたものが溢れ、司の指をぐっしょりと濡らし始めていた。そして目を閉じた女の頬は赤く染まり、その赤みが身体全体に広がっていた。言葉に出来ない声。しっとりとした肌の感触。上気したその肌から立ち昇る興奮した香り。その全てが司のものだ。

「….きれいだ。牧野」

司は女の姿をうっとりと眺めた。
もっと女を刺激したい。そして女を刺激する場所はいくらでもある。
それにはじめての女を喜ばすのは楽しい。絶頂の縁に立たせるのは簡単で、それを長引かせる術も知っている。だが今は直ぐにでも女が欲しかった。女のはじめてを誰にも取られたくないと身体は女を求めることを抑えることが出来なかった。

司は指を抜き、頭を女の秘所にゆっくりと近づけると震える花芽を舐め、唇に挟み、蜜を滴らせる襞に唇を押し付け舌で深く犯した。

「….やぁ…ああっん…ああ…あっ…ああ!」

「甘い…すげぇ甘い。お前のここは、砂糖以上に甘い。それに溢れてきて舐めきれねぇ」

ぴちゃぴちゃと舐める男は溢れ出る蜜を零すことは勿体ないと執拗に舐め続ければ、女の身体が反り返るが、男にがっちりと抑えつけられればそれも出来ず、ただ喘ぐ以外できなかった。

「…..ああ…ダメ……やめっ….あ…あ….っあん…はぁ!」

その声に我慢が出来なくなった男は、自分の名前を呼ぶように言った。

「….牧野…..俺の名前を呼んでくれ…司って…その声で呼んでくれ….」

「…..ああ….やめっ…あ…..ん….」.

「ああ牧野。お前の声はなんて美しいんだ。もっと俺を欲しがってくれ。俺の全部をやる。だからもっと俺を欲しがってくれ!俺の....俺の名前を呼んでくれ!」

「ああ…いいっ…もっと….お願い….」

懇願の声を聴いた瞬間、司はゆっくりと息を吐き、女の腰をしっかりと掴み、怒張の先端を濡れそぼったとば口に擦りつけ少しずつ腰を突き入れ、生まれて初めての経験のように女の中に分け入った。

「ああっ!」

揺るぎない一突きは確実に女の最奥を捕らえ、根元まで埋められているが、それをゆっくりと抜いては挿すを始めたが、やがて速く激しく腰を動かし始めた。その度に上がる声に腰の角度を僅かに変え、深々と突き入れ狭い内側を何度も押し広げた。そして腰を突き出すたびベッドが揺れる。

「ああっ!….はっ…つ..つかさ…もっとぉぉ…..ああ…いい…」

司がククッと笑い怒張を突き立てたまま指で花芽を弾く。
その瞬間子宮の奥がギュっと閉まり、司を締め付ける。

「….もっとか?….もっと欲しいか?…..そうか…それなら…..もっとやるぜ!ああ....牧野…イキそうだ….クソッ….」

腰をグラインドさせ猛然と出入りをさせると同時に先端が女の入口から出るほど引き抜き、また猛烈な勢いで叩き入れた。
司は今までどんな女とも同時にイクことなどなかった。
だが牧野つくしとは違った。身体を密着させ、腰を激しく振れば次々に押し寄せてくる快感というものは、他の女とでは経験出来なかったものだ。その時彼は知った。彼女が司にとって最後の恋人であり運命の人であることを。そんな驚きに打たれながら快感の波に揉まれながら奥深くへ何度も突き入れた。そして女が見悶えるさまを身体で感じ、一秒も狂いもなく同じタイミングで絶頂を迎え咆哮した。







二人はそれから暫くベッドの上から動くことは出来なかったが、彼女は眠ってしまったようだ。司は汗や体液でどろどろになった彼女の身体をタオルで拭こうとベッドから降りた。そしてバスルームでタオルを濡らそうと蛇口をひねった。
その瞬間頭の上からザァーと降り注ぐ水。

ここはバスルームだがシャワーヘッドの下ではない。
それなのに何故頭上から水が降り注ぐ?
司は己の身体を見た。
すると裸だったはずだが何故かスーツを着ていた。
そして手にしていたのはタオルだったはずだが何故か書類。


「…….うわぁぁああああああ!なんじゃこりゃあ!」

司の大声に何事かと執務室に飛び込んで来たのは秘書の西田。

「支社長!どうされましたか!」

西田は大慌てで執務デスクまで駆け寄ると司の手から書類を取り上げた。

「良かった。書類は濡れておりませんね?」

「………西田。俺の心配より書類の心配かよ!それよりこれはいったいどういうことだ!なんで俺の頭の上から水が降り注いでる?!」

男は身じろぎもせずに訊いた。
頭の真上からザァーと降り注ぐ大量の水はどういった理由で自分に降り注ぐのかを。

「大変申し訳ございません。只今このフロアのスプリンクラーの点検中でして、隣の専務室のスプリンクラーの調子が悪く、修理にかかっております。恐らくその影響だと思われます」

「………..」











「あれ?道明寺その髪どうしたの?ストレート?何?雨に降られたの?」

「ああ。地域限定で雨が降った。最近の天気予報はどうなってるのか知らねぇけど俺の頭の上だけに集中的に降った」

ムスッとした口調はつくしにとっては慣れたものだ。

「あははは!そんなこともあるわよ。天気なんて気まぐれなんだから。それより今日の野球の試合楽しみだね!だってあの時の試合と同じ組み合わせよ?」

「……そうだな」

二人が今夜見る試合は高校生の頃、制服デートをした日。メジャーリーグ最終戦のチケットを貰った時見たチームと同じチームの試合。あのときの試合は、4番打者のホームラン世界新記録が掛かった試合だったが、見事にホームランが打たれ、つくしがそのボールを素手でキャッチした。今考えれば凄いことだが、当時はその凄さが分からなかった。
今日はあの時のチームが来日していると訊き、つくしがその試合を見たいと言ったことから、二人で試合を見に行くことになった。

「それにしてもあれから何年たった?懐かしいねぇ。こうして道明寺とまた野球を見に行けるなんて嘘みたい」

「そうだよな….俺たちあれから何年になるんだ?」

「う~ん….何年?まあいいじゃない?あたし達こうして仲良くしてるんだから」

そう言って笑う女は司の左腕を取り、自分の右腕に絡めた。
だが司はその腕を振り解いた。
その瞬間、つくしの顔が「えっ」という顔になった。
それはどうしたの?怒ってるの?と訊いていた。
だが司は左手でつくしの右手を握った。そして力を込めて指をつくしの指に絡めた。
それは、簡単には離れないことを意味する恋人つなぎという手のつなぎ方。

「あん時、試合を見てお前と別れたあとの俺はニューヨークに拉致られた。お前が会いに来てくれるまで会えなかった。今はあん時みてぇにならねぇけど、この手は念のためだ。もう二度とあんな風に離れたくはねぇからな」

あの日の翌日。彼女の作った弁当を英徳の屋上で食べる約束をしていたが、司は行けなかった。
別れ際、また明日と言って別れたが二人に明日はなかった。

「…..そうだったね。でも今のあたし達にそんなことはないから!あたし達、二度と離れないって約束してるもん。だから大丈夫。あたしはずっと道明寺の傍にいるから。ね?」





どんなに強いと言われる男でも、たったひとつ大切なものを失うと、その強さが失われることがある。
司にとってたったひとつの大切なものは、牧野つくし。
だからあの時のように彼女と離れることだけは避けたい。

「ねえ。まさかとは思うけどトラウマになってないわよね?」

「アホか!そんなことある訳ねーだろうが!そ、そんなんじゃねぇぞ。こうやって手をつなぐのは、野球は人が多いから迷子になんねぇ為だ!」

「はいはい。わかりました。そういうことにしとくわ」

司はトラウマかと問われ、そうではないと即答したが、実はそんなこともあったりする。
だが今回の試合で過去のトラウマは払拭できるはずだ。
今の二人はいい大人で、互いに愛し合っていることを認める仲だ。
それに司の母親も認めていて、後はつくしが「うん」と言えばすぐにでも結婚出来るのだから。

「よし!牧野。行くぞ。うちはな、いつか球団を創設するつもりだ。今夜はその勉強だ。それから今夜は俺の傍を絶対に離れるなよ?迷子になるんじゃねぇぞ」

司はそうは言ったが、つくしが迷子になることはない。
なにしろ今夜の席は、道明寺ホールディングスが持つ特別室からの観戦だ。
つまり、司の頭の中で繰り広げられたことも出来る環境の部屋だと言うことだ。
そう考えると、この野球観戦がとても楽しいものに思えて来た。

「よし。今夜はしっかり応援するぞ!」

司はつくしの手をしっかりと握りしめた。
そしてその手を口元へ運びやさしくキスをした。

二度とこの手を離さないと誓って。




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