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2016
04.05

第一級恋愛罪 23

ニューヨークで遭遇した人妻のストーカー・・・
それは姉ちゃんの知り合い、まあ友人と言った方がいいだろう。
だが今は二人の友人としての関係はどうやら微妙らしいが・・。
ただ相手が悪い。
夫は道明寺ホールディングスと取引のある大手インベストメントバンク(投資銀行)、日本でいうところの証券会社に近い存在の金融機関のCEO(最高経営責任者)ときた。
おまけに同じハーバードビジネススクール出身でリユニオン(同窓会)で顔を合わせたことがある。

そんな男の妻が姉ちゃんの友人。20歳以上も年が離れた男の二度目の妻。
このインベストメントバンクにはM&A(企業買収)のフィナンシャルアドバイザーとして道明寺に入ってもらっている関係もありパーティーでこの夫婦と何度か顔を会わせていた。
女と初めて会ったのはこの夫妻の家で開かれたホームパーティーでワイフは日本人ですと紹介されたときだ。
白人の金持ち男、それも自分より20歳以上も離れたような男と結婚するなんざ、金目当ての薄汚い女だと罵りたい気持ちを抑えながら始まった付き合いだった。

そしてそれは何度目かのパーティーからだった。
手始めはシャンパンをすすりながらの流し目、上目遣いから始まった。そのときすでに俺はこの女が姉ちゃん、椿の友人であると言うことを知っていた。それは女の口から聞かされたからというのではない。友人でもないのに友人面する奴らが多いのが金持ちの有名税のひとつだ。
だからもちろん姉ちゃんにも確認をした。まさかとは思ったがこの女は本当に姉ちゃんの友人のひとりだった。とは言ってもここ数年、つまり金持ちの白人男と結婚してからは付き合いが遠のいていたらしいが、姉ちゃんの口は何故か重くあまり多くを語ろうとはしなかった。

住まいはセントラルパークを一望できる豪奢なビルの最上階、つまりペントハウスだが俺のよりは格下だった。


「司さん、司さんとお呼びしてもよろしいでしょう?」
濃いアイシャドーと口紅を塗り、きつい香水の匂いを振り撒きながら声をかけてきた。

「これはどうもミセスベケット。お招きをありがとうございます」
「そんなミセスベケットなんて堅苦しい名前で呼ばないで真紀と呼んで」
「いえ。そうはいきません」
「でも椿とわたしは友達なのよ?」
「だからこそですよ。姉の友人ならしかるべき節度を持って対応しなければ失礼になりますからね」
「あら、案外堅い人なのね」
「椿から話を聞いた頃は手に負えない弟で、やんちゃばかりしてたなんて言ってたからわたしとも遊んでくれると思ったのに」
品を作って目をパチパチしてる女にいちいち心を動かされるなんてことはない。

「ご冗談を」 思わず鼻で笑いたかったが我慢をした。
「わたしには恋人がいますので他の女性と遊ぶなんてことは考えられません」
「そう?でもその恋人って方はご一緒ではないのね?」
「ええ。日本にいますから」と逞しい肩をすくめた。

「それならなおさらじゃない?恋人が日本にいるなら寂しわよね?」
「夫は、リチャードは会社の女の子に手をつけてるの。でもわたしは見て見ぬふりをしているわ。だからわたしが何をしても関心はないと思うわ」
「それに、わたし司さんに一目惚れしちゃったの」
「だから・・」

女が司のほうへと手を伸ばしてきた。
俺はその手を振り払った。何だよこの女は!男と後腐れのない関係を持ちたい人妻ってことか?俺に不倫相手になれって言いたいのか?冗談じゃねぇぞ!
そんな相手なんか出来るかよ!断る!

「てめぇ!気安くさわんじゃねぇよ!さっきから黙って聞いてりゃなに抜かしていやがる」
「俺はあんたが姉ちゃんの友人だって言うから黙って大人しくしていたが、いつまでもゴタゴタ言ってるんじゃねぇぞ!」

「でもわたし本気なの。リチャードとは別れるわ」
「わたしほどの女がここまで言ってるのよ、恥をかかせないで司さん?」

女はまるで俺が聞き分けのない子供のように笑っていやがる。
どういうつもりだこの女は?昼下がりの情事か危険な情事か知らねぇが俺を巻き込むつもりか?この女が何をしようが勝手だが俺を相手にするのは止めてくれ!
どうも何かがおかしいとは思ったが、その時はその何かがよくわからなかった。
ただ感じたのはまったく以て薄気味わりぃ女だと感じたことだ。



予想しないでもなかったがあの女が俺の周りをうろつくようになった。
あの女、自分の夫の地位を利用して俺に近づこうとしてくる。
姉ちゃんの友人だと言うから強硬な手段には出ず適当にあしらってはいたが、さすがにヤバイ。
そう思い姉ちゃんに聞けば真紀は心が病んでるのと来た!
姉ちゃん、それを何故早く言わなかったんだと責めれば真紀は本当にリチャードを愛しているのに彼には自分よりも若い女がいて捨てられるのが怖くて騒ぎ立てることも出来ず心が病んでしまったのよと来た!
姉ちゃん、心が病んでる女なんて怖ぇだろうが!
弟がどうなってもいいのかよ!

さすがに俺が住むペントハウスまで来ることは出来ないがこれが世に聞くストーカーと言うやつか。
行動はどんどんとエスカレートして来る気がした。
手紙が会社宛てに何通か届いた。あの女、手紙を夫の会社であるインベストメントバンクの封筒で出して来る。それもさもビジネスに関係ありの親展扱いで出して来やがる。
いまどき手紙かよと思っていたらメールが届くようになった。俺の会社の個人アドレスを知ってるのはあの女の夫だ。夫経由で手に入れたか。
まあ手紙もメールも一方通行の通信手段だからほっといた。
それにニューヨークでの俺の周りには常にSPもいたし、ひとりになることは少なかったから良かった。が、ストーカーというのは障害があればあるほど燃えるらしい。

だがよほど妄想が激しくなってきたのか、あの女、自分と俺が付き合っている。
そのことが夫にバレそうで怖いだなんてことがメールで送られて来るようになってきた。
誰が誰と付き合てるって?流石にこれはヤバイと思った。
相手は仮に夫が浮気をしているとしても大手インベストメントバングCEOの妻だ。
これには姉ちゃんも驚いたようで俺の身を案じることになった。
それにどこかの独身の女と浮名を流すのはいいとしても、人妻とじゃ立場が悪い。
俺はあきらじゃねぇしな。
それに相手は病んでる女だ。

そんなゴタゴタに巻き込まれる寸前に日本での社長就任が決まって帰国することになった。これであの女から逃れると思ったんだが、どうもそうは行かないらしいと姉ちゃんから電話を受けたわけだ。女が帰国して来る。俺を追って!!



****




「それでつくしちゃんが急遽司の公式の恋人になったってわけか?」
「けど牧野って女。面白そうだけど狙いをつけにくい女だよな?司はどう思う?」
「ああ、変な女だ」
「なに?それで牧野は司の隣に越して来たわけ?」
「ああ。姉ちゃんの鶴の一声で決まった」
「恋人が日本にいるなんて言ったんだもんな。だけどその恋人はマジでおまえを好きにならないあくまでもビジネスとして割り切れる女が良かったんだもんな?」
「で、今はこの隣にいる・・ねえこれから隣に行ってみる?」
「類!行くな!」

けどなんで俺の隣の部屋にあの女が・・

「いいじゃないか司。この際つくしちゃんにおまえの正常な性生活のサポートもお願いしたらどうだ?」
「なんか司にやにやしてるよね?」
「類もそう思うか?」
「だ、誰がにやにやしてんだよ!」

ああ。にやにやして悪いか?
信じられないかもしれないが何故か俺の頬は緩んでる。

「おい、司が本気になってるぞ?」
「あほか!誰があんな女に欲望を抱くんだよ!」
「おまえあの女に欲望を抱いたのか?」

司はあきらを睨んだ。
誰が本気だって?冗談じゃない。
それに誰があの女に欲望を感じたりするか!
あんな女気晴らし程度にしかなるかよ。
司は手にした酒をあおった。

今おもえば浅はかだが、あのときは牧野つくしみたいな女なら俺に煩わしい思いをさせることもないだろうし、ビジネスだと割り切れる相手だと思ったのが間違いだった。
なぜか俺はあの女を気にしてしまう。その思いが腹立たしくもあるし当惑もある。
なんで俺ほどの男があんな女に・・・
そうだ!俺ほどの男があんな女に振り回されるなんてその点が問題だ!
あの女はかりそめの恋人であって半年後にはさよならする女だ。
あのドンくさい女に振り回されるなんてことは・・

「総二郎、処女の女にはどうしたらいいんだ?」
「おい、まさか牧野つくしは処女なのか?」
「ああ。処女だ」
「あいつ自分からそう言った」
「26で処女かよ・・・スゲーな」

「それよりあきら。マジで頼む。人妻が来たらおまえに任せるからなんとかしてくれ!」
「俺、司が人にものを頼む姿を初めて見たような気がする・・」
「俺もそう思うよ、類」





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コメント
名無し様
人妻ストーカーにどう対処するのでしょうねぇ。
あきらにお願いしてなんとかなればいいのですが・・。
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.04.05 22:44 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.04.06 01:42 | 編集
チビ**ママ様
そうですね、司は知らず知らずのうちにつくしに嵌まってしまったようです。
彼女のよくわからない不思議な魅力に囚われたのでしょうか。
こちらはコメディタッチのお話ですので、ヤバイことにはならないと思います。
Collectorの方の司の闇は深いです。生まれた不幸を嘆き、自分の運命を憎む司です。
まだまだ先は長そうです。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.04.06 22:56 | 編集
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