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2019
06.18

金持ちの御曹司~愛という名の欲望~<後編>

世界には色々な形の愛がある。
そして恋煩いという病に取りつかれた男が取った行動は女を自分だけのものにすること。
金も地位も権力も。そして美貌も持つ男に振り向く女は多い。
だが司が欲しいのは目の前の女だけ。
だから司は目の前の女から目を離さなかった。




自分の肩までしかない華奢な身体。
艶のある黒髪と黒い大きな瞳。
薄い色の口紅を付けた唇。
初めて牧野つくしを見た時から身体が疼き、彼女を思い淫らなことを想像していた。

司の部屋の壁には牧野つくしの写真が何枚も貼られ、彼女が食品分析官の仕事用に会社で使っている白衣が司のベッドの上にあった。
それは会社のロッカーの中にあった医者が患者の診察をする時と同じ白衣。
その白衣は人の形に広げられ、裸になった司は白衣の腰の部分に尻を落とした姿勢で座り、彼女を思い悦楽の表情を浮かべ、自身の怒張したものを握り締め、上下に激しく擦ることを繰り返していた。
それは健康な男なら、していてもおかしくはない本能に従ってする行為だが、どんな女も手に入れることが出来ると言われる男の想いは、彼女だけに向けられていて他の女は欲しくはなかった。代用品で済ませるつもりはなく、白く吹き上げるものを注ぎ込みたいのは彼女の中だけ。それがこれから叶えられると思うと下半身の疼きが止められなかった。

司はすぐ目の前にいる女の香りを吸い込んだ。
それは今まで白衣から香っていた匂いとは別の匂い。
実際に匂う女の香りは優しい香りがした。
そしてこれから行われるあらゆる局面を想像した。
司の下に裸で横たわる女の白い肌を蹂躙する己の姿を。
深く突く度に喘ぎ声を上げる女の姿を。
大きく開かせた両脚の間の濡れて滑りやすくなった場所から香る匂いを吸い込み、そこを舐め吸い上げ最後に挿入する姿を。そして脚を開かせた女を上に跨らせ、下から激しく突き上げ可愛らしい胸が揺れる姿を眺めることを。

「牧野つくし。俺はお前が欲しい。お前の中に入りたい。だから大人しく俺を受け入れろ」

司は逃げようとする女を掴まえ寝室へ運び込みベッドの上へ寝かせると、素早くズボンと下着を脱いで豹を思わせる素早い身のこなしで女の上に跨った。そして身体をよじり弓なりになり逃げようとする女の身体を押さえつけた。

「い、いや…止めて。止めて下さい!」

「ダメだ。止めることは出来ない。俺はお前が欲しい」

司は抵抗する女の服を乱暴に脱がせ一瞬にして裸にした。そして両手をベッドの上にあったスカーフで縛り頭の上に縫い付け難なく女の身動きを封じた。

「ああ牧野.....なんて綺麗なんだ。俺は今までこんなに綺麗な裸を見たことがない。俺はお前が欲しくて仕事が手につかなかった。お前のことを考えるだけで硬く、熱くなって頭がおかしくなりそうだった」

そう言った男の身体の下半身は天に向かって真っすぐに屹立していて、今にも弾けそうに膨らんでいた。

「いや….嫌っ!止めて!道明寺副社長!私はあなたなんか欲しくな__」

司は、「欲しくない」の言葉を言わせなかった。
自分を否定する言葉を訊きたくなかった。だから容赦のないキスをして唇を塞いだ。
そして片手をきつく閉じられた脚の間に入れ、臆することなく指を1本奥へと挿し入れた。

「__!」

女は頭を左右に振り司の唇から逃れようとした。だが司はそうはさせなかった。
優しくない指は内側の敏感な襞を擦り湿らせ潤いを引き出そうとした。
そして徐々に潤いを増して来ると指を2本に増やし余すことなく探り始めた。
すると初めこそ歓迎しなかったそこは司の指に吸い付き締め付け甘い蜜を流し始めた。
だが司を受け入れるにはまだ狭い。だから司は唇を離し、広げられた脚の間に腰を据え、細い足首を掴み、膝を折り曲げ胸に当たるようにすると、隠されていた場所を目の前にさらけ出した。

「や、止めて!嫌っ!お願い離して!」

司の前にあるのはピンク色をした二枚貝が閉じられた姿。そこは開けられることを待っている鍵穴だった。そして鍵となってそこに入れたいのは己の高ぶり。

「止めて欲しいって?お前は嫌だと言っても身体は俺を求めて涎を流してる。見ろよコレを」

司は目の前の陰部を濡らす蜜を指先で掬い女の前に差し出した。

「いやらしいな。こんなに俺の指を濡らすんだからな」

それはサラサラとした水ではないヌメリを含んだ蜜。
そして彼女の羞恥を煽ると指先の残り香を嗅いだ。

「お前の匂いがする。だがこうした方がもっと匂いを感じることが出来る」

と言って目の前にさらけ出された蜜を流す場所に顔を近づけ唇を付けた。
すると華奢な身体が反り返った。だが唇を離しはしなかった。
それどころか折り曲げた膝を容赦なく押さえつけ、ゆっくりと時間をかけ濡れた舌でいたぶるように舐め、膨れた蕾を口に含み転がし攻めた。

「はぁ......あっ!…んぁあ!止めて…ダメ!….あっ!…あぁ…あああ!!」

司は頭の上で聞える声に舌を上下に滑らせピチャピチャと音を立てて舐め、襞の奥を味わうように舌を入れると、今度は引き出し蕾の先を舌先でチロチロと触れてから、息を吹きかけると唇で挟んだ。熱い息も愛撫そのもので繰り返される行為に大きく押し開かれた股は震え始めた。

「こんなことされたら正気じゃいられないって?いいぞ。それならもっとしてやるよ。俺はお前の正気を奪いたい。我を失った姿を見たい。俺が欲しいっていうお前の姿が見たい」

司はその言葉通り再び口を付けると巧に容赦なく甘美な攻めを続けたが、絶頂に導くことはしなかった。
それは相手に求めさせたいから。
だから欲しいというまで徹底的に攻めた。
舌を使い舐め回し、唇で挟み甘噛みをし、指で螺旋を描きながら奥まで入れ、内壁を擦り女の頭の中をカラッポにさせようとした。
それは熟練した舌の動き。細長くても力強い蛇の舌のような貪欲さで奥へ入ると執拗にいたぶり、牧野つくしのジュースを吸った。
そして司が触れている一点だけが知覚を感じるようにさせた。

「あ…だ、だめ…..」

だが本人の意志とは別にさっきまで何とか抵抗しようとしていた身体は司の舌を、唇を、指を受け入れたのが分かった。股の震えは痙攣となり足の指先がキュッと丸まったからだ。
それは感じている証拠。淡いピンク色に染まった身体はこれ以上ないほど熱を帯びていた。
だから司は顔を上げると女の蜜で濡れた唇を舐め、口元に笑みを浮かべた。

「欲しいか?」

司は今にもはち切れそうなほど昂ったものを握り、すっかり潤っている場所に当て先端で擦った。

「これが欲しいか?」

だが女は首を横に振った。
つまりそれは嫌だということ。
だが司はそれを認めることは出来なかった。
この女の全てを自分のものにしたい。俺のものだと主張したい。誰にも渡したくない。
だからここまで来て自分を否定する女を許さないという思いから、司は躊躇うことなく一気に根元まで貫いた。
すると女はアッと息を呑み、苦しそうに呻いた。そして痛い、止めてと言った。
だが女は手を縛られた状態で司を押しのけることも出来なければ彼を叩くことも出来なかった。

司は身動きできない女を突くのを止めなかった。
太くて長いものは身体を広げ、出入りを繰り返して容赦のないテクニックを使った。

「ああ、いい…..牧野….最高だ」

初めはゆっくりとしていた腰の振りも、やがて速く荒々しい動きに変わった。
そして腰を振るたびに滑りが良くなり、渇望が止めらない身体を満足させようと抽出を繰り返すが、なめらかさを増したそこは司を最奥まで引き込んだ。

「牧野…すげぇいい….お前のここは俺を咥え込んで喜んでる」

司は快楽の中に身を落とすと、速度を上げて腰を振った。
打ちつけるように腰をぶつけ、螺旋を描きドリルのように動いて突き立てることを止めなかった。

「ここはお前の鍵穴だ。どこを押せば快楽への扉が開くか俺だけが知っている。この穴に入ることが許されるのは俺だけだ。他の男はここに入ることは出来ないし許されない。お前の身体を味わうのは俺だけになる。それにお前の身体に残る俺の唇の痕と俺の匂いは他の男を寄せ付けることを許さない」

激しく突くたびに叫び声を上げる女は、司の大きさからなのか。苦しげな鋭い悲鳴を上げているが、司は自分と同じ感覚を味わって欲しいと、ぎりぎりのところまで抜くと今度はゆっくりと挿れた。

「大丈夫だ。お前もすぐによくなる」

司は、そう言って今度は優しくなだめながら腰を動かしたが女は涙を浮かべて言った。

「止めて….お願い…….初めてなの….」

その言葉に司は動きを止め女の顔を呆然と見た。
まさか今時いい年をした女が初めてだとは思わなかった。

「ああ…牧野。そうだったのか?お前、初めてだったのか?」

司の両手は女の腰から離れ彼女の頬を包んだ。それから縛っていたスカーフを解き、女の中に自身を入れたまま、力の抜けた身体を抱き起すとしっかりと抱いた。
抜かなかったのは、一度なかに入ったら抜け出すことが出来ないほど気持ちがよかったから。そして司はこの温もりを味わう初めての男だったことを知り、貴重な掘り出し物を見つけたことに気付いた。

「牧野。俺はお前を大切にする。だから俺の恋人になってくれ。一生大事にする。二度とこんなことはしない。だから俺の恋人になってくれ」

そして司は女が口を開く前に優しくキスをすると、涙をキスで拭きとった。











究極のエレガンスに言葉はいらないと言われるが、今の司は言葉を発することが躊躇われた。
いやそうではない。快感に打ち震えた男は言葉を発することが出来なかった。
最近の牧野絡みの夢は、いつも途中でぶった切られ完遂することが出来ないか、司にとって嬉しい展開ではないものが多かった。だからこの夢はある意味で男の征服欲を満たしてくれた。

だが今はそんなことで満足している場合ではない。
こんな夢を見ることになった問題を解決しなければならない。
それは司が勝手につくしの部屋の鍵を変えた件だ。
牧野はまだ怒っていて、口を利いてはくれない。
電話をかけてもいつも留守番電話になっていて出てくれない。
メールを送っても返事は来ない。
それに社内で見かけても無視される。

「俺はどうしたらいいんだ?」

その時だった。
執務室の扉をノックする音がした。

「失礼いたします。支社長。牧野様がお見えです」

西田の後ろから現れたのは司の最愛の人で喧嘩中の恋人。
その恋人は、司の傍まで来ると言った。

「ごめん。道明寺。私…言い過ぎたかも。道明寺は私のことを心配してくれたのよね?近くのマンションで空き巣被害があったって訊いて心配になったのよね?よく考えてみたら道明寺のしてくれたことは私の安全のためだもの。言い過ぎてゴメンね」

その言葉は司を天にも昇る気持ちにさせた。
まさに地獄から天国。天使が頭の上でファンファーレを鳴らし、くす玉が割られ中から鳩が飛び出した。
そして今、目の前にいるのは天使かと見紛うばかりのかわいい女。
司が悪いことをすれば悪いと怒るが、自分が悪いと思えば素直に謝るところは昔と変わらない司の恋人。
だから司も謝った。

「俺も勝手に鍵を変えちまって悪かったと思ってる」

「うん。そうよね。前もって言ってくれたら私も驚かなかったと思うけど、何も言われなかったし…..。だから出張から帰ったら鍵が開かないって驚くのは当たり前よね?」

恋人の言葉は正しい。だから司は立ち上ると、「そうだな。お前の言う通りだ。すまなかった」と言って彼女を抱きしめた。










百年先も愛を誓う。君は僕の全てと歌ったアイドルグループがいるが、司は百年どころか二百年先でも三百年先でも愛を誓える。いや未来を誓うというなら過去も語らなければならないはずだが、司は千年前から彼女を愛していたはずだ。
つまりそれは人生とは円を描いていて、人は死んでもまた再び同じ人生を繰り返すと言うドイツの哲学者ニーチェの永劫回帰を実践したということだが、二人は同じ土星人であり広い宇宙の中で二人が出会うことは初めから決められていて、ニーチェよりも遥かに昔から決まっていたに過ぎないと考えていた。
そして幸せだと改めて思うのは、現世に於いても無事めぐり逢い一緒に過ごせていること。
だから時に喧嘩をしても二人は離れることはない。
司はそれを最愛の人に伝えたいという思いで更に強くつくしを抱きしめた。



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2019
06.17

金持ちの御曹司~愛という名の欲望~<前編>

大人向けのお話です。
未成年者の方、またはそのようなお話が苦手な方はお控え下さい。
*******************************








眉間に皺を寄せた様子は苦悩を表しているように見えるが、実はそれは色気を表していると言われる男に親友は言った。

「なあ司。お前は何フェチだ?」

「総二郎。お前司に向かってそんなアホな質問をするな。こいつは牧野フェチに決まってんだろ?こいつは牧野って名前だけでも表情が確実に変わる。心持ちだが口角が下がって頬が緩む。でもって気持ちが落ち着かなくなってソワソワして牧野がそこに現れるんじゃねぇかって牧野の姿を探して目が泳ぐようになる。そうなると流石の西田秘書も手に負えなくなる。だから社内で野放しとまでは言わねぇが、30分くらいなら自由にさせてもらえる。その間に牧野を見つけて構ってもらう。そうでもしなきゃ司は仕事が手につかなくなるからな。まあ、牧野にしてみれば仕事中に突然司が現れるんだから迷惑かもしんねぇけど、そこは会社の為だ。諦めもついてるっての?これも仕事の一部だって受け入れてるって訳だ」

「ふ~ん。そうか。牧野は色々と大変なんだな」

「そうだぞ?社内恋愛ってのは色々とややこしいし、面倒なこともあるぞ?もしも社内恋愛で別れてみろ。男にしろ女にしろ二度と顔を見たくないと思えるようになった相手と嫌でも顔を合わせるんだ。だから社内恋愛のリスクは二人の関係が上手くいかなくなった時だ。まあそれでも付き合ってる時はスリルがあるよな?他人行儀な内線電話をかけてみたり、暗号のようなメールを送ってみたり、社内でこっそり待ち合わせをしたり、誰もいない会議室にシケ込んでドキドキして楽しいだろうよ。たださっきも言ったように二人の関係が楽しく続いている限りだぞ?」

あきらは総二郎を前に社内恋愛について語っているが、執務デスクでムスッとした顔をした男は、そんなあきらを睨んだ。

「あきら。お前何しに来たんだ?俺と牧野が喧嘩したことがそんなに嬉しいのか?」

「いや。それは違うぞ司。俺がここに来たのは、お前が落ち込んでんじゃねぇかと思って励ましに来た。何もお前の落ち込んだ姿を見たくて総二郎を誘った訳じゃない。な?総二郎?」

あきらはそうは言ったが、いつも偉そうな顔をしている親友の落ち込んでいる顔を見に来たことは当たっている。

「ああ。そうだぞ司。俺もあきらも忙しい中、お前を慰めに来た。でもなぁ。どうしてそんなことをしたんだ?」

そして総二郎もあきらから司が落ち込んでいると言われ、見に行ってみないかと言われ足取り軽く親友の誘いに乗った。

「どうしてって、あいつが喜ぶと思ったからだ」

「あのなあ司。お前何年牧野と恋人同士やってんだ?牧野はお前の過剰な保護は嫌いだろ?付き合うなら対等じゃなきゃ嫌だって女だったろ?それなのにそんな勝手なことしてあいつが喜ぶと思ったのか?あいつの部屋の鍵を勝手に変えるなんて」

そうは言われたが、司はただつくしのことが心配だったからそうした。
何しろつい最近恋人が住むマンションのすぐ近くのマンションに空き巣が入った。
だから女のひとり暮らしにどれだけ用心しても足りないことはない。たとえそこがオートロックでセキュリティがしっかりしているマンションだとしても用心に越したことはないはずだ。

それに司に言わせれば恋人が住むマンションのセキュリティは完璧ではない。
本当ならもっとセキュリティが行き届いた場所。つまり司と同じマンション。いや出来れば同じ部屋に住んで欲しい。何しろリビングは100坪あるのだから、恋人がどんなに沢山の荷物を持ち込んだとしても充分対応できるはずだ。
それに名字を一緒にすることに躊躇いがあるなら、せめて住所だけでも一緒にしたかった。

だが道徳心が強い女は結婚してない男女が同じ部屋に住むなどとんでもないと言う。
いや。それ以前に支社長である司とつくしが付き合っていることは秘密だ。
それに仮に司のマンションと同じマンションに住むとしたら、何故一介の社員の給料で支社長と同じ高級マンションに住むことが出来るのかという疑問が生じる。
だから同じマンションに住めないなら、せめて部屋の鍵だけでもとセキュリティが高いものに変えた。
そうしたら勝手なことをしないでと怒られた。
だが司に言わせれば部屋の鍵を交換したのはリスクマネジメントを取ったに過ぎなかった。
何しろ司は曲がりなりにも道明寺ホールディングスの日本支社長であり、道明寺財閥の後継者なのだから、リスクについての心得といったものは充分理解していた。

「おい。司。いいか。牧野って女は自立心が旺盛な女だ。昔あいつ言ったんだろ?私は守られる女じゃないって。だからお前は極力あいつの意志を尊重しているはずだ。とは言え犯罪に巻き込まれる前に予防策を取ることは悪いことじゃない。だからお前のしたことが全面的に悪いとは思わねぇけど、やっぱあいつにひと言いうべきだったろ?だって出張から帰ったら玄関の鍵が変わってたらそりゃ怒るだろ?あ。司、それともアレか?もしかしてあわよくば、これを機に一緒に住もうとか言うつもりでいたのか?」

司はあきらの言葉にそうか!その手があったかと膝を叩かないまでも思った。
鍵が開かないことで司を頼ってきた女を自分の部屋に連れ帰りそのまま閉じ込めてしまう。
それも強固な鍵のかかった部屋に閉じ込める。
そうすれば、いつも最愛の人と一緒にいることが出来る。それは実にいいアイデアだと思った。
そんなことを考えている司に、あきらと総二郎は、
「それにしても司の落ち込んだ姿を見たのは久し振りだったが、いいもの見た様な気がするわ。なんかストレス解消出来た気がするぜ、サンキュー司」
と言って執務室を出て行くと、司は人をストレス解消の対象にするなと思いながら椅子に背中を預けると目を閉じた。











「部屋の扉の鍵が開かなくなったというのは、あなたですか?」

究極の鍵師と呼ばれる男は、どんなに開けることが困難な扉も簡単に開けることが出来ると言われているが仕事を選ぶと言われていた。
そんな男は180センチをゆうに超える長身に黒い服に身を包み女の前に現れたが、その服装はまるで暗闇に紛れて仕事をすることが心地いいといった姿。
だが実際はその通りで男は夜しか仕事をしないと言われていた。
だから彼の腕が使われるのは、帰宅して家の鍵を紛失したことに気付き中に入れないといった住人が殆どだ。
そして料金は時と場合によって違った。つまり言い値ということになるが、男はそれでもよければ扉を開けるといったスタンスで仕事をしていた。

「みません。鍵が鍵穴に合わないんです。何故こんなことになったのか.....。朝家を出る時はちゃんと鍵をかけることが出来たんです。それなのにどうしてなのか訳がわからないんです。それにこの部屋の鍵は普通の鍵屋さんでは簡単には開けることが出来ないと言われていて、それであなたの事を知ってお願いしたんですが、開けることが出来ますか?」

それはセキュリティを重視したマンションが特別に設えた特殊な鍵。
その鍵が何故か鍵穴に挿し込むことが出来なくなっていた。

「ええ。私はどんな鍵も開けることが出来ます。ただし料金は高いですよ?」

女は夜中に鍵屋を呼ぶのは初めてであり、いったいいくら必要なのか分かなかったが、財布の中身を頭に思い浮かべながら「お願いします」と答えた。
すると、「分かりました。それではすぐに鍵を開けましょう」と言って男は鍵を開けるための道具を取り出し鍵穴に挿し込んだ。
そして耳を扉に近づけた。するとものの数秒で開錠されたのが分かった。

「開きましたよ」

「本当ですか?ありがとうございます!助かりました。それで…あの、お幾らになりますか?」

女はそう言って鞄から財布を取り出し料金を聞いた。

「料金ですか?」

「はい」

「料金は不要だ。金は必要ない」

女はその言葉に「えっ?」と怪訝な顔をした。
金は必要ないとはいったいどういう意味なのか?
考えていたその時、自分の前に立つ背の高い男の口元にうっすらと笑みが浮かんだのを見た。

「金は必要ないと言ったがその代わりお前が欲しい。牧野つくし。俺はお前に一目惚れをした。お前は気付かなかったが俺たちは会ったことがある。お前は道明寺グループの会社で働いているな?俺は副社長の道明寺司で鍵屋は趣味だ。俺は開かない鍵を開けるのが好きなだけだ。だがお前の部屋の鍵を変えたのは俺だ」

つくしは男が何を言っているのか、すぐに理解することが出来なかった。
だが男が言うように、つくしは道明寺グループの道明寺食品という会社で食品分析の仕事をしていた。
そして徐々に頭の中に浸透して来たのは、自分の部屋の開かない扉を開けた男性が親会社の副社長道明寺司で部屋の鍵を勝手に変えたのは自分だと言った。
そして「お前が欲しい」の意味に気付くと、たった今開けられた扉のドアノブを掴み部屋の中に逃げようとした。だがそれが間違いだった。
男はつくしの手を掴み、扉を開け、部屋の中に彼女を押し込み、素早い身のこなしで自身も中へ入ると後ろ手に鍵を閉めた。

「や、止めて!」

「何を止めるって?俺はまだ何もしてないが?」

司はククッと笑い着ていた黒の上着を脱ぎ、広く逞しい胸に張り付いていた黒のTシャツを脱ぐと床に放った。上半身裸になった男の鍛えられた肉体は世の女達を虜にすると言われる身体をしていたが、目の前の女は怯えた顔で彼を見ていた。

司は訪問した関連会社で見かけた牧野つくしに一目惚れをした。
彼が検査室のガラス窓の外を通っても、視線を向けることなく気取らない態度で仕事をしている彼女を見かけたとき恋に落ちた。
そして彼女が欲しいと思った。
だから自宅を調べると彼女が住むマンションを買い取り彼女がいない間に鍵を変えた。
つまり部屋の内部がどうなっているかも知っていた。

「や、止めて…..な、何をするつもり?」

「怖いのか?俺のことが?」

部屋の奥に逃げた女の前に立った男は、言いながらベルトのバックルを外した。
そして女が怯える姿にゾクリとするものを感じた。

「ああ…牧野。俺を怖がらないでくれ。俺はお前に一目惚れをした。だからお前が欲しい。俺はお前に触って悦びを感じたい。俺はお前の男になりたいだけだ」




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2019
05.27

金持ちの御曹司~Sexy Sniper~<後編>

セックスはセックスでしかなく、それは欲望を吐き出すための手段。
前戯をする必要はなく、脚を開かせ中に入ればいいだけの話だ。
だから司は今まで女を抱く時はいつもそうしていた。
そして司に抱かれることを望む女は誰もが裸で彼を待っていた。
だが今の司は女の服を脱がせる過程を楽しみたいと思った。
一枚ずつゆっくりと服を取り去り、徐々にあらわになっていく女の身体。
欲望をそそられたとしても、すぐに中に入れるつもりはなかった。

だが何故そうしないのか。
それは女がスナイパーという今まで抱いたことがない職業の女だからか。
いや違う。一切口を開こうとしない女の態度に、好きにすればいいわという態度に、そのまま中に入るより女の気持ちを高めていくことを決めたからだ。

「どうした?何か言えよ?」

だが女は口を開こうとはせず、ただ黙ったまま司の顔を見上げていた。

「いいぜ。ダンマリを決め込むのも今だけだ」

司はかがみ込むとスカートをたくし上げ、ストッキングに包まれた脚をあらわにしたが、そこに現れたのはガーターストッキング。

「黒のガーターか。いい趣味だ」

それを右脚。そして左脚と、ゆっくりと時間をかけ脱がせ始めた。
そこに現れたのは白くしなやかでほっそりとした脚。
目立つことを嫌う狙撃手という仕事柄なのか。手の爪に色はなかったが足先に塗られた赤いペディキュアは真面目に思えた女の別の一面なのか。
ふと、その時頭を過ったこの女はどんな人生を歩んで来たのかということ。
何があってこの女はスナイパーという仕事を選んだのか。
もしかすると司と同じ世の中の人間に絶望するという病巣を抱えているのではないか。
そんな思いが感じられた。だが今はこれから裸にする女をどう味わうかを考える方が先だった。

暗くもなく明るくもない部屋の中で輝くように見える女の白い脚。
その脚を開けば薄い布に覆われている女そのものがそこにある。
欲しければその布を剥ぎ取ってすぐにでも入れることが出来る。だが今の司は時間をかけ女の気持ちを高めることを選んだ。
だから華奢な甲を掴み爪先を舐め始めた。
すると女が息をのむのが聞こえた。そしてもう片方の爪先がキュと丸まったのが分かった。
つまりその行為に感じているということ。その瞬間司は決めた。今夜は女に歓びを与え続け自分の快楽は後回しにすることを。



司は爪先から甲、足首。ふくらはぎへと舌を這わせながら時に唇でつまんだ。
指先を太腿の内側へ這わせ、薄い布に触れると濡れていた。
クロッチの横から指を1本入れ確かめたがその瞬間、喘ぎ声が聞こえ、この声をもっと聴きたい。この部屋の中をその声と叫び声で満たしたいという気持ちになった。
だから次は何をするべきか決まっていた。

女の腰を持ち上げファスナーを降ろしスカートを引き下ろし取り去った。
腰から下に付けているのは、黒のパンティとガーターベルトだけ。だが上半身は白いブラウスに黒のスーツの上着。全てがさらけ出された裸よりもそそられるその光景。
ニヤリと笑みを浮かべた司は、自身のスーツの上着を脱ぎ捨てると、次に女の上着を脱がせようとした。
だがその瞬間。女の脚が大きく開かれ司の身体を挟むと彼の手を掴み、自分の方へ引き寄せた。いや。引き寄せたのではない。脚で挟まれた司の身体はベッドに押し倒され、女が上に乗っていた。

「どう?女に上に乗られる気分は?」

それは初めて訊く女の声。
司の身体の上に跨り、少し生意気な表情を浮かべる女はどこか得意そうに言った。

女は乗るものであり、乗られるのは初めてだったが悪い気はしなかった。
だが相手はスナイパー。丸腰とはいえ油断は出来なかった。
それでも司は相手の出方を楽しむことにした。それは女がその気になったなら、やってもらおうじゃねぇかということ。

「いいんじゃねぇの?お前がその気になったんなら楽しませてくれ」

その言葉に薄っすらと笑みを浮かべた女は上着を脱ぐと、自分の腰に添えられている司の手を取り躊躇うことなく自分の胸に導いた。
それはブラウスのボタンを外せという意志表示。
だから司は言われた通りにブラウスのボタンを外し、フロントホックのブラのボタンを外した。
そこに現れたのはピンク色をした小さな蕾。
だからその蕾を指で擦った。
すると司の身体を挟んでいた太腿がキュッと締まり彼を締め付け、腹の上に乗った女の潤いを帯びた部分がさらに濡れたのが分かった。

「お前のソコは、すっかり濡れてんじゃねぇの?」

意地悪く言った男に女は笑った。

「そうよ?悪い?」

そう答えた女は、司の頬に手を添え顔を近づけると、「だからあなたが欲しい」と耳元で小さな声だが、はっきりと言った。
だから司は女の頭に手を乗せ「俺もだ」と答えた。
すると「そう?じゃあ」と答えた女は、髪に飾られていた髪飾りを司の首に突き立てた。









「おい!ちょっと待て!なんで俺があいつに殺されなきゃなんねぇんだよ!冗談じゃねぇぞ!」

司は冷や汗をかいていた。
それこそ首から下にたっぷりと汗をかき、汗腺がない。汗をかかないのではないかと言われる顏には玉のような汗が浮かんでいた。

女スナイパー。
牧野つくし。
狙撃はしなかったが、ベッドの中で男の命を奪う女。
もしかすると初めからそのつもりでいたのか?
わざと掴まえさせて男のベッドに入り込み命を狙う?
つまり確実に命を奪うためなら身体を張ることも厭わないということ。
その存在はとてつもなく恐ろしい女。
まさに可愛い顔をした悪魔と言ってもいい。

だが司は夢の中に現れた牧野つくしもいいと思った。
つまりそれは妄想に憧れるということ。だがそれを実際に行うとなるとハードルが高いことが殆どだ。それに夢や妄想は現実的ではない。

それに今回の夢についてだが、話の内容は別として司はつくしの為なら死んでも構わないと思っている。彼女のために命を張るのが恋人である司の役目だからだ。
けれど、やはり暗殺されることだけは勘弁してほしい。
それに司が牧野つくしを残して死ぬことはない。
だがもし何らかの理由で死んだら彼女に纏わりついて彼女が天に召されるまでずっと傍にいる。そして二人して天に召されたなら、そこからまた二人で新たな人生をスタートすればいい。


「失礼いたします」

ノックの後、現れた秘書は支社長である男の叫び声を無視していた。
そしてこう言った。

「支社長。そろそろお仕度を下さい。今夜は来日中のアメリカ合衆国大統領との会食がございます。ご安心下さい。警備体制は万全です。訊くところによれば各所に狙撃手を配置しているとか」

司は狙撃手という言葉にドキッとした。
それはつい先ほど見た夢に牧野つくしという名の狙撃手が出て来て司の命を狙っていたからだ。

司は恋のスナイパーになら狙われてもいいと思った。
弾丸は恋で狙撃手は牧野つくし。
そして17歳の時に牧野つくしにハートを撃ち抜かれた男は彼女の虜だ。





溢れる牧野つくしへの情熱。
歪みない牧野つくしへの愛情。
司は牧野つくしなしでは存在することが出来ない。
そんな男に秘書が引いているとしても関係なかった。
今夜の会食は、さっさと切り上げて帰りたい。
早く帰って彼女を抱きたい。
今はただ、その思いで一杯だった。




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2019
05.26

金持ちの御曹司~Sexy Sniper~<前編>

時代が変わっても誰も追いつくことが出来ない男、道明寺司を100パーセントの範囲内で考えると内訳は何になるか?
そんなアンケートが女子社員の間で出回ったと訊いた。
そしてその結果はこうだ。

男のエロスを感じる 95パーセント
男のセクシーさを感じる 95パーセント
男のワイルドさを感じる 85パーセント
男の洗練さを感じる 93パーセント

合計368パーセントであり400パーセントには少し足りないが、まあいい。
そしてこの数字を見て分かるのは、司を100パーセントの範囲内に押し込めるのは無理ということ。
つまり彼は規格外の男で彼ほどの男は世間にはいないということが証明された。

実際世間は司を美術館に展示された国宝を眺めるよう見る。
ちなみに今日の装いは黒のスーツに白いシャツにパープルのネクタイ。
そんなスーツ姿でしなさそうなことを平然とする男に向けられる視線は憧れ。
そしてそのアンケートに付随するように書かれていたのは、

『男性のどんな仕草にキュンと来ますか?』

その回答は、
「ネクタイをキュキュって締める姿がたまらない。でもネクタイを緩める姿も好き」
「ワイシャツの袖を捲り上げて仕事をする姿」
「いつも眼鏡をかけている男性が眼鏡を外し自分をじっと見つめる姿」
「車を運転する姿」
「真剣な表情でキーボードを叩く姿」
「時に見せる少年のような姿」

司は上から順番に目を通していたが、その中に水に濡れた髪という答えはなかった。
だが司の恋人は彼の濡れ髪の姿にキュンと来る。
それはクルクルと巻いた髪がストレートに変わることから見慣れない男の姿にキュンと来るということ。
だがそれは本人の口から訊いたのではない。

あれはまだ高校生だった頃。
滋と三条を伴った牧野が司の邸を訪れプールに入れと言った。
だから司は彼女の望み通り水着に着替えプールに入った。
そして50メートルプールを一往復した後、水面から顔を出した司を見た女の顔は赤らんだ。
だがあれ以来、意味もなくプールへ入れとは言われなくなり、それが寂しいような気もしていた。だからある時、恋人をプールサイドに立たせ、犬神家の真似をして水面から足を突き出してみたら怒られた。

そしてアンケートの回答が最後に来たときその文字に目を止めた。
そこに書かれていたのは、

「ライフルを構えた男の姿にキュンと来る」

それはなかなかワイルドな回答。
だが面白いと思った。
















「ここから誰を狙ってんだか知らねぇが仕留めるつもりならあと5ミリ右に構えた方がいいんじゃねぇのか?」

その言葉に振り返った女が見たのは黒ずくめの男の姿。
そしてその背後には武器を持った男達が4人いた。
だが何故男が黒を着ているのか。
その理由は黒は血の色が目立たない色だから。
そして女の服も黒のスーツだった。

女のライフルの先が向けられていたのは司の執務室。
だがそこに司はいなかった。何故なら司は女の後ろにいて彼女を見つめていたからだ。

司が狙撃手に狙われている。
その情報が耳に入ったのは1週間前。狙撃手が女であると分かったのは1時間前。
そしてその女がここにいると連絡が入ったのは20分前。
だから司は自らその女を捕まえるべくここに来た。
それに女の狙撃手と訊いてその顔が見たいと思った。
眼光鋭くクールな顔をした美女といったタイプを想像していた。
だがそこにいた女は小柄で眼が大きな黒髪の女。
とても狙撃手には見えず、長い銃身を持つその姿はどこにでもいるOLといった感じだった。

「お前。誰に雇われた?花沢類か?それとも美作あきらか?いや、西門総二郎か?」

それは司の会社のライバル企業の跡取りたち。
類は花沢物産の副社長だが、司は類から契約寸前だった英国での洋上風力発電所建設の契約を奪った。
あきらは美作商事の専務だが、そのあきらからはチリの鉱山でのプラント建設の契約を奪った。
そしてプレイボーイで名を馳せる西門開発の常務である西門総二郎からはマジで付き合っていた女を奪った。
そんな理由から三人の男たちは司を恨んでいた。

「言うつもりはないか?そうか。それならそれでも構わねぇが狙撃はミリ単位でズレただけで仕損じる。だから今度狙うならもう少し注意した方がいい。ま、そうは言ってもお前が俺の頭に銃弾を撃ち込むことは出来ないはずだ」

司は女を捕まえるとタワーマンションの最上階にある自分の部屋へ連れ帰った。
そして激しくキスをするとベッドに押さえつけた。

「お前の名前は?」

「………」

「そうか。言いたくないか?いや言うつもりはないってことか?だがな。お前の身元は割れている。お前の名前は牧野つくし。今売り出し中の新進気鋭のスナイパー。それにしても見るからに真面目そうな女がどうして狙撃手になったか知らねぇが__」

司はそこで言葉を区切った。
そして上から女を見下ろし言った。

「今夜は俺の相手をしてもらうぜ。女スナイパーさんよ」



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2019
05.20

金持ちの御曹司~不機嫌な赤い薔薇~<後編>

牧野つくしのこととなると目の色を変える男が急いで向かった海外事業本部に牧野つくしの姿はなかった。
それならどこにいる?
司のその疑問に答えた男は牧野の上司で頭が禿げた男。
牧野が向かった先は海外事業部の資料室だと言ったが、司はこのビルのどこに資料室があるのか知らなかった。だから禿げ頭の男に言った。

「それでその資料室はどこにある?」

すると海外事業部の資料室は地下2階にある一室だと言った。
そこは地下駐車場のひとつ上のフロアで各部署の資料室があると言ったが、それは長い歴史を誇る会社ならではのデータ化されていない古い資料が山のようにある場所で、倉庫同然の場所だと言った。

「倉庫同然?」

「は、はい。ですから支社長自らが足を運ばれる場所ではございません。もし牧野さんにご用でしたら私が呼びに行ってまいります」

と言ったが司は断った。そして倉庫同然という言葉にニヤッとした。
そこは女ひとりで行くには無用心な場所とも言えるが、ここは天下の道明寺。
そこで何かが起こるはずはなく、だがだからと言って起こらないとも限らない。
だが司の恋人は腕っぷしが強い。右腕のパンチはライト級のボクサー並。右足のハイキックはムエタイの女子チャンピオンに勝るとも劣らないと言われていた。そんなキックを司が浴びたのは高校生の頃だったが、あのキックで恋に落ちたと言っても過言ではなかった。

司はエレベーターで窓のない密閉された地下2階の廊下に降り立つと海外事業部の資料室を探した。
そしてある扉の前で止るとドアノブを回した。だが鍵がかかっていて開かなかった。
だからドアをガンガン叩いてみたが、中から誰かが出てくることはなかった。
するとそこへ巡回中の警備員が現れた。

「おい。背が160位で眼がデカくて髪が肩まである女を見なかったか?」

すると警備員は、「その女性ならついさっき資料をかかえてエレベーターで上に上がりました」と言った。

司は資料室につくしが居なかったことを少し残念に思ったが、エレベーターに乗り海外事業本部へ戻ることにした。
そしてそこでつくしを掴まえ彼女の今の気持ちを確かめるではなかったが、もしかして今でも司がつくしのことを忘れ、彼女が作った弁当を他の女が作ったと信じた男に腹を立てているのではないかと思った。
そしてお前なんか知らねぇといって追い返したことも実は今でも根に持っていて、それが潜在意識として残っていたことから思念となって司の夢に現れたのではないかと思った。

「いや。だがあいつは過去を根に持つような女じゃない。それに類にしたってそうだ。あいつは俺たちにとってはダチ以外の何ものでもない」

と、ひとりごちたが、それでも類にしても、まだ心のどこかに牧野に対する思いを秘めていたとしてもおかしくない。つまり牧野と同じで意識の奥深くに眠らせている思いがあるということ。だからそんな二人の思いが司の夢に現れたとしたら、いつかそれが現実になるのではないかと思った。

「いや。まさかそんなことはないはずだ」

と口に出すも、それでも一度頭の中に巣食った思いは簡単には消えそうになかった。
だから早々に牧野を掴まえて本人の口から愛してるのは司だけ。という言葉を訊かなければ落ち着いて仕事など出来るはずがなかった。

だから司は、再びつくしの部署に行った。
だがそこにつくしの姿は無かった。

「牧野はどこだ?」

すると禿げの部長は、「も、申し訳ございません。一度戻って来たのですがその時、支社長がお探ししていると伝えたんですが今度は総務課へ提出する書類があるからと、つい先ほど向かったところです」

司はその言葉に、つくしが自分を避けているのではないかと感じた。
つまりそれは、司には会いたくないということ。
だが何故司に会いたくないというのか?
それを考えるとモヤモヤとしたものが心に湧き上がると同時に、二日前の夜から翌日の朝にかけての記憶をたどって、自分がつくしの気に入らない何かをしたのではないかと考えた。

あの夜は激しい愛の行為で眠らせる時間を与えることはなかった。声が枯れるほど司の名前を叫ばせ、司もつくしの名前を何度も何度も呼んだ。柔らかく濡れた場所を撫でまわし、歓喜の声を上げさせ高みに押し上げると、腰を両手で掴み、脚を開かせ強く腰を押し付けた。
その瞬間司の背中に突き立てられた爪の後は今でもくっきりと残っていて、あの時の二人は互いに全てを与えあった。

そんな夜を過ごしたのが二日前。
それから会ってはいなかったが、考えてみても思い当たるふしはなかった。
だから、「牧野?何が気に入らない?俺が何かしたか?」
と、ひとりごちると、総務課へ足を向けることにしたが、今度は悠長に廊下を歩くことはせず走った。そして扉が閉まりそうになっていたエレベーターに飛び乗ると中にいた男は驚いた顔をしたが、「総務課はどこだ?」と問われるとすぐにボタンを押した。そして「こちらが総務課のフロアです」と言われエレベーターから降りると再び廊下を走った。
そして「牧野はいるか?」と言って息せき切って現れた男に総務課全員が首を横に振った。






執務室を飛び出してから1時間。
司は牧野つくしに会えずにいた。
海外事業本部からまず地下の資料室へ行き、そこから再び海外事業本部を経由して40階にある総務課へ行き、今度は見かけた者がいるという34階の都市開発本部へ行くと次は19階の物流事業本部へ行った。そして25階にある宇宙航空機本部へも行ったが会えなかった。
そして会えないまま時間が過ぎ仕方なく執務室に戻ったが、ここは自分の会社で、このビルは自分の会社のビルで、自分は支社長で、牧野つくしは彼の会社の社員で給料を払っているのは司で、そして彼は彼女の恋人だ。
それなのに何故会えない?このビルの中にいることは確かだがどうして会うことが出来ない?それはつまり意図的に避けられているということか?
そしてそれが意味するのは、司は牧野つくしに嫌われたということになる。

「まさか….類か?」

そんな思いが再び頭を過ったが、そんなことは無いはずだとその思いを追い払うように頭を振った。
その時ノックの音がした。
そして入れという司の言葉を待たずに扉が開けられた。

「支社長。よろしいでしょうか?」

何がよろしいのか。よろしくないのか。
今の司は、つくしを失うかもしれないという思いから何も考えられなかった。
そして不機嫌だった。
だから司は立ち上ると西田に背を向け窓の外に視線を向けたが、背後に聞こえた音は男の靴音ではなく軽やかな足音。
そして、「道明寺?何かあったの?西田さんから私を探してるって連絡を受けたんだけど」と明るい声と扉が閉められる音がした。

司は振り返った。
そしてそこにいる人物が誰であるか知ると司の足はその人の元へ向かっていた。

「やだ。どうしたの道明寺?」

それは司がつくしを抱きしめたから。
そしてその声は苦しそうにしていたが、それでも笑っていた。
そうだ。笑いながら「ちょっと苦しいってば!」と言った。

「どこ行ってたんだよ!」

「え?どこって仕事してたわよ?今日は忙しくて上から下まで走り回ってるんだからね?」

真面目で努力家で、当然だが司よりも小さな女は、そう言って司の腕の中から彼の顔を見上げた。

「俺はどこに行ってもお前に会えなくて、お前が類と結婚するって知ってショックでどうにかなりそうだったんだぞ?」

「はぁ?何おかしなこと言ってるのよ?どうして私が類と結婚しなきゃならないのよ?」

「どうしてって、それはだな…..と、とにかく仕事をしてたんならそれでいい」

「もう本当に道明寺は時々訳の分からないことを言うから西田さんも大変よね?」

そう言った女は、司のデスクの足もとに置かれた段ボール箱に目を止めた。
そして司の腕から抜け出し蓋の間から覗く表紙に目を輝かせると一冊だけ取り出し手に取るとページをめくりながら言った。

「これ『花より団子』じゃない?なに道明寺この本どうしたの?ねえ、もしかして全巻揃ってるの?私この漫画のファンだったの。うわ~懐かしい!でもうち貧乏だから漫画なんて買えなくてね。優紀から借りて読んでたの」と言って笑った。

そう言えば。と司は、この漫画を西田に用意させた理由を思い出し、そして恋人の口からファンだったと訊かされたからには訊かなければならないことがあったことを思い出した。
それは、牧野つくしは、道暗寺司と花川数という男のどちらを理想の恋人と考えていたかということだ。

「なあ。牧野?」

「ん?なに?」

司の呼びかけに本をめくる手を止めた女は彼を見た。

「お前。この漫画に出てくる男。つまりクセが強い男とそうじゃない男のどっちが好きだったんだ?」

「あ。道暗寺司と花川数ね?この二人の名前って道明寺と花沢類に似てるって思ったけど、世の中にはびっくりするくらい似てる人がいるって言うでしょ?だからこの漫画の二人は道明寺と花沢類に思えて仕方がないの。だってなんだかこの主人公の女の子の家族もうちの家族とよく似てるし、それにこの女の子って__」

「牧野。いいからどっちの男が好きだったんだ?」

司は早くつくしの返事が訊きたくて言葉を遮り訊いた。

「どっちだと思う?」

笑顔で司を見上げる女は静かに言ったが、その口ぶりは彼が聞きたい言葉を知っているはずだと思った。
何故ならそれは、牧野つくしは司の顔に浮かぶ不安な表情を知っているからだ。







「私が好きだったのはクセの強い男よ」











どんな高級なデートよりも二人でいれればそれでいいという女は、司に抱きしめられると苦しい、離してよ!と言ったが司は離さなかった。
そして出来れば今日はこのままずっと抱きしめていたかった。


司は牧野つくしと一緒にいると魂が救済され精神が浄化される。
彼女のことは生きるパワースポットであり、彼女さえいれば嫌なことも辛いことも悩みも全てが解決する。
そして今はただ、あちこちに唇を付けて、その身体を味わいたい思いでいた。
そして今のこの感情はなんだ?と問われれば、ただ幸せだと答えるはずだ。



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