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2016
04.01

第一級恋愛罪 22

思いがけず司の姉が来たことはいわば青天の霹靂だった。

「さあ、これでこれからの二人の関係がどうなるか理解できたわよね?つくしちゃん?」

三人はレストランからさらに上の階にあるバーラウンジへと場所を変えていた。
道明寺司の姉、椿は弟にかりそめの恋人を用意するように言ったのは自分だと話をした。
その理由はアメリカに住む自分の知り合いが弟のことを気に入ってしまい、しつこく追い回すようになったからということだった。


つくしはそんなことはこの日本でも当然のように起こり得ることだと思った。
今だってこうして三人でいてもチラチラとこちらを窺うような視線を感じる。
この男はどこにいても人目を惹く。それにこの姉もだ。
美貌の道明寺姉弟に目を奪われない人間がいたら見てみたい。
そんな美貌の傍にいる美には縁のなさそうなあたし。
この姉弟がバラの花だとすればあたしは雑草ってところ?
それにしても女に追い回されたくらいのことでかりそめの恋人が必要になるなんておかしくない?
つくしはさっそく思ったことを聞いてみることにした。

「お姉さん、ど、道明寺・・お、弟さんが女性にモテるのは今更じゃないですか?」

悔しいがこの男ならどこの国に行ったってモテるだろう。

「そうね・・我が弟を自慢するわけじゃないけど、司は確かにモテるわね」

「も、もしかしてその女性がストーカーになったんですか?」

待ってよ、もしそんな女性が現れて何かされたらどうしたらいいのよ?
いくらかりそめの恋人役を引き受けたからといっても実践は積んでいないんだからどうしたらいいのよ?
それにストーカーへの対処をかりそめの恋人なんかで出来るわけないじゃない!
いきなり刃物で切り付けられるとか、硫酸を顔に掛けられるとか、電車を待ってるときに後ろから突き飛ばされるとかそんな恐ろしい場面がつくしの頭の中を横切った。
ドラマの見過ぎだなんて思うかもしれないけどストーカー女の事件なんてシャレにならないくらいあるのよ?それがたまたまテレビや新聞に出てないってだけなんだから!
あたしが新聞の・・・それもうちの社の社会面に載るなんてことは絶対に嫌よ!
それにそんなことになったらクビ確実だ。

「つくしちゃん・・言いにくいんだけどね・・」

なんですかお姉さん?言いにくいことって?まさかとは思うけど・・
実はその女性は見た目は女性だけど本当は男性ですなんてことは言わないで欲しいんだけど。その点については一度この男に確認はしてはみたけど・・




「実は・・その女性って・・人妻なのよ・・」

人妻?

人妻のストーカー?

まさかこの男、他人の妻を寝取ったとかそんな男なの?
嘘!もしかして間男なの?
なんだ道明寺司って下衆野郎だったってこと?
こんないい男なのに勿体ない。

「おい、おまえ。いま変なこと考えてるだろ?」
「言っとくが俺は不倫相手じゃねぇぞ!」
「他人の女に手を出すほど飢えてねぇからな!」

言いながらこの男の米神に青筋が立つのが見えた。
道明寺司ってお姉さんの前じゃぜんぜん子供じゃない。
クールビューティだなんて思っていたけどさっきもレストランでの感情むき出しの言い合いとか意外な一面を見た気がした。


「司、止めなさい。まだあたしが話てるんだから」

お姉さんにたしなめられた男は舌打ちをすると両手を髪の毛の中に突っ込んで掻きむしっていた。

「くそっ!いらいらする」

椿の言い分が正しいのか正しくないのかわからなかったが、取りあえずその女性に対しての盾が必要だった。その盾の調達をどうするかと考えていたら帰国した日本の空港でたまたま出会ったのが牧野つくしだったと言うことだ。
そして何事も早いに越したことはないとばかりに今の状況が生まれていた。


話を聞けば聞くほど、道明寺司には申し訳ないが笑える。
それでもお姉さんにとってはかわいい弟が自分の知り合いの人妻に追いかけ回されるのは嫌だろうと思う。
自分の関係者だけに対応に苦慮しているのかもしれない。
ところでその相手の女性はアメリカ人?

「お姉さん、その女性ってアメリカ人ですか?」
「違うの。日本人」
「じゃあもしかして・・」つくしは嫌な予感がした。
「そうなのよつくしちゃん。彼女近々帰国して来るわ」

人妻のストーカー女が帰国して来る!
これからが本番ってこと?

「それでね、つくしちゃんには悪いんだけど近いうちに司のマンションに引っ越してくれない?」
「は?」
「姉ちゃんなんだよそれ?」
よく言った道明寺。


「だから・・司の部屋の隣にね・・」
「ちょ、ちょっと待って下さい!なんですかそれ?あたしはそんな約束なんてしてないし、なんですかそれ?」

「司、あんたの部屋の隣空いてるわよね?」

お姉さんそれはどういう了見なんですか?
あたしはあくまでもかりそめの恋人役を引き受けただけで、隣に住むとかなんて話はひと言も言っていませんが?

「つくしちゃん、心配しないでいいのよ?あのマンションは道明寺家のものだからお家賃とか全く必要はないのよ?」


頭が朦朧としてきた。
だがお姉さんが言いたいことは理解出来ていた。

「お姉さん確認してもいいですか?つまりあたしは道明寺・・いえ弟さんのかりそめの恋人を演じるために弟さんの隣の部屋で暮らせと言うことですか?」

「そうよ、つくしちゃんその通りよ」

「司、あんたわかってると思うけど、つくしちゃんに変なことするんじゃないわよ?」

「今のあんたの目は獲物を狙うような目になってるから」









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コメント
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dot 2016.04.04 17:06 | 編集
さと**ん様
人妻ストーカー。やはり考えるのはあきらですよね。
助言をもらうというより、あきらに丸投げでしょうか?(笑)
「間男」え?つくしの年齢で言わない?昭和ですかね?(笑)
獲物を狙う目・・椿さんにはそう見えたようです。
何しろ司は野獣ですからなんだかんだと言いながら気になるようです(^^♪
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.04.04 23:05 | 編集
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