つくしは頭の中が真っ白になった。
道明寺に引き寄せられ彼の腕の中へと収まっていた。
「放して!」
つくしは言った。
だが道明寺は放すどころかつくしの身体をきつく抱きしめてきた。
見上げる彼の口が開いているのが見え、キスされると思った。
そんなことさせない。
そんなことされたら・・・
彼の顔が覆いかぶさってくる瞬間も必死でもがいて身体を引こうとしていた。
あの時と同じだな。
道明寺は数日前のことを思い出していた。
「やめて!お願い、やめて道明寺!」
腕の中でもがいているつくしの声が少しうわずっているのに気が付いた。
「・・・わかった」
そう言うと道明寺は腕の中のつくしを離した。
つくしはこれだけ距離を保てば理性は保てるとばかりに数歩後ろに下がると
唇をきゅっと結んだ。
道明寺はその引き結んだ唇に見惚れてしまっていたが、つくしが何か言うのを待っていた。
「二度とこんなことしないで!さもないと・・・」
「さもないと、何だ?」
つくしはその先が言葉に出なかった。
「牧野、俺は本気だ。俺はお前をこの手に取り戻すまで諦めないからな」
「取り戻すもなにも、あたし達は何も無かった。何も始まってなんていなかったわ」
牧野、そんなに睨むなよ。
そんなに睨んでも無駄だ。
俺は本気でお前のことを取り戻しに行くからな。
つくしは急いでドアに向かった。
身体がぶつからないように彼が脇へどいてくれるのを期待したが道明寺はその場を動かずに
つくしがドアへとたどり着く寸前に腕を掴んて引き留めてきた。
「ひとつ助言をしておくよ」
「な、なによ!」
「俺が本気を出したらどんなことになるか、お前なら分かってるよな?」
道明寺はそう言うとニヤリと笑った。
つくしは道明寺の手を振りほどき急いで会議室を後にした。
そしていつの間にか駆け出し、目についた化粧室に飛び込むと個室に入って鍵をしめ
椅子代わりに便器の蓋へと腰かけ両手で顔を覆っていた。
どうしてこんなことになったんだろう。
心が重く感じられるのはどうしてなの?
そして私は再び思い知らされることになる。
「牧野さん凄いわね。どこの崇拝者?」
つくしは自分のデスクの上に置かれた真っ赤なバラの花束を見て心当たりのある人物を思い浮かべた。
花束の中にあるカードに書かれているTのイニシャル。
手始めがこれか・・・
******
つくしは朝の身支度にかかっていた。
昨夜は熟睡出来なかった。
なぜなら道明寺が夢の中に出て来たからだ。
鏡に映る自分の顔をしげしげと見た。
夢の中の自分は喜んで彼の胸に抱かれていた。
これはどういうことを意味しているのか?
自分にとっては決して望ましいことではないはずだ。
道明寺は電話を置いてコーヒーに手を伸ばした。
牧野に対する俺の判断は間違ってはいない。
そう決断づけるだけの根拠はどこから来るのか・・。
「支社長、本日の予定なのですが会食予定のY社から連絡がありまして
先方の常務が急きょ海外へ出張なさることになったそうで、申し訳ないのですが本日の会食は延期して欲しいとのことです」
「わかった」
道明寺はそう言うとほくそ笑んだ。
今夜は時間が出来た訳だな・・・・
牧野を目の前にして手に入れることが出来ないでいるなんて。
悶々として過ごしているこの状態は非常にまずいな。
主導権は今どっちだ?
俺か? いや牧野か?
主導権を牧野から奪い返さなければ。
******
「牧野さん、専務がお呼びです」
つくしは嫌な予感がした。
最近では専務と言う言葉を聞くと必ず道明寺が絡んでいるように思えるからだ。
案の定だった。
専務からの話はやはり道明寺絡みだった。
道明寺エステートの調査の件で夕方から日本支社での会議に参加してくれと言う話だ。
だがこの会議に道明寺が加わっているとはとても思えない。
が、それは考えが甘かった!
支社長自らが急きょこの会議を開くと言いだしたらしい。
先日の会議での問題点についての再考を求めたいとかなんとか・・・
なんてこと!
会議の参加者が私を含めて5人しかいないってどう言うことなの?
あとの4人は不動産部門を管轄する部長、副部長、建設会社の部長、そして道明寺。
あの日の会議の参加者は少なく見積もっても20人くらいはいたはずだ。
私は慎重にならざるを得ない。
何故ならば空いている席が道明寺の向かいの席しかないからだ。
今日の牧野はグレーのスーツだった。
ほどよく身体に沿ったきれいなラインで仕立てられている。
白いブラウスの襟元は少し開き気味で少しかがむと胸元が見えそうになっている。
牧野、勘弁してくれよ・・・
俺は自分の胃のあたりが熱く感じられてきた。
牧野は地盤改良の方法について熱心に説明をしている。
道明寺が咳払いをした。
4人の視線が俺に集まった。
「支社長、何かご意見でもありますか?」
ある。 牧野、お前のブラウスについて・・・
「いや、ちょっと空調が効いていないような気がするな」
「それは大変失礼しました」
そう言って不動産部門の男が席を立った。
「少し休憩をしよう」
俺はそう言うとゴクリと喉を鳴らして席をたった牧野の後を追った。

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道明寺に引き寄せられ彼の腕の中へと収まっていた。
「放して!」
つくしは言った。
だが道明寺は放すどころかつくしの身体をきつく抱きしめてきた。
見上げる彼の口が開いているのが見え、キスされると思った。
そんなことさせない。
そんなことされたら・・・
彼の顔が覆いかぶさってくる瞬間も必死でもがいて身体を引こうとしていた。
あの時と同じだな。
道明寺は数日前のことを思い出していた。
「やめて!お願い、やめて道明寺!」
腕の中でもがいているつくしの声が少しうわずっているのに気が付いた。
「・・・わかった」
そう言うと道明寺は腕の中のつくしを離した。
つくしはこれだけ距離を保てば理性は保てるとばかりに数歩後ろに下がると
唇をきゅっと結んだ。
道明寺はその引き結んだ唇に見惚れてしまっていたが、つくしが何か言うのを待っていた。
「二度とこんなことしないで!さもないと・・・」
「さもないと、何だ?」
つくしはその先が言葉に出なかった。
「牧野、俺は本気だ。俺はお前をこの手に取り戻すまで諦めないからな」
「取り戻すもなにも、あたし達は何も無かった。何も始まってなんていなかったわ」
牧野、そんなに睨むなよ。
そんなに睨んでも無駄だ。
俺は本気でお前のことを取り戻しに行くからな。
つくしは急いでドアに向かった。
身体がぶつからないように彼が脇へどいてくれるのを期待したが道明寺はその場を動かずに
つくしがドアへとたどり着く寸前に腕を掴んて引き留めてきた。
「ひとつ助言をしておくよ」
「な、なによ!」
「俺が本気を出したらどんなことになるか、お前なら分かってるよな?」
道明寺はそう言うとニヤリと笑った。
つくしは道明寺の手を振りほどき急いで会議室を後にした。
そしていつの間にか駆け出し、目についた化粧室に飛び込むと個室に入って鍵をしめ
椅子代わりに便器の蓋へと腰かけ両手で顔を覆っていた。
どうしてこんなことになったんだろう。
心が重く感じられるのはどうしてなの?
そして私は再び思い知らされることになる。
「牧野さん凄いわね。どこの崇拝者?」
つくしは自分のデスクの上に置かれた真っ赤なバラの花束を見て心当たりのある人物を思い浮かべた。
花束の中にあるカードに書かれているTのイニシャル。
手始めがこれか・・・
******
つくしは朝の身支度にかかっていた。
昨夜は熟睡出来なかった。
なぜなら道明寺が夢の中に出て来たからだ。
鏡に映る自分の顔をしげしげと見た。
夢の中の自分は喜んで彼の胸に抱かれていた。
これはどういうことを意味しているのか?
自分にとっては決して望ましいことではないはずだ。
道明寺は電話を置いてコーヒーに手を伸ばした。
牧野に対する俺の判断は間違ってはいない。
そう決断づけるだけの根拠はどこから来るのか・・。
「支社長、本日の予定なのですが会食予定のY社から連絡がありまして
先方の常務が急きょ海外へ出張なさることになったそうで、申し訳ないのですが本日の会食は延期して欲しいとのことです」
「わかった」
道明寺はそう言うとほくそ笑んだ。
今夜は時間が出来た訳だな・・・・
牧野を目の前にして手に入れることが出来ないでいるなんて。
悶々として過ごしているこの状態は非常にまずいな。
主導権は今どっちだ?
俺か? いや牧野か?
主導権を牧野から奪い返さなければ。
******
「牧野さん、専務がお呼びです」
つくしは嫌な予感がした。
最近では専務と言う言葉を聞くと必ず道明寺が絡んでいるように思えるからだ。
案の定だった。
専務からの話はやはり道明寺絡みだった。
道明寺エステートの調査の件で夕方から日本支社での会議に参加してくれと言う話だ。
だがこの会議に道明寺が加わっているとはとても思えない。
が、それは考えが甘かった!
支社長自らが急きょこの会議を開くと言いだしたらしい。
先日の会議での問題点についての再考を求めたいとかなんとか・・・
なんてこと!
会議の参加者が私を含めて5人しかいないってどう言うことなの?
あとの4人は不動産部門を管轄する部長、副部長、建設会社の部長、そして道明寺。
あの日の会議の参加者は少なく見積もっても20人くらいはいたはずだ。
私は慎重にならざるを得ない。
何故ならば空いている席が道明寺の向かいの席しかないからだ。
今日の牧野はグレーのスーツだった。
ほどよく身体に沿ったきれいなラインで仕立てられている。
白いブラウスの襟元は少し開き気味で少しかがむと胸元が見えそうになっている。
牧野、勘弁してくれよ・・・
俺は自分の胃のあたりが熱く感じられてきた。
牧野は地盤改良の方法について熱心に説明をしている。
道明寺が咳払いをした。
4人の視線が俺に集まった。
「支社長、何かご意見でもありますか?」
ある。 牧野、お前のブラウスについて・・・
「いや、ちょっと空調が効いていないような気がするな」
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俺はそう言うとゴクリと喉を鳴らして席をたった牧野の後を追った。

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Comment:2
コメント
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う*ちゃん様
いつもご訪問有難うございます。
司はつくしちゃんの胸元のチラ見でドキドキしています。
俺様は意外と純情なのですが、つくしちゃんの
頑なな態度に手をこまねいています。
どうしたらいいのでしょうか・・(>_<)
追う司に逃げるつくし。
なんだかストーカーになりそうですね。
え?もう立派なストーカーかもしれませんね(笑)
2人を応援して下さるのですね?
有難うございます!
その応援を励みに頑張って書きます!( ..)φ
こんなマイナーなサイトに応援有難うございます(多謝)
いつもご訪問有難うございます。
司はつくしちゃんの胸元のチラ見でドキドキしています。
俺様は意外と純情なのですが、つくしちゃんの
頑なな態度に手をこまねいています。
どうしたらいいのでしょうか・・(>_<)
追う司に逃げるつくし。
なんだかストーカーになりそうですね。
え?もう立派なストーカーかもしれませんね(笑)
2人を応援して下さるのですね?
有難うございます!
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アカシア
2015.09.05 20:41 | 編集
