つくしの前に現れた白石隆信の妻と名乗る女性。
その女性は、ある日突然私の夫と別れて下さいと、つくしが勤務している滝川産業に1億円の小切手を持ち現れたが、あの日以来現れることもなければ、つくしに接触してくることも無かった。だからあの一件は勘違いで間違いだ。人違いだと思っていた。
そしてつくしの中では過去のことであり、忘れ去られようとしていた。
だが今こうして目の前に現れた女性の目は、つくしを睨むように見ていて、その態度から今でもつくしのことを夫の浮気相手だと思っていることは間違いなかった。
美奈は、
「牧野さん?こちらの男性はお知り合い?それともただの通行人?」
と、横目でつくしに尋ねつつ、健一に向かってほほ笑んだ。
健一はつくしの態度から二人が親しい付き合いをしていないと察し、黙って二人の女を見ていた。そして「妻」と名乗った女の「私は白石隆信の妻よ」の口ぶりから、つくしが不倫をしていると判断したようだ。
すると健一は、「牧野悪いな。俺用事があったのを忘れてた。お前が元気そうで良かった。いや、俺はいつかお前に会ったらあの時のことを謝ろうと思ってた。ま、そういうことだから、元気でやれよ。じゃあな」とそれだけ言ってメンドクサイ関係に巻き込まれるのは嫌だとばかりに、そそくさと二人の前から立ち去ったが、物事に対し調子が良かった男は、どうやらそれは今でも変わっていないようだ。それを変わり身の早さとでも言うのか。不誠実でいい加減なところはあの頃のままのようだ。
そして、一難去ってまた一難ではないが、二度と会いたくないと思っていた男が去ったと思えば、今度は別の問題がつくしの前にあった。
美奈は健一の後姿を見送ると行動に移っていた。
自分より背の低い牧野つくしの傍に立ち、上から見下ろすとはっきりと言った。
「本当に会えて良かったわ。私。あなたと話しがしたいの。時間は取らせないわ」
そして、以前逃げられたことから、ついさきほど健一が掴もうとしたつくしの腕に自分の腕を絡めた。それはいかにも旧知の間柄といった感じで、ゆっくりと歩き出したが、スーパーに入るのではなく回れ右をしていた。
だからつくしは抵抗して腕を振り解いた。
そしてスーパーの前というひと目がある場所だが構わず言いたいことを言った。
「止めて下さい。話しならここで訊きます。それに以前言いましたよね?私はあなたのご主人を存じません。人違いをされてるんじゃないですか?」
それにいったいどこに連れて行こうとしたのか。
そして本人が全く知らないと言うのに、何故そう決めつけるのか。
つくしは白石隆信の妻と名乗った女性が再びこうして現れたことに驚いたこともそうだが、あの時、女性が言った言葉を思い出していた。
確か主人が白状したと言われたが、そうすると自分の名前を使われたということになる。
今のつくしは恋人がいる。
妙な言いがかりをつけられるのは迷惑だ。
それに今つくしの前にいて、大きな誤解を抱いている女性はまだ若い。見た目は大人っぽいが精神的に幼いということも考えられる。
だから思い込んでいるということもある。夫の言葉を鵜呑みにし、信じ切っているのではないだろうか。もしかすると、騙されているのでは?浮気をするような男性なら嘘をつくことも平気なはずだ。となればここでこうして会えたのは誤解を解くいい機会だ。
そういった思いから白石隆信の妻だと名乗った女性に言った。
「あなたは何か誤解をされてます。私は本当に白石隆信という男性を知らないんです。だから冷静にお話しませんか?」
すると相手の女性は、「いいわよ。話しましょう。私もどうしてもあなたに話したいことがあるの」と言った。
近くの喫茶店で二人は向かい合って座った。
つくしはコーヒーを、女性はアイスコーヒーを頼んだが、ウエイトレスが頼んだものを運んで来るまで二人は口を開かなかった。
そして先に口を開いたのは、女性の方だ。
「私の名前は白石美奈。あなたは夫の隆信を知らないと言ったわね?それが百歩譲ってそうだとしても道明寺司の名前なら分かるわよね?」
いきなり何を言い出すのかと思ったが、若い女性はつくしの恋人の名前を口にした。
その途端、何故か胸騒ぎがした。だがそれは、三田健一と会ったばかりで過去のことが思い出されたからだ。
だが今の感覚は、健一がつくしとのデートをキャンセルして病気になった男友達の代わりにバイトに入るからと言われた時の感覚と似ている。そして次の日の朝、健一に電話をかけ、電話口に出た女性に健一ならシャワーを浴びてるから電話に出られないと言われたが、あの時の感覚と同じだ。そう思い始めると、より一層胸騒ぎがつのる。
「あら。驚いたようね。どうして私が道明寺司。あなたの恋人の名前を知っているか不思議って顔ね?それに私に何か訊きたいって顔をしてるわ」
つくしは自分の表情が固くなるのを感じていた。
白石美奈と名乗る女性の口から出る道明寺司という名前には、言い慣れた感があった。
そしてどこか思惑を感じさせるように感じられたが、それがいったい誰のどんな思惑なのか。
「道明寺司ってハンサムでしょ?カッコいいわよね?それにお金持ちだし世の中のどんな女性も望めば簡単に手に入る男性よ?あんなに素敵な男性って世の中にそうはいないはずよ。あなたもそう思うでしょ?」
白石美奈の話すことは確かにその通りであり否定はしない。
だが彼女の言葉の端々に感じられるは、奇妙なまでの優越感。
いったいその優越感はどこから来るのか?
「それにしても世間は道明寺司の新しい恋人が平凡でどこにでもいる女性とは思わないでしょうね?何しろ今までの恋人はモデルやステータスの高い人ばかりだったもの。だからみんな驚くわよね?」
繰り返される優越感を感じさせる言葉。いったい何が言いたいのか。
それに何故彼女が道明寺司についてつくしに語るのか。
「あなた不思議に思ってるのね?どうして私があなたの恋人になった道明寺司について語るのか。それにそれ以前にどうしてあなたの恋人が道明寺司だってことを知っているのか不思議なんでしょ?」
そうだ。何故彼女がつくしの恋人が道明寺司だと知っているのか。
だがその答えはすぐにもたらされた。
「ふふ…知りたいって顔をしてるわね?それなら教えてあげましょうか?だって道明寺司は私の叔父様ですもの」

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その女性は、ある日突然私の夫と別れて下さいと、つくしが勤務している滝川産業に1億円の小切手を持ち現れたが、あの日以来現れることもなければ、つくしに接触してくることも無かった。だからあの一件は勘違いで間違いだ。人違いだと思っていた。
そしてつくしの中では過去のことであり、忘れ去られようとしていた。
だが今こうして目の前に現れた女性の目は、つくしを睨むように見ていて、その態度から今でもつくしのことを夫の浮気相手だと思っていることは間違いなかった。
美奈は、
「牧野さん?こちらの男性はお知り合い?それともただの通行人?」
と、横目でつくしに尋ねつつ、健一に向かってほほ笑んだ。
健一はつくしの態度から二人が親しい付き合いをしていないと察し、黙って二人の女を見ていた。そして「妻」と名乗った女の「私は白石隆信の妻よ」の口ぶりから、つくしが不倫をしていると判断したようだ。
すると健一は、「牧野悪いな。俺用事があったのを忘れてた。お前が元気そうで良かった。いや、俺はいつかお前に会ったらあの時のことを謝ろうと思ってた。ま、そういうことだから、元気でやれよ。じゃあな」とそれだけ言ってメンドクサイ関係に巻き込まれるのは嫌だとばかりに、そそくさと二人の前から立ち去ったが、物事に対し調子が良かった男は、どうやらそれは今でも変わっていないようだ。それを変わり身の早さとでも言うのか。不誠実でいい加減なところはあの頃のままのようだ。
そして、一難去ってまた一難ではないが、二度と会いたくないと思っていた男が去ったと思えば、今度は別の問題がつくしの前にあった。
美奈は健一の後姿を見送ると行動に移っていた。
自分より背の低い牧野つくしの傍に立ち、上から見下ろすとはっきりと言った。
「本当に会えて良かったわ。私。あなたと話しがしたいの。時間は取らせないわ」
そして、以前逃げられたことから、ついさきほど健一が掴もうとしたつくしの腕に自分の腕を絡めた。それはいかにも旧知の間柄といった感じで、ゆっくりと歩き出したが、スーパーに入るのではなく回れ右をしていた。
だからつくしは抵抗して腕を振り解いた。
そしてスーパーの前というひと目がある場所だが構わず言いたいことを言った。
「止めて下さい。話しならここで訊きます。それに以前言いましたよね?私はあなたのご主人を存じません。人違いをされてるんじゃないですか?」
それにいったいどこに連れて行こうとしたのか。
そして本人が全く知らないと言うのに、何故そう決めつけるのか。
つくしは白石隆信の妻と名乗った女性が再びこうして現れたことに驚いたこともそうだが、あの時、女性が言った言葉を思い出していた。
確か主人が白状したと言われたが、そうすると自分の名前を使われたということになる。
今のつくしは恋人がいる。
妙な言いがかりをつけられるのは迷惑だ。
それに今つくしの前にいて、大きな誤解を抱いている女性はまだ若い。見た目は大人っぽいが精神的に幼いということも考えられる。
だから思い込んでいるということもある。夫の言葉を鵜呑みにし、信じ切っているのではないだろうか。もしかすると、騙されているのでは?浮気をするような男性なら嘘をつくことも平気なはずだ。となればここでこうして会えたのは誤解を解くいい機会だ。
そういった思いから白石隆信の妻だと名乗った女性に言った。
「あなたは何か誤解をされてます。私は本当に白石隆信という男性を知らないんです。だから冷静にお話しませんか?」
すると相手の女性は、「いいわよ。話しましょう。私もどうしてもあなたに話したいことがあるの」と言った。
近くの喫茶店で二人は向かい合って座った。
つくしはコーヒーを、女性はアイスコーヒーを頼んだが、ウエイトレスが頼んだものを運んで来るまで二人は口を開かなかった。
そして先に口を開いたのは、女性の方だ。
「私の名前は白石美奈。あなたは夫の隆信を知らないと言ったわね?それが百歩譲ってそうだとしても道明寺司の名前なら分かるわよね?」
いきなり何を言い出すのかと思ったが、若い女性はつくしの恋人の名前を口にした。
その途端、何故か胸騒ぎがした。だがそれは、三田健一と会ったばかりで過去のことが思い出されたからだ。
だが今の感覚は、健一がつくしとのデートをキャンセルして病気になった男友達の代わりにバイトに入るからと言われた時の感覚と似ている。そして次の日の朝、健一に電話をかけ、電話口に出た女性に健一ならシャワーを浴びてるから電話に出られないと言われたが、あの時の感覚と同じだ。そう思い始めると、より一層胸騒ぎがつのる。
「あら。驚いたようね。どうして私が道明寺司。あなたの恋人の名前を知っているか不思議って顔ね?それに私に何か訊きたいって顔をしてるわ」
つくしは自分の表情が固くなるのを感じていた。
白石美奈と名乗る女性の口から出る道明寺司という名前には、言い慣れた感があった。
そしてどこか思惑を感じさせるように感じられたが、それがいったい誰のどんな思惑なのか。
「道明寺司ってハンサムでしょ?カッコいいわよね?それにお金持ちだし世の中のどんな女性も望めば簡単に手に入る男性よ?あんなに素敵な男性って世の中にそうはいないはずよ。あなたもそう思うでしょ?」
白石美奈の話すことは確かにその通りであり否定はしない。
だが彼女の言葉の端々に感じられるは、奇妙なまでの優越感。
いったいその優越感はどこから来るのか?
「それにしても世間は道明寺司の新しい恋人が平凡でどこにでもいる女性とは思わないでしょうね?何しろ今までの恋人はモデルやステータスの高い人ばかりだったもの。だからみんな驚くわよね?」
繰り返される優越感を感じさせる言葉。いったい何が言いたいのか。
それに何故彼女が道明寺司についてつくしに語るのか。
「あなた不思議に思ってるのね?どうして私があなたの恋人になった道明寺司について語るのか。それにそれ以前にどうしてあなたの恋人が道明寺司だってことを知っているのか不思議なんでしょ?」
そうだ。何故彼女がつくしの恋人が道明寺司だと知っているのか。
だがその答えはすぐにもたらされた。
「ふふ…知りたいって顔をしてるわね?それなら教えてあげましょうか?だって道明寺司は私の叔父様ですもの」

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ふ*******マ様
おはようございます^^
どんな展開になるのか。
軽い男、三田健一は早々に退散しましたが、ドロドロの昼ドラなのか?(笑)
この問題は白石を引っ張り出して彼に訊けばすぐに解決しそうなんですがねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
どんな展開になるのか。
軽い男、三田健一は早々に退散しましたが、ドロドロの昼ドラなのか?(笑)
この問題は白石を引っ張り出して彼に訊けばすぐに解決しそうなんですがねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.07.13 04:28 | 編集

司*****E様
おはようございます^^
さあ、いよいよ?ついに美奈とご対面。
この際です。話しをしてあらぬ濡れ衣を晴らそうとしたところで、何故司の名前が!
昔のことが思い出されてしまったつくし。
傷付くことになるのでしょうか....
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
さあ、いよいよ?ついに美奈とご対面。
この際です。話しをしてあらぬ濡れ衣を晴らそうとしたところで、何故司の名前が!
昔のことが思い出されてしまったつくし。
傷付くことになるのでしょうか....
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.07.13 04:33 | 編集

と*****ン様
え?修羅場が来た?
アタフタする男が見れるのか?
思う存分やっていいんですか?(笑)
悲しむ女がいますからねぇ。罰があって当然ですよね?
コメント有難うございました^^
え?修羅場が来た?
アタフタする男が見れるのか?
思う存分やっていいんですか?(笑)
悲しむ女がいますからねぇ。罰があって当然ですよね?
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.07.13 04:36 | 編集

さ***ん様
何故こんな時に昔の男が!
偶然って恐ろしですね~。
優越感を感じながら話す美奈の態度に過去を思い出しているつくし。
司。早く来い!
いや、間に合うのか?いいとこ終わる?(笑)
いや、これからです。
コメント有難うございました^^
何故こんな時に昔の男が!
偶然って恐ろしですね~。
優越感を感じながら話す美奈の態度に過去を思い出しているつくし。
司。早く来い!
いや、間に合うのか?いいとこ終わる?(笑)
いや、これからです。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.07.13 04:39 | 編集

エ**様
はじめまして^^
いつもお読みいただきありがとうございます。
司が間に合うのか?う~ん...
そして、つくしは美奈の話を全て聞いてしまうのか。
この展開ですのでご想像にお任せしたいと思います^^
コメント有難うございました^^
はじめまして^^
いつもお読みいただきありがとうございます。
司が間に合うのか?う~ん...
そして、つくしは美奈の話を全て聞いてしまうのか。
この展開ですのでご想像にお任せしたいと思います^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.07.13 05:10 | 編集

m****o様
はじめまして^^
いつもお読みいただきありがとうございます。
朝から心臓に悪い...
そうですよね。本日はいかがでしたでしょうか。
司とつくしと美奈の3人が顔を合わせるのも時間の問題のようですがが、どんな会話が交わされるのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
はじめまして^^
いつもお読みいただきありがとうございます。
朝から心臓に悪い...
そうですよね。本日はいかがでしたでしょうか。
司とつくしと美奈の3人が顔を合わせるのも時間の問題のようですがが、どんな会話が交わされるのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.07.13 05:32 | 編集

H*様
美奈は勿論ですがつくしにも怒ってますか?
いやぁ。美奈は本当はこんな娘じゃないと思うんですが、何しろ目の前の女は夫の不倫相手ですからねぇ。
そろそろ3人が出会いそうですので、また怒ってやって下さいませ。
拍手コメント有難うございました^^
美奈は勿論ですがつくしにも怒ってますか?
いやぁ。美奈は本当はこんな娘じゃないと思うんですが、何しろ目の前の女は夫の不倫相手ですからねぇ。
そろそろ3人が出会いそうですので、また怒ってやって下さいませ。
拍手コメント有難うございました^^
アカシア
2018.07.13 05:37 | 編集
