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2015
11.09

まだ見ぬ恋人21

司に見つめられてつくしは動くことが出来なかった。
『あんなに感じたキスはなかった・・』
それはつくしも同じだった。
つくしは思わず唇をなめていた。

近すぎる・・・

つくしは自分に問いかけるように言った。
「ど、どうして私なんか・・」
「理由が必要か?」
B型の人間は衝動的だとよく言われる。
司も確かにそんな傾向がある。
だが、ことつくしに関して司はその性格を抑えるようにしていた。
しかし、もう限界だった。
司はいきなりつくしの腕を掴んでダイニングルームのドアにつくしを押しつけると彼女の頭の両脇に手をついた。
そして司はつくしの耳元に口を寄せるとささやいた。
「好きになるのに理由が必要か?」
そして司は慎重に言葉を選んだ。
「俺の願いを聞いてくれるか?」つくしの耳元で低く甘い声で言った。
司の顔がすぐ目の前にあった。そしてつくしの顔だちをたどるようにゆっくりと瞳が動く。
彼と目を合わせたつくしはその瞳のなかに男らしい押しの強さを認めるとともに、他のことにも気づいた。高い頬骨と形のいい口。
つくしは司の口を見つめていた。
司はつくしの耳の後ろの髪に両手を差し入れるとつくしの顔をわずかに上向かせ唇をつくしの唇に斜めにゆっくりと押しあててきた。

ゆっくりと熱のこもったキスにいつしかふたりとものめり込み夢中になっていく。
このキスはヘリの中でされたキスとは違った。
そして唇に軽く落とされた控えめなキスとも違った。
本物のキスだった。
圧倒されるようなキスだ。


司はゆっくりと慎重にキスを深めていった。
「牧野・・」司が言ったのはそのひとことだけだった。
彼の舌に責められつくしの唇は開き、コーヒーの味と煙草独特の香りのする熱い舌を受け入れていた。
司は飢えたように激しくつくしの舌を求めた。
味わいむさぼりつくすようなキスだ。
すべてを味わい尽くさないと決して自分が満足できないことに司は気づいていた。
つくしの手はいつのまにか彼の上着の前を掴んでいた。
司の身体の重みを受け、つくしはドアへとはりつけられ司のくっきりと高ぶったものがつくしに押し付けられていた。
そして司の手がつくしの頭を離れつくしの身体をさまよいはじめるとつくしの首筋からはじめて、指で喉のつけ根の窪みまでたどった。


その時、つくしの背後のドアをノックする音に彼女は閉じていた目をぱちりと開けた。
コンコンとやはり背中をノックする音がする。
つくしは掴んでいた司の上着を引っ張って知らせようとした。
「ん、、んん、ん」呻き声に似た抗議の声がかすかに上がった。
コンコンとまたもや背後のドアをノックする音がする。
誘うようにさまよう司の手を止めるべくつくしは上着を引っ張っていた手を離すと司のその手を掴んだ。
司は動きを止めるとつくしから唇を離した。
「どうした?」
「せ、背中・・・」
「背中?」司がおうむ返しに聞いてきた。
「だ、誰がドアの向こうにいる・・」
そう言うとつくしは司の腕の中から抜け出そうとしていた。
またもつくしの背後からノックの音が聞こえてきた。


「支社長、牧野さんいらっしゃいますか?」
「に、西田さん?」
ドアの向こう側から聞こえて来たのは西田の声だった。
つくしはなんとか自由になりたくて両手で司を押しのけようとした。
しかし司の身体はびくともしない。
「お、お願い。は、放して・・」
「ああ牧野、もっと触ってくれないか?」
司はつくしの手で身体を触られてますます低く甘い声でささやいて来た。
「ど、道明寺支社長!・・道明寺しっ・・」

クソッ!
せっかくいい雰囲気だったのによ!
牧野が我にかえっちまった。
西田のヤツ、タイミングが悪すぎんだよっ!
司は仕方なくつくしの身体を離すと一歩退いた。
解放されたつくしは司の身体を押しのけると逃げるように部屋の端まで走って行くと
急いで乱された服を整えていた。
ドアの前に残された司は少し曲がった自分のネクタイに手をやるとクイッと元に戻してから何事もなかったようにドアノブに手をかけていた。


*******


「自分の思いどおりにことを運ぶためには少しばかり急すぎませんか?」
西田は言った。
「なんだよもう帰ってきたのかよ?もとはと言えばこんな状態に追い込んだのはお前のせいだろ?」
西田は意味ありげな視線を向けてきた。
「これはあくまでも特別なケースです」
そしてしょうがないとばかりため息をついた。
「わたくしとしては司様と牧野様が同じ部屋でお過ごしになっても不適切なことが起こるとは考えてもおりませんでしたが?」
「西田、どう意味だよそれは?」
「司様は間違っても強引にことを進めるような方ではないことはわたくしがよく存じております」と言って西田は司を牽制した。
「へぇ。そーかよ」司は無表情に驚いてみせた。
「お前、俺より俺のことよく分かってるんだな?」
司はそう言うと幸せな瞬間を追想するかのようにニヤリと笑った。
「西田、おまえに説明しにくいんだけどよ、俺達さっきキスしてたんだ。わかるか西田?
牧野ってすげぇ甘いんだ。なんて言うんだ?本当に甘いんだ。おまえもわかってくれたら・・」
司はうれしそうに言った。


愛だ。
牧野は俺のもの。類なんかに取られてたまるか。
牧野のことしか考えられねぇ。
牧野は俺のすべてだ。
牧野のためならなんでもする。
ああ。どんなことでもする。
司は低く笑った。
俺は一度こうと決めたことは必ずやり遂げる。牧野には想像もつかないだろうが、あとはもうあいつが俺を好きになるようにさせるだけだ。
ただ、俺を好きにさせる方法が思いつかねぇだけだ。
けど自信を持って言えるのはあいつも俺に何かを感じているってことだ。
素直じゃねぇな。
やっぱりかなり鈍感なのか?

目標を達成する為には手段を選ばず・・って言いたいが、牧野にそんなことをとして嫌われたくないのも事実だ。

司は上着の内ポケットから携帯電話を取り出し、2ヵ所に電話をかけた。
最初の相手は西門総二郎だった。司がうれしそうに総二郎に報告した。
総二郎は司に言った。
「いいか司、キスだけで喜んでどうするんだよ!いちいちそんなことで俺に連絡してくるな!」
次に司が電話をしたのは美作あきらだった。
司はあきらに説明した。
「キスしたくらいでドキドキしてどうすんだよ!」
あきらは司に言った。
「いいか司、キスなんてありゃ子供が喜ぶもんだ。おまえはもういい大人なんだからもう少し頭を使え」
司はいらだたしげに「わかってるよ!」と答えた。
「いいか司。おまえが今まで無駄にしていたその性的魅力を使えよ?」
司はおかしそうに答えた「わかってるよ!今までが宝の持ち腐れって言うんだろうが!」
そしてあきらは「司、俺達の世界へようこそ」と笑って言った。
電話を切ると、司は今は閉められているドアをじっと見つめて、作戦を練った。









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コメント
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dot 2015.11.09 05:28 | 編集
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dot 2015.11.09 10:44 | 編集
た*き様
全国的にお天気が悪いですね。
司くん、相談する相手があの二人しかいないので取りあえず相談したんでしょうね。
原作でも二人に相談していましたから(笑)
恋愛熟練者に見えてそうでない。まさかこんなハイスペックな男が?
と言うところがツボでしょうか?
やはりジャンル替えでしょうか?もうオリジナル感が無くなっていますでしょか?
恋愛熟練者の司くん書いてもいいですか?
そうなると初心じゃなくてプレイボーイ司になってしまいますが・・(笑)
ポチ有難うございます!
た*き様のそのお話、仰る通りで一応登録してみましたので宜しくお願いします。
コメント有難うございました。
アカシアdot 2015.11.09 23:09 | 編集
あ**う様
朝から幸せな気分に?
良かったです。
耳元でささやいて欲しいですよね?
ぞくぞくしますね。←悪寒ではないですよ?
類くんよりリードしてますがまだ解りませんよ?
攻略法は只今思案中です(笑)
コメント有難うございました。
アカシアdot 2015.11.09 23:18 | 編集
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dot 2015.11.10 16:47 | 編集
さと**ん様
キスシーン、ぞくぞくして頂けましたか?
有難うございます。
壁ドンじゃなくて、ドアドンしてみました(笑)
壁でしていたら西田さんが入って来たら見つかる!
と思ってドアにはり付けて押し付けてみました。
壁ドンは過ぎ去り、今年はアゴクイらしいですね。
うちの司くんにも是非挑戦して頂きたいものです。
そうそう、二人にキスの報告をするなんて仕事現場での
彼とギャップがありすぎですよね。
恋には不器用みたいです。
いつも楽しいコメントを有難うございます。
アカシアdot 2015.11.10 23:40 | 編集
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