女子社員から絶大な人気を誇る男。
神々しいオーラを纏い、影武者が何人もいると噂される男。
道明寺財閥の後継者であり道明寺ホールディングス日本支社支社長の男。
そんな存在の男に突然現れた『#執務室の道明寺支社長』というハッシュタグ。
それを見つけた道明寺ホールディングス社員たちのツイートが始まったが、そこは私生活が謎と言われる男の色々を妄想する格好の場所となっていた。
そしてそのことを西田から教えられた司は、次々とツイートされる内容を目で追っていた。
「道明寺支社長は執務室で気分転換にバク転するらしい」
「ライオンと呼ばれる男は、アフリカでライオンと素手で戦って勝ったことがある」
「クールビスになっても本人は頑なにそれを拒否しスーツにネクタイだが、実は執務室ではネクタイを緩めシャツをはだけている」
「大量のスーツとシャツと靴の保管に悩んでいる。そして一度着たスーツは二度と着ない」
「実は眼鏡を持っていて、かけた姿を見た女子社員は悶絶死するという噂がある」
「下着はパープルのブリーフで時々ヒョウ柄」
「未だに独身なのはモテすぎて女を選ぶことが出来ないから」
「専務秘書が支社長の執務室を尋ねたところ、花沢物産の専務と抱き合っていた。そして出て行けと凄んだ声で言われた」
「スマホの待ち受け画面が好きな女性の顔になっていて、しょっちゅう画面を眺めては舐めている」
「雨の日傘もささずに立っているのを見たことがあるが、自分で傘をさしたことがないから傘のさし方がわからない」
「水も滴るいい男が見てみたい」
「フェラーリを10台持っている」
「ニューヨーク帰りだけのことはあり英語が上手で時々オゲッ(OK)、カモーン ベイベーと口走ることがあるが、誰に向かって言っているのか疑問が残る」
「ペンを持つ手がエロい」
「マウスを持つ手つきがセクシー💛」
「見た目からドSという噂があるが、実はドMで支社長専属の女王様がいる」
「左腕に恋人の名前とハートマークを彫っている」
「株主総会で檀上に上がりマイクを掴むといきなり好きな女性の名前を叫んだ」
「唇をついばむだけのキスからディープなヤツから舐めるようなエロいキスまで色々なキスの仕方を知っている。….その唇に食べられたい」
「リムジンでしか移動しない。てか、それが当たり前」
「グループ会社を訪問するとき、車から玄関まで赤ジュータンが敷かれ花を撒く女性が支社長を先導する決まりがある」
「秘書の西田さんに俺は何をすればいいんだと真顔で聞いて、仕事ですと言われていた」
「実は社内に恋人がいて、その人から内線電話がかかってくると仕事そっちのけで彼女のいる部署に行こうとするから西田秘書に止められる」
「じっと見つめられると妊娠する。だから秘書は全員男性」
「支社長以上のカッコいい男はこの世にいない」
「実はあのクルクルとした髪の中に鳥を飼っている」
「支社長独特の慣用句というものがあり凡人には理解不能」
「甘いものは嫌いらしいが、チョココロネは好き」
「占いなんて信じなさそうだけど、実は毎朝必ずテレビの占いコーナーで自分の運勢を確かめている」
「私服がゴージャスでファンタスティックでエキゾチック!…でも見たことねぇから分かんねぇけど多分そう」
「海外事業本部の牧田又蔵部長の名前に異常に反応する」
「IDカードの写真がめちゃくちゃカッコいいらしい」
「目尻の睫毛が好き!」
「学生時代花沢専務とひとりの女性をめぐってバスケの試合をして以来、執務室にはバスケットゴールのバックボードが置いてあり万が一に備え練習している」
「実は手品に凝っていて、執務室でひそかに練習している」
「セクシーという言葉は支社長のためにある」
「ネクタイの趣味がいい」
「あのネクタイを外す女になりたい」
「そのネクタイで手首を縛られたい」
「好きな食べ物はお前と言われたい」
「逆三角形の広い肩に抱きしめられたい」
「バックハグされたい」
「後ろ姿も素敵!広い背中にギュッと爪立てたい」
「イクぞ、という言葉を耳元で囁かれたい。そうしたら嫌いな営業先にもイケる!」
「抱かれたい男ナンバーワン!」
「抱きたい男ナンバーワン!」
「月次定例経営会議で支社長のひと言を焦らされドキドキするのは俺だけか?抱かれたいと思うのは俺だけか?」
「心配するな。俺も抱かれたいと思う」
司は次から次へと投下されるツイート内容を見て笑っていた。
それは社員たちが自分のことをどう思っているのかに対してと、その妄想の面白さに対しての笑い。
だが、うち社員たちは仕事中にいったい何をしているのか。ちゃんと仕事をしているのか。
うちの会社は大丈夫か。といった疑問と心配を生じさせたが、その中に気になるツイートを見つけていた。
それは「下着はパープルのブリーフで時々ヒョウ柄」
まるで見たようなことをツイートされ、もしかするとこれは恋人が投稿したものではないかと考え思わず頬が緩んだ。
それはボクサーブリーフの色のこと。
司のブリーフはパープルではなく黒が基本だが時々ヒョウ柄と書かれているヒョウ柄は、恋人がプレゼントしてくれたものだからだ。
司は思った。
もしかしてこれはアイツからの愛のメッセージか?
今日はヒョウ柄を履いているのかと確認のメッセージか?
それならもちろんイエスと答えることが出来る。
それはバレンタインデーの出来事。
本命にはチョコレートと何かをプレゼントするといったことが当たり前となった昨今。
だが本命もなにも司は牧野つくしのれっきとした恋人なのだから、チョコレートのような甘い物が苦手だとしても、一緒にプレゼントされるブリーフは喜んで受け取ると身に付けると言った。
だが何故ブリーフなのか?
何故ヒョウ柄なのか?
それが疑問として頭の中に浮かんだのは、牧野のような恥ずかしがり屋の女が、男の下着売り場に自ら出向き下着を選ぶとは思えないからだ。
だからその思いを素直に口に出したが、案の定仕事がらみだと訊かされた。
それは食品事業部、食品本部、食品一課がベルギーから輸入した高級チョコレートを販売するため、プレミアムとして用意していたものらしいが、最終的にベルギー製の高級チョコにヒョウ柄のブリーフではイメージとして合わないということになり、社内でそのチョコレートを購入した女子社員にだけ渡されたという。
まあ、牧野だからそんなことだろうと思ったが、それでも大人の階段を上ったではないが、恋人にセクシーな下着を贈ろうと思ったことに頬が緩んだ。
もしそれが他の男。たとえば類の手に渡っていたとすれば、類をぶっ殺してもブリーフを奪ってやるつもりだ。そしてそれがたとえノベルティであろうが、ギブアウェイであろうが、チョコと一緒に手渡されたとき、やっと牧野もここまで来たかと喜んだ。
なぜなら異性に下着を贈るということは、ずばりその下着を脱がせたいということだ。
牧野が男の下着を脱がせたいと思っている。
それも相手は俺。
そのことがどんなに素晴らしいことか多分世間は理解してない。
彼氏になって随分と時間が経ってはいるが、それでも何故か男の前では照れる女。
ロマンチックに心が騒ぐのは17歳で彼女に出会ってからだが、純情だった牧野と手を繋ぎキスしてセックスをするという普通の恋人同士なら半年もあればとっくに終わっているものも、そのプロセスが遅々として進まなかった。
それはまさに道明寺HDが扱うビッグプロジェクト並。
二人が男と女の関係になるには5年はかかると言われていた案件。
つまり愛し合う行為は、ビジネスの手順と同じ入念な下準備というものが必要であり、プレゼンは完璧でなければならないということ。そしてそれを成し得てこそクロージング後にはとてつもなく大きな喜びが待っている。
結果、やっと手に入れた牧野つくしは、確かに大きな喜びだった。
それでも司にとっては唯一無二の存在の女を、5年だろうが10年だろうが何年でも待つつもりでいた。だが本音を言えば、したくてしたくてたまらなかった。
考えてもみろ。
17歳の健全な青少年が好きな女を前に我慢できる方がおかしい。
それに女に生理があるのと同じで、男にも同じ自然の摂理というものがあるからだ。
男というのは、3日に一度は精嚢に溜まった精子を放出しなければ病気になるとまで言われている。だから病気にならないためにも、最低でも月に10日は処理をすることを求められるのだから、どれだけ我慢をしいられたことか。そんな時は右手の世話になることがあったが、こうして今は同じ会社で働いていても、3日に一度の割合など到底無理な話で、だからエロティックな空想をしない方がおかしい。
それは、牧野つくしが恥ずかしそうに司の前にひざまずき、ヒョウ柄のブリーフを脱がしてくれる場面から始まっていた。
そして、それを想像した司のマウスを動かす手は止っていた。

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神々しいオーラを纏い、影武者が何人もいると噂される男。
道明寺財閥の後継者であり道明寺ホールディングス日本支社支社長の男。
そんな存在の男に突然現れた『#執務室の道明寺支社長』というハッシュタグ。
それを見つけた道明寺ホールディングス社員たちのツイートが始まったが、そこは私生活が謎と言われる男の色々を妄想する格好の場所となっていた。
そしてそのことを西田から教えられた司は、次々とツイートされる内容を目で追っていた。
「道明寺支社長は執務室で気分転換にバク転するらしい」
「ライオンと呼ばれる男は、アフリカでライオンと素手で戦って勝ったことがある」
「クールビスになっても本人は頑なにそれを拒否しスーツにネクタイだが、実は執務室ではネクタイを緩めシャツをはだけている」
「大量のスーツとシャツと靴の保管に悩んでいる。そして一度着たスーツは二度と着ない」
「実は眼鏡を持っていて、かけた姿を見た女子社員は悶絶死するという噂がある」
「下着はパープルのブリーフで時々ヒョウ柄」
「未だに独身なのはモテすぎて女を選ぶことが出来ないから」
「専務秘書が支社長の執務室を尋ねたところ、花沢物産の専務と抱き合っていた。そして出て行けと凄んだ声で言われた」
「スマホの待ち受け画面が好きな女性の顔になっていて、しょっちゅう画面を眺めては舐めている」
「雨の日傘もささずに立っているのを見たことがあるが、自分で傘をさしたことがないから傘のさし方がわからない」
「水も滴るいい男が見てみたい」
「フェラーリを10台持っている」
「ニューヨーク帰りだけのことはあり英語が上手で時々オゲッ(OK)、カモーン ベイベーと口走ることがあるが、誰に向かって言っているのか疑問が残る」
「ペンを持つ手がエロい」
「マウスを持つ手つきがセクシー💛」
「見た目からドSという噂があるが、実はドMで支社長専属の女王様がいる」
「左腕に恋人の名前とハートマークを彫っている」
「株主総会で檀上に上がりマイクを掴むといきなり好きな女性の名前を叫んだ」
「唇をついばむだけのキスからディープなヤツから舐めるようなエロいキスまで色々なキスの仕方を知っている。….その唇に食べられたい」
「リムジンでしか移動しない。てか、それが当たり前」
「グループ会社を訪問するとき、車から玄関まで赤ジュータンが敷かれ花を撒く女性が支社長を先導する決まりがある」
「秘書の西田さんに俺は何をすればいいんだと真顔で聞いて、仕事ですと言われていた」
「実は社内に恋人がいて、その人から内線電話がかかってくると仕事そっちのけで彼女のいる部署に行こうとするから西田秘書に止められる」
「じっと見つめられると妊娠する。だから秘書は全員男性」
「支社長以上のカッコいい男はこの世にいない」
「実はあのクルクルとした髪の中に鳥を飼っている」
「支社長独特の慣用句というものがあり凡人には理解不能」
「甘いものは嫌いらしいが、チョココロネは好き」
「占いなんて信じなさそうだけど、実は毎朝必ずテレビの占いコーナーで自分の運勢を確かめている」
「私服がゴージャスでファンタスティックでエキゾチック!…でも見たことねぇから分かんねぇけど多分そう」
「海外事業本部の牧田又蔵部長の名前に異常に反応する」
「IDカードの写真がめちゃくちゃカッコいいらしい」
「目尻の睫毛が好き!」
「学生時代花沢専務とひとりの女性をめぐってバスケの試合をして以来、執務室にはバスケットゴールのバックボードが置いてあり万が一に備え練習している」
「実は手品に凝っていて、執務室でひそかに練習している」
「セクシーという言葉は支社長のためにある」
「ネクタイの趣味がいい」
「あのネクタイを外す女になりたい」
「そのネクタイで手首を縛られたい」
「好きな食べ物はお前と言われたい」
「逆三角形の広い肩に抱きしめられたい」
「バックハグされたい」
「後ろ姿も素敵!広い背中にギュッと爪立てたい」
「イクぞ、という言葉を耳元で囁かれたい。そうしたら嫌いな営業先にもイケる!」
「抱かれたい男ナンバーワン!」
「抱きたい男ナンバーワン!」
「月次定例経営会議で支社長のひと言を焦らされドキドキするのは俺だけか?抱かれたいと思うのは俺だけか?」
「心配するな。俺も抱かれたいと思う」
司は次から次へと投下されるツイート内容を見て笑っていた。
それは社員たちが自分のことをどう思っているのかに対してと、その妄想の面白さに対しての笑い。
だが、うち社員たちは仕事中にいったい何をしているのか。ちゃんと仕事をしているのか。
うちの会社は大丈夫か。といった疑問と心配を生じさせたが、その中に気になるツイートを見つけていた。
それは「下着はパープルのブリーフで時々ヒョウ柄」
まるで見たようなことをツイートされ、もしかするとこれは恋人が投稿したものではないかと考え思わず頬が緩んだ。
それはボクサーブリーフの色のこと。
司のブリーフはパープルではなく黒が基本だが時々ヒョウ柄と書かれているヒョウ柄は、恋人がプレゼントしてくれたものだからだ。
司は思った。
もしかしてこれはアイツからの愛のメッセージか?
今日はヒョウ柄を履いているのかと確認のメッセージか?
それならもちろんイエスと答えることが出来る。
それはバレンタインデーの出来事。
本命にはチョコレートと何かをプレゼントするといったことが当たり前となった昨今。
だが本命もなにも司は牧野つくしのれっきとした恋人なのだから、チョコレートのような甘い物が苦手だとしても、一緒にプレゼントされるブリーフは喜んで受け取ると身に付けると言った。
だが何故ブリーフなのか?
何故ヒョウ柄なのか?
それが疑問として頭の中に浮かんだのは、牧野のような恥ずかしがり屋の女が、男の下着売り場に自ら出向き下着を選ぶとは思えないからだ。
だからその思いを素直に口に出したが、案の定仕事がらみだと訊かされた。
それは食品事業部、食品本部、食品一課がベルギーから輸入した高級チョコレートを販売するため、プレミアムとして用意していたものらしいが、最終的にベルギー製の高級チョコにヒョウ柄のブリーフではイメージとして合わないということになり、社内でそのチョコレートを購入した女子社員にだけ渡されたという。
まあ、牧野だからそんなことだろうと思ったが、それでも大人の階段を上ったではないが、恋人にセクシーな下着を贈ろうと思ったことに頬が緩んだ。
もしそれが他の男。たとえば類の手に渡っていたとすれば、類をぶっ殺してもブリーフを奪ってやるつもりだ。そしてそれがたとえノベルティであろうが、ギブアウェイであろうが、チョコと一緒に手渡されたとき、やっと牧野もここまで来たかと喜んだ。
なぜなら異性に下着を贈るということは、ずばりその下着を脱がせたいということだ。
牧野が男の下着を脱がせたいと思っている。
それも相手は俺。
そのことがどんなに素晴らしいことか多分世間は理解してない。
彼氏になって随分と時間が経ってはいるが、それでも何故か男の前では照れる女。
ロマンチックに心が騒ぐのは17歳で彼女に出会ってからだが、純情だった牧野と手を繋ぎキスしてセックスをするという普通の恋人同士なら半年もあればとっくに終わっているものも、そのプロセスが遅々として進まなかった。
それはまさに道明寺HDが扱うビッグプロジェクト並。
二人が男と女の関係になるには5年はかかると言われていた案件。
つまり愛し合う行為は、ビジネスの手順と同じ入念な下準備というものが必要であり、プレゼンは完璧でなければならないということ。そしてそれを成し得てこそクロージング後にはとてつもなく大きな喜びが待っている。
結果、やっと手に入れた牧野つくしは、確かに大きな喜びだった。
それでも司にとっては唯一無二の存在の女を、5年だろうが10年だろうが何年でも待つつもりでいた。だが本音を言えば、したくてしたくてたまらなかった。
考えてもみろ。
17歳の健全な青少年が好きな女を前に我慢できる方がおかしい。
それに女に生理があるのと同じで、男にも同じ自然の摂理というものがあるからだ。
男というのは、3日に一度は精嚢に溜まった精子を放出しなければ病気になるとまで言われている。だから病気にならないためにも、最低でも月に10日は処理をすることを求められるのだから、どれだけ我慢をしいられたことか。そんな時は右手の世話になることがあったが、こうして今は同じ会社で働いていても、3日に一度の割合など到底無理な話で、だからエロティックな空想をしない方がおかしい。
それは、牧野つくしが恥ずかしそうに司の前にひざまずき、ヒョウ柄のブリーフを脱がしてくれる場面から始まっていた。
そして、それを想像した司のマウスを動かす手は止っていた。

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Comment:5
*妄想が激しいのでご注意下さい。
未成年者の方、またはそのようなお話が苦手な方はお控え下さい。
******************************
「クソッ….まきの……」
ゆっくりと焦らすように脱がされる下着。
ヘアーと戯れてもらってもいい。だが僅かに開いたピンク色の唇が、天に向かって突き上げる固いモノの先端を含み、口で愛してくれてもいい。
だがその行為をしてもらうためには、相当な時間をかけ、理性もなにもかもブッ飛ぶほどイカせることが必要。
だから司はひざまずいた女がブリーフを脱がせ終わると、その身体を抱き上げベッドに横たえた。
….おい。ちょっと待て。
これじゃいつものパターンじゃねぇか?
下手すれば俺が牧野に翻弄されるってお馴染のパターンじゃねぇか?
いや。駄目だ。
もっと激しいのがいい。
牧野が泣いて喚いてお願いもう止めてと言う姿が見たい。
それに司は、自分は絶対にMではないと思っている。
だから『見た目からドSという噂があるが、実はドMで支社長専属の女王様がいる』のツイートは強く否定すべきだ。
だがもしあのツイートの通りだとすれば、司の女王様が誰であるのかは決まっていて、それが厭な訳ではないが、それでも男の立場というのか、沽券にかかわるというのか。支社長たるものビシッとした姿で見られたい思いがある。
そんなことから、司の空想はそこで一度リセットされた。
そしてそこから先は、司がある会社の買収を終え、吸収合併したその会社へ親会社の社長として乗り込んでいくところから始まっていた。
道明寺司と言えば、鋭い眼光の冷たい男と言われ、彼と彼の一族が経営する会社とそのグループは、日本を代表する大企業であり、戦闘的な会社だと言われ、目を付けた会社を次々と買収していった。
そして社長である司は、最近買収した会社でかつての恋人に再会した。
名前は牧野つくし。かつての恋人というからには、今は別れているということだが、別れた理由は花沢類の方が好きだから別れて欲しいという理由だった。
そんな理由で別れた二人の間に流れた時間は、いったい何年になるのか。
だが司は、今の牧野つくしが類と別れひとりでいることを知っていた。
なぜなら類は他の女と結婚しているからだ。
そんな昔の恋人同士の再会は、世の中によくある大人の男と女のごく普通の再会。
司は彼女に対し懐かしそうに接し、彼女もまた同じように接した。
そして司は、二人は大人なのだから、過去は過去でもっと話でもしようと彼女を食事に誘ったが、牧野つくしにとっては躊躇うことだった。
だがかつて自分を大切にしてくれた司を振ったことに対し、どこか申し訳なさがあったのか。熱心に誘う男に嫌とは言えなかった。
そして食事に行き、ホテルのバーで一杯飲み、それから家に送っていくと言われたが、いつの間にか眠っていた。
そして気が付けば薄暗い部屋の中で両手足を大きく広げ、下着姿でベッドの支柱に縛り付けられていた。だが一体自分がどうしてこうなっているのか分からなかった。
部屋の灯りは、ベッドの上の天井に取り付けられたスポットライトの濃赤色。
シーツの色も赤。頭を横に振り向ければ、見えたのはやはり赤い色をした壁。
いったいここはどこなのか。一緒に食事をしていた男はどこへ行ったのか。
その時だった。闇の奥から誰かが椅子から立ち上がった音がした。
「….よう。気が付いたか?」
「ど、道明寺?」
つくしの足元に現れた男は、つい先ほどまで一緒に食事をしたかつて付き合っていた男。
スーツにネクタイ姿だったが、今は上着を脱ぎネクタイを外し、シャツは胸元まではだけていた。そして咥えていた煙草を揉み消すと、吐き出された煙がゆらゆらと天井へと昇っていくのが見えた。
つくしは身震いし、ほんの少し前の記憶を呼び覚ました。
そして気付いた。自分は何らかの薬が入った飲み物を飲まされ、ここに連れてこられたのだと。今ベッドの足元に立つ男に眠らされたのだと。
だが何故。どうして?
何故こんなことをされなければならないのか。
「どうしてか?お前、相変らず昔と変わんねぇな。思ったことが口から漏れてるぜ?
まあいい。今お前がどうしてここにいるかは、お前が思ってる通りだ。俺はお前がトイレに立った隙にお前が頼んだジンジャーエールに薬を入れた。それにしても、酒が飲めないところは昔と変わんねぇんだな。まあそんな話はどうでもいい。俺はお前が欲しい。俺たちが別れて何年たったのか忘れたが、久し振りにお前に会ってお前が欲しくなった。それに俺もNYに戻ってから楽しむことを覚えた。だからそれをお前に教えてやろうと思ってな」
ククッと低い声で笑った男は、牧野つくしと別れた後、NYで激しく危険なセックスを求める男に変わっていた。それは女を支配して服従させることが何よりも楽しいと思える男。
女が泣き叫び、苦痛に身もだえるその姿に快感を覚える男。
そして今の司は、自分の性的な能力と嗜好と本能の全てをもって牧野つくしとセックスを楽しむつもりでいた。
それは本格的なSM行為。
司のマンションには秘密の部屋がある。
そこには、天井から吊り下がる金属の鎖や、壁には鎖がつけられた十字架の形をした背の高い磔台。セックスチェアと呼ばれ、肘掛と脚には黒い革製のバンドが取り付けられ、脚を広げ座れば局部が剥き出しになる仕掛けがされた赤い椅子。他にも何のために使うのか。木馬が置かれていた。
そして大きな扉が開かれた衣装ダンスの中には、鞭や手錠。ロープやロウソク。他にも何に使うのか分からないが鞭のようなものがフックにかけられ、性具と呼ばれる大人のおもちゃが並べられているのが見えた。
司は生まれ持った支配的なセクシーさで多くの女を虜にしてきたが、彼は被虐ではなく加虐を好むサディスト。
支配者がいれば服従する者がいる世界。司はNYのその世界では、常軌を逸した求め方をすると言われ、女の奔放な欲望を引き出し、支配できない女はないと言われていた。
だから今夜は自分を振った女を屈服させることを決めた。
そして牧野つくしは怖がっている。司にはそれが感じられた。それは身体が拘束されているからではない。つい先ほどまで和やかに食事をしていた男の変わりように、この部屋に、ここから逃げ出したいと思っていることが伝わってきた。
だが決して逃がしはしない。
「まきの…死ぬほど楽しませてやるから覚悟しとけ」
押し殺した笑いを含んだ言葉を耳元で囁けば白い身体がビクッと震えた。
「赤は肉欲の色だ。女の肌の色を一番美しく見せる色だ。だからこの部屋は全てが赤い。天井も壁も床も全てがな。俺とお前はこれから肉欲に溺れる。これから朝までずっとだ。
楽しめるぞ?お前はこれから俺のおもちゃだ。俺は支配者でお前は服従する。いいか?俺のセックスは苦痛と歓喜と支配と服従の世界だ。夜が終るまでに俺がそれを教えてやる」
「道明寺_」
つくしは司の言葉を理解すると震えた。
別れたとはいえ、まさか自分にこんなことをする人だとは思わなかったからだ。
何がどうして彼がこんなことになったのか。その想いを口にした。
「何故こんなことを?」
「何故?そんなことも分からないのか?お前は俺の生きがいだった。俺はお前がいるからまともな人間でいることが出来た」
司はベッドの横に立ち、頭をうつむけつくしの顔に寄せた。
「他の女じゃ俺はまともではいられなかった。お前と別れてから誰かを愛することはなかった。出来なかった」
少ししてから、司はつくしの耳に囁いた。
「だから俺はこれからお前を、お前の全てを愛してやる。教えてやるよ、俺が向うでどんなことをしてきたか。きっとお前も気に入るはずだ。泣いて喚いて俺を欲しがるはずだ」
つくしが見上げる司の顔には、悪魔の影が見えた。
それはドス黒い感情。人を愛することを忘れてしまった男というのは、かつての道明寺司の姿。彼女が彼を捨てたばかりに、悪魔は再び男の心の中に住む場所を見つけていた。
「お、お願い道明寺…やめて….酷いことしないで….」
「酷いこと?俺がお前にそんなことする訳ねぇだろ?俺はお前に教えてやりたいだけだ。俺の愛し方をな」
司はそう言うと、ベッドに乗り上げ、つくしの身体を跨ぎ、スリップを胸元から引き裂きベッドの下へ投げ捨てた。
「やめて道明寺!お願い!こんなことしないで!」
いくらつくしが手足をばたつかせたとしても、ベッドに磔にされ繋がれていては抵抗など出来ない。
だがなんとか男の気持を落ち着かせようとした。
「道明寺….こんなことして何になるの?お願い、やめ_」
「黙れ!お前が、俺より類を選んだのが悪い!」
司は一喝するとブラジャーをむしり取り、パンティに手をかけると引き裂いた。
そして裸になった女の腰を強い力で押さえつけ、躊躇なく指を膣の中へ押し込み、出し入れを始めた。
「あ!ああっ!」
「いい感じで濡れてるじゃねぇか。お前、俺と話ながら濡れてたのか?いやらしい女だ。いいか?これから俺がお前をかわいがってやる。NY仕込みのSMってのをお前に教えてやるよ。時間はたっぷりある。朝までオールでかわいがってやる」
指が抜き挿しれされるたび、くちゅくちゅと立つ水音は、やがてぐちゅぐちゅとヌメリを増し秘口から溢れ始めていた。
「真似事じゃない本物の縛りってのをやってやる。俺はビジネスだけじゃなく、そっちの世界でも支配者になった。牧野。お前は今日から俺の女だ。この身体は俺だけのものだ。お前は俺の所有物だ。俺のすることに慣れろ。これからは永遠に一緒だ。もう誰にも触らせない」
そう言い終えると、司は指を抜き、つくしの頭を掴みキスをした。
今の司はつくしにだけ優しかった男ではない。彼女の全てを容赦なく奪う男。
これから始める行為も限界などなく、完全に服従させ心も身体も奪うつもりだ。
そして今度こそ自分から離れられない身体にする。
司はゆっくりとつくしから離れベッドを下りた。そして着ていたものを全て脱ぎ捨て、再びベッドへ上がり、女の身体を跨ぐと、何も言わずに頭を掴み、興奮しているものを口に含ませた。
「ぐッ......!!」
微かに漏れた言葉とも呻きとも言えない声。
大きな身体の一部はやはり大きく、女の口の中を一杯にし、生理的な涙を溢れさせたが、それを無視し、頭を前後に揺すった。それは相手に奉仕をさせる行為ではなく、男が勝手に奪う行為。それを繰り返し激しい快感を自身に与えた。
「いいか。牧野。お前がこれから咥えることが出来るのは俺のものだけだ。お前は一生ここから出られない。俺の傍から離れることは出来ない。俺の身体なしでは生きていけない女にしてやる!」
口の中を司で一杯にした女は何も言うことが出来ないのは当然だが、頭を掴まれ、手足も拘束されていれば、何もすることは出来ない。ただ司の欲望が果てるのを待つしかなかった。
「お前の口の中、最高だぜ!ああ、心配するな。下の口にもやってやるから待ってろ。約束したろ?楽しませてやるよ。但し、まず俺が楽しんでからだがな」
「……支社長。大変申し訳ございません。そろそろ月次定例経営会議の時間ですので、会議室の方へお越しください。それから、そちらのマウスですが、あまり力を入れますと壊れてしまいますのでお気をつけ下さい」
「………」
司は執務室の扉をノックする音は聞こえなかったが、目の前に西田の姿を認めると、マウスを握っている手を見た。そしてクリックしようとしたが、動かず西田の言う通りマウスは壊れていた。
そしてしぶしぶといったように立ち上がり、無言で執務室を出ると会議室へ向かいながら頭の中を整理していた。
司の性的幻想の全ては牧野つくし。
彼女以外の女と出来るはずがないのだから、自分がNYのSM界の支配者などありえない話だ。だがなぜかそんなことを妄想していた。
それにしても、なんで牧野が俺を捨てて類なんかと付き合うことになったんだ?
ちくしょう!類の野郎。あいつ、なんで勝手に俺の妄想の中に出て来るんだよ!
……ったくあの男は昔っからそうだ。
そう言えば、あいつ牧野の夢の中にも勝手に出てきたことがあったな。
まさか。今でもそうなのか?
これは牧野に確認する必要がある。
よし。後で執務室に来るようにメールをするか。
司はそこで思考を纏めると、会議室の扉の前でひと呼吸置いた。
そこから先はビジネスの世界。どんなに牧野つくしのことが気になったとしても、大勢の社員のため、道明寺という会社を引っ張っていくのは自分だ。
それを自覚している男は、気持ちを切り替え扉を開けた。
「待たせたな。諸君。ではこれから月次定例経営会議を始めよう」
人生は常に風向きが変わる。
柳に雪折れなし。
柔軟さこそ有能な秘書の鏡。
わたくし西田。本日も支社長の妄想をぶった切りましたが、恋愛に夢中になるのは決して悪いことではございません。
好きな人がいるからこそ、仕事も頑張れる。あの方はそういった方ですから、許容範囲というものを儲けております。
ですが支社長は牧野様のことを考え始めると、仕事そっちのけになるのが悪い癖です。
西田は司が執務室を出ると、壊れたマウスを取り換え画面に表示されている『#執務室の道明寺支社長』のハッシュタグを永久に削除した。
ある日突然現れたそのタグを作ったのは西田。
社員が支社長の道明寺司のことをどう思っているのか知りたかったから。
生の声を聴くにはこれが一番だと思ったからだ。
そして西田がタグを司に教えたのは、自分が社員たちからどう思われているのかを知って欲しかったから。だが否定的な言葉がひとつもないことに正直なところ驚いていた。
つまり、時に悪戯っぽい少年のような笑顔を浮かべる男は、社員に愛されていることが分かる。
何故なら投稿された呟きは全て好意に満ちた物ばかりだったからだ。
それが、これから先の道明寺ホールディングスの未来を担う若い社員たちの声なら、これから先もこの会社は安泰だ。
誰もが支社長を愛していて、支社長のためならという声がこの会社を支えてくれるからだ。
「社員に全力で応援され愛される男。道明寺司」
「社員一同より愛を込めて」
そんな言葉を寄せられる経営者は、世界広しといえども、道明寺司くらいなものだ。
だが愛しい人のことになると、妄想、幻聴、幻覚は当たり前で舞い上がってしまう男は、昔からそうなのだから仕方がない。
そんな男をサポート出来るのは恐らく世界にひとりだけ。いえ決して自画自賛しているのではございません。しかし、わたくし西田は、今後も道明寺司を全力で支えていく所存でございます。

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未成年者の方、またはそのようなお話が苦手な方はお控え下さい。
******************************
「クソッ….まきの……」
ゆっくりと焦らすように脱がされる下着。
ヘアーと戯れてもらってもいい。だが僅かに開いたピンク色の唇が、天に向かって突き上げる固いモノの先端を含み、口で愛してくれてもいい。
だがその行為をしてもらうためには、相当な時間をかけ、理性もなにもかもブッ飛ぶほどイカせることが必要。
だから司はひざまずいた女がブリーフを脱がせ終わると、その身体を抱き上げベッドに横たえた。
….おい。ちょっと待て。
これじゃいつものパターンじゃねぇか?
下手すれば俺が牧野に翻弄されるってお馴染のパターンじゃねぇか?
いや。駄目だ。
もっと激しいのがいい。
牧野が泣いて喚いてお願いもう止めてと言う姿が見たい。
それに司は、自分は絶対にMではないと思っている。
だから『見た目からドSという噂があるが、実はドMで支社長専属の女王様がいる』のツイートは強く否定すべきだ。
だがもしあのツイートの通りだとすれば、司の女王様が誰であるのかは決まっていて、それが厭な訳ではないが、それでも男の立場というのか、沽券にかかわるというのか。支社長たるものビシッとした姿で見られたい思いがある。
そんなことから、司の空想はそこで一度リセットされた。
そしてそこから先は、司がある会社の買収を終え、吸収合併したその会社へ親会社の社長として乗り込んでいくところから始まっていた。
道明寺司と言えば、鋭い眼光の冷たい男と言われ、彼と彼の一族が経営する会社とそのグループは、日本を代表する大企業であり、戦闘的な会社だと言われ、目を付けた会社を次々と買収していった。
そして社長である司は、最近買収した会社でかつての恋人に再会した。
名前は牧野つくし。かつての恋人というからには、今は別れているということだが、別れた理由は花沢類の方が好きだから別れて欲しいという理由だった。
そんな理由で別れた二人の間に流れた時間は、いったい何年になるのか。
だが司は、今の牧野つくしが類と別れひとりでいることを知っていた。
なぜなら類は他の女と結婚しているからだ。
そんな昔の恋人同士の再会は、世の中によくある大人の男と女のごく普通の再会。
司は彼女に対し懐かしそうに接し、彼女もまた同じように接した。
そして司は、二人は大人なのだから、過去は過去でもっと話でもしようと彼女を食事に誘ったが、牧野つくしにとっては躊躇うことだった。
だがかつて自分を大切にしてくれた司を振ったことに対し、どこか申し訳なさがあったのか。熱心に誘う男に嫌とは言えなかった。
そして食事に行き、ホテルのバーで一杯飲み、それから家に送っていくと言われたが、いつの間にか眠っていた。
そして気が付けば薄暗い部屋の中で両手足を大きく広げ、下着姿でベッドの支柱に縛り付けられていた。だが一体自分がどうしてこうなっているのか分からなかった。
部屋の灯りは、ベッドの上の天井に取り付けられたスポットライトの濃赤色。
シーツの色も赤。頭を横に振り向ければ、見えたのはやはり赤い色をした壁。
いったいここはどこなのか。一緒に食事をしていた男はどこへ行ったのか。
その時だった。闇の奥から誰かが椅子から立ち上がった音がした。
「….よう。気が付いたか?」
「ど、道明寺?」
つくしの足元に現れた男は、つい先ほどまで一緒に食事をしたかつて付き合っていた男。
スーツにネクタイ姿だったが、今は上着を脱ぎネクタイを外し、シャツは胸元まではだけていた。そして咥えていた煙草を揉み消すと、吐き出された煙がゆらゆらと天井へと昇っていくのが見えた。
つくしは身震いし、ほんの少し前の記憶を呼び覚ました。
そして気付いた。自分は何らかの薬が入った飲み物を飲まされ、ここに連れてこられたのだと。今ベッドの足元に立つ男に眠らされたのだと。
だが何故。どうして?
何故こんなことをされなければならないのか。
「どうしてか?お前、相変らず昔と変わんねぇな。思ったことが口から漏れてるぜ?
まあいい。今お前がどうしてここにいるかは、お前が思ってる通りだ。俺はお前がトイレに立った隙にお前が頼んだジンジャーエールに薬を入れた。それにしても、酒が飲めないところは昔と変わんねぇんだな。まあそんな話はどうでもいい。俺はお前が欲しい。俺たちが別れて何年たったのか忘れたが、久し振りにお前に会ってお前が欲しくなった。それに俺もNYに戻ってから楽しむことを覚えた。だからそれをお前に教えてやろうと思ってな」
ククッと低い声で笑った男は、牧野つくしと別れた後、NYで激しく危険なセックスを求める男に変わっていた。それは女を支配して服従させることが何よりも楽しいと思える男。
女が泣き叫び、苦痛に身もだえるその姿に快感を覚える男。
そして今の司は、自分の性的な能力と嗜好と本能の全てをもって牧野つくしとセックスを楽しむつもりでいた。
それは本格的なSM行為。
司のマンションには秘密の部屋がある。
そこには、天井から吊り下がる金属の鎖や、壁には鎖がつけられた十字架の形をした背の高い磔台。セックスチェアと呼ばれ、肘掛と脚には黒い革製のバンドが取り付けられ、脚を広げ座れば局部が剥き出しになる仕掛けがされた赤い椅子。他にも何のために使うのか。木馬が置かれていた。
そして大きな扉が開かれた衣装ダンスの中には、鞭や手錠。ロープやロウソク。他にも何に使うのか分からないが鞭のようなものがフックにかけられ、性具と呼ばれる大人のおもちゃが並べられているのが見えた。
司は生まれ持った支配的なセクシーさで多くの女を虜にしてきたが、彼は被虐ではなく加虐を好むサディスト。
支配者がいれば服従する者がいる世界。司はNYのその世界では、常軌を逸した求め方をすると言われ、女の奔放な欲望を引き出し、支配できない女はないと言われていた。
だから今夜は自分を振った女を屈服させることを決めた。
そして牧野つくしは怖がっている。司にはそれが感じられた。それは身体が拘束されているからではない。つい先ほどまで和やかに食事をしていた男の変わりように、この部屋に、ここから逃げ出したいと思っていることが伝わってきた。
だが決して逃がしはしない。
「まきの…死ぬほど楽しませてやるから覚悟しとけ」
押し殺した笑いを含んだ言葉を耳元で囁けば白い身体がビクッと震えた。
「赤は肉欲の色だ。女の肌の色を一番美しく見せる色だ。だからこの部屋は全てが赤い。天井も壁も床も全てがな。俺とお前はこれから肉欲に溺れる。これから朝までずっとだ。
楽しめるぞ?お前はこれから俺のおもちゃだ。俺は支配者でお前は服従する。いいか?俺のセックスは苦痛と歓喜と支配と服従の世界だ。夜が終るまでに俺がそれを教えてやる」
「道明寺_」
つくしは司の言葉を理解すると震えた。
別れたとはいえ、まさか自分にこんなことをする人だとは思わなかったからだ。
何がどうして彼がこんなことになったのか。その想いを口にした。
「何故こんなことを?」
「何故?そんなことも分からないのか?お前は俺の生きがいだった。俺はお前がいるからまともな人間でいることが出来た」
司はベッドの横に立ち、頭をうつむけつくしの顔に寄せた。
「他の女じゃ俺はまともではいられなかった。お前と別れてから誰かを愛することはなかった。出来なかった」
少ししてから、司はつくしの耳に囁いた。
「だから俺はこれからお前を、お前の全てを愛してやる。教えてやるよ、俺が向うでどんなことをしてきたか。きっとお前も気に入るはずだ。泣いて喚いて俺を欲しがるはずだ」
つくしが見上げる司の顔には、悪魔の影が見えた。
それはドス黒い感情。人を愛することを忘れてしまった男というのは、かつての道明寺司の姿。彼女が彼を捨てたばかりに、悪魔は再び男の心の中に住む場所を見つけていた。
「お、お願い道明寺…やめて….酷いことしないで….」
「酷いこと?俺がお前にそんなことする訳ねぇだろ?俺はお前に教えてやりたいだけだ。俺の愛し方をな」
司はそう言うと、ベッドに乗り上げ、つくしの身体を跨ぎ、スリップを胸元から引き裂きベッドの下へ投げ捨てた。
「やめて道明寺!お願い!こんなことしないで!」
いくらつくしが手足をばたつかせたとしても、ベッドに磔にされ繋がれていては抵抗など出来ない。
だがなんとか男の気持を落ち着かせようとした。
「道明寺….こんなことして何になるの?お願い、やめ_」
「黙れ!お前が、俺より類を選んだのが悪い!」
司は一喝するとブラジャーをむしり取り、パンティに手をかけると引き裂いた。
そして裸になった女の腰を強い力で押さえつけ、躊躇なく指を膣の中へ押し込み、出し入れを始めた。
「あ!ああっ!」
「いい感じで濡れてるじゃねぇか。お前、俺と話ながら濡れてたのか?いやらしい女だ。いいか?これから俺がお前をかわいがってやる。NY仕込みのSMってのをお前に教えてやるよ。時間はたっぷりある。朝までオールでかわいがってやる」
指が抜き挿しれされるたび、くちゅくちゅと立つ水音は、やがてぐちゅぐちゅとヌメリを増し秘口から溢れ始めていた。
「真似事じゃない本物の縛りってのをやってやる。俺はビジネスだけじゃなく、そっちの世界でも支配者になった。牧野。お前は今日から俺の女だ。この身体は俺だけのものだ。お前は俺の所有物だ。俺のすることに慣れろ。これからは永遠に一緒だ。もう誰にも触らせない」
そう言い終えると、司は指を抜き、つくしの頭を掴みキスをした。
今の司はつくしにだけ優しかった男ではない。彼女の全てを容赦なく奪う男。
これから始める行為も限界などなく、完全に服従させ心も身体も奪うつもりだ。
そして今度こそ自分から離れられない身体にする。
司はゆっくりとつくしから離れベッドを下りた。そして着ていたものを全て脱ぎ捨て、再びベッドへ上がり、女の身体を跨ぐと、何も言わずに頭を掴み、興奮しているものを口に含ませた。
「ぐッ......!!」
微かに漏れた言葉とも呻きとも言えない声。
大きな身体の一部はやはり大きく、女の口の中を一杯にし、生理的な涙を溢れさせたが、それを無視し、頭を前後に揺すった。それは相手に奉仕をさせる行為ではなく、男が勝手に奪う行為。それを繰り返し激しい快感を自身に与えた。
「いいか。牧野。お前がこれから咥えることが出来るのは俺のものだけだ。お前は一生ここから出られない。俺の傍から離れることは出来ない。俺の身体なしでは生きていけない女にしてやる!」
口の中を司で一杯にした女は何も言うことが出来ないのは当然だが、頭を掴まれ、手足も拘束されていれば、何もすることは出来ない。ただ司の欲望が果てるのを待つしかなかった。
「お前の口の中、最高だぜ!ああ、心配するな。下の口にもやってやるから待ってろ。約束したろ?楽しませてやるよ。但し、まず俺が楽しんでからだがな」
「……支社長。大変申し訳ございません。そろそろ月次定例経営会議の時間ですので、会議室の方へお越しください。それから、そちらのマウスですが、あまり力を入れますと壊れてしまいますのでお気をつけ下さい」
「………」
司は執務室の扉をノックする音は聞こえなかったが、目の前に西田の姿を認めると、マウスを握っている手を見た。そしてクリックしようとしたが、動かず西田の言う通りマウスは壊れていた。
そしてしぶしぶといったように立ち上がり、無言で執務室を出ると会議室へ向かいながら頭の中を整理していた。
司の性的幻想の全ては牧野つくし。
彼女以外の女と出来るはずがないのだから、自分がNYのSM界の支配者などありえない話だ。だがなぜかそんなことを妄想していた。
それにしても、なんで牧野が俺を捨てて類なんかと付き合うことになったんだ?
ちくしょう!類の野郎。あいつ、なんで勝手に俺の妄想の中に出て来るんだよ!
……ったくあの男は昔っからそうだ。
そう言えば、あいつ牧野の夢の中にも勝手に出てきたことがあったな。
まさか。今でもそうなのか?
これは牧野に確認する必要がある。
よし。後で執務室に来るようにメールをするか。
司はそこで思考を纏めると、会議室の扉の前でひと呼吸置いた。
そこから先はビジネスの世界。どんなに牧野つくしのことが気になったとしても、大勢の社員のため、道明寺という会社を引っ張っていくのは自分だ。
それを自覚している男は、気持ちを切り替え扉を開けた。
「待たせたな。諸君。ではこれから月次定例経営会議を始めよう」
人生は常に風向きが変わる。
柳に雪折れなし。
柔軟さこそ有能な秘書の鏡。
わたくし西田。本日も支社長の妄想をぶった切りましたが、恋愛に夢中になるのは決して悪いことではございません。
好きな人がいるからこそ、仕事も頑張れる。あの方はそういった方ですから、許容範囲というものを儲けております。
ですが支社長は牧野様のことを考え始めると、仕事そっちのけになるのが悪い癖です。
西田は司が執務室を出ると、壊れたマウスを取り換え画面に表示されている『#執務室の道明寺支社長』のハッシュタグを永久に削除した。
ある日突然現れたそのタグを作ったのは西田。
社員が支社長の道明寺司のことをどう思っているのか知りたかったから。
生の声を聴くにはこれが一番だと思ったからだ。
そして西田がタグを司に教えたのは、自分が社員たちからどう思われているのかを知って欲しかったから。だが否定的な言葉がひとつもないことに正直なところ驚いていた。
つまり、時に悪戯っぽい少年のような笑顔を浮かべる男は、社員に愛されていることが分かる。
何故なら投稿された呟きは全て好意に満ちた物ばかりだったからだ。
それが、これから先の道明寺ホールディングスの未来を担う若い社員たちの声なら、これから先もこの会社は安泰だ。
誰もが支社長を愛していて、支社長のためならという声がこの会社を支えてくれるからだ。
「社員に全力で応援され愛される男。道明寺司」
「社員一同より愛を込めて」
そんな言葉を寄せられる経営者は、世界広しといえども、道明寺司くらいなものだ。
だが愛しい人のことになると、妄想、幻聴、幻覚は当たり前で舞い上がってしまう男は、昔からそうなのだから仕方がない。
そんな男をサポート出来るのは恐らく世界にひとりだけ。いえ決して自画自賛しているのではございません。しかし、わたくし西田は、今後も道明寺司を全力で支えていく所存でございます。

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