何故か急に男の態度が変わったような気がした。
かりそめの恋人を演じてもらうにあたって俺たちは何も話はしてなかったよな?
その部分も含めてお互いにもう少し知り合うべきだろうと言われた。
聞きたいことがあるなら答えてやるぞと言われ、では遠慮なくとばかりに質問することにした。勿論オフレコだ。
つくしは熱いコーヒーをひと口飲むと男の表情を見つめた。
「えっと・・では道明寺さん・・じゃなくて道明寺・・」
「・・さっきの話の続きなんですが・・」
司は相変わらずじっとつくしの顔を見ていた。
『 おまえの正常な性生活を維持するために・・・ 』
にやにや男が言った言葉が気になっていた。
正常な性生活?
その意味するところは・・・
「なんだ?」
「ご気分を害されたら申し訳ないんですが・・・」
「言えよ」
「お友達の方がおっしゃていましたけど・・せ、正常な性・・」
つくしは自分の思考が普段なら口にしないようなことを口走ろうとしていたことに気づくと言葉を選んだ。
「あの!かりそめの恋人が必要なのは・・こ、こんなこと聞いたら・・」
「なんだよ?聞きたいことがあれば聞け」
「あなたはゲイですか?」
自分でも驚くほど単刀直入に聞いていた。
アメリカに恋人がいるけど、その恋人の存在を隠したい。
それはもしかして相手が男性かもしれないとつくしは思った。
道明寺司はかっこいい。
女性にもてるくらいだから男性から人気があってもおかしくはない。
それにアメリカのゲイ社会では東洋の男性はもてると聞いた。
「い、いいんですよ?日本でも権利が認められてきましたから。でもなかなか世間は認めては・・」つくしは軽く咳払いをすると言葉を継いだ。
「それに心配しないで下さい。記事になんてしませんから絶対に」
他人の性的嗜好についてはリベラルだと自負していた。
だからもし男性の恋人がいると言われても変な反応を示してしまうことだけはしないようにと思った。だが否定せずいつまでも黙っているところを見ると、もしかしてと言う思いが湧き上がって来た。道明寺司がゲイだなんて・・信じられない思いだ。さぞ世間の女性は残念がるだろう。でもまさか・・?
「それともバイセクシャル?」
つくしは頭の中にあった言葉をそのまま口にすると自分で言っておいて赤面した。
部屋の中に奇妙な空気が流れたような気がして二人とも黙りこんだままだ。
考えてみればあまりよく知らない男性に向かってゲイだのバイだの言うことではない。
「ごめんなさい、よけいなお世話よね。あなたの性・・生活だものね?」
・・まったくその通りだ・・
おまえには関係ない話だ。
この女は今なんて言った?
俺がゲイ?
思わず笑い出しそうになった。
よりにもよって俺のことをゲイだと思ってるだなんてひどく侮辱された気持ちだった。
こいつは俺を怒らせるためにわざと言ったのか?
俺は正真正銘のヘテロ(異性愛者)だ!
司がにやりとした。
「がっかりさせて悪いが俺はゲイじゃないしバイでもない」
さっきまで無表情だった男の顔が変わった。
これで会話の接ぎ穂が出来たとばかりにつくしは聞いた。
「あ、じゃあサドとかマゾとか?」
「あほかおまえは。さっきから聞いてりゃ、どう考えてもおまえは俺に対して何か反感を抱いているように思えるが、俺がおまえに何かしたか?」
「あ、あたしは別に反感なんて抱いていませんが?」
嫌味な男だって思っているだけです。
ただこの男の不興を買って独占インタビューが駄目になるなんてことは避けたい。
どちらにせよこれからの半年間は良好な関係でいたい。
この女についての第一印象はドンくさいのひと言だった。
その印象は昨日まで変わらなかった。
パーティー会場で酒を飲み過ぎた女はわけの分からないことを言ったと思えば、気分が悪いとばかりに座り込んでしまいその場から動くことさえ出来ない始末。
送っていくから家はどこだと聞けばここだと答える女。
ホテルの部屋にでも放り込んでも良かったが、恋人と言う立ち位置の女ひとりをホテルに残していくわけにもいかず仕方なく連れ帰った。
酔って意識のない女をベッドへと横たえるとき見たのは胸元から覗いているレースだった。
胸は大きくはなさそうだが黒のドレスを着た肌はきれいだった。
スカートがまくれ上がって覗いたストッキングを履いた脚の形もよかった。
この女以前はなんの飾り気もない真っ白なパンツだったけど、胸元から覗いているものは女らしかった。
ドンくさい女にも意外と女らしいところがあるもんだと驚いた。
そのとき頭の端に浮かんだのはこの女ベッドではどんなふうなんだ?
真面目で仕事熱心な女は奔放に乱れ叫び声を上げるのかという思いだった。
司はもっと深くこの女について知りたくてたまらなくなった。
とりあえず身体のほうから・・
「おまえ、俺にばっかり答えさせるけど俺の質問にも答えろ」
「男と寝た経験は?」
まさかないはずはないよな?
この女は26だろ?
「そ、そんなことあなたに関係ないでしょ?」
「まあそうだ。俺には関係ない」
「だがおまえも俺がゲイだのバイだの聞いてきたが?」
「で?」
「でってなにが?」
「俺たちは恋人関係にあるんだ。互いの性生活について知ってるのは当然だろ?」
「だからってどうしてあたしの経験を聞く必要があるのよ?」
どうしてあたしがこの男に自分の男性経験を話さないといけないのよ!
なんであたしがこんなばつの悪い思いをしないといけないのよ!
司は顎に手を添えると考える素振りを見せた。
「まさかおまえレズか?」
「ち、違います!」
どうしてこんな質問に答えなければいけないのかと思いつつも仕方なく話した。
「ろ、6年前から大人ですけど?」口ごもった。
「何人と寝た?」
「本当に経験があるのか?」
「し、失礼ね!男とつきあったことくらいあります!」
ただし大惨事になる前に別れたけど。
あれは短いロマンスだった・・
「おい、まさかおまえSMの女王様とかじゃないよな?」
「違います!」
「も、もういい加減にしてよ!どうしてあたしがあんたにそんなこと言われないといけないのよ!」
「あたしは処女なんだからそんなこと出来るわけないでしょ!」
つくしは自分の口から出た言葉にぎょっとした。
どうしよう・・あたし今なんて言った?
「へぇーおまえ処女か」
司はつくしと目が合うなり片方の眉をあげると挑戦的な視線を送ってきた。
しっかり聞かれてる。
お願い。今のは聞かなかったことにして・・・
つくしは目を閉じると忘却の彼方へと旅立とうとしていた。
「そうか。おまえまだ処女なんだ」
司は思わず頬を緩めそうになっていた。

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にやにや男が言った言葉が気になっていた。
正常な性生活?
その意味するところは・・・
「なんだ?」
「ご気分を害されたら申し訳ないんですが・・・」
「言えよ」
「お友達の方がおっしゃていましたけど・・せ、正常な性・・」
つくしは自分の思考が普段なら口にしないようなことを口走ろうとしていたことに気づくと言葉を選んだ。
「あの!かりそめの恋人が必要なのは・・こ、こんなこと聞いたら・・」
「なんだよ?聞きたいことがあれば聞け」
「あなたはゲイですか?」
自分でも驚くほど単刀直入に聞いていた。
アメリカに恋人がいるけど、その恋人の存在を隠したい。
それはもしかして相手が男性かもしれないとつくしは思った。
道明寺司はかっこいい。
女性にもてるくらいだから男性から人気があってもおかしくはない。
それにアメリカのゲイ社会では東洋の男性はもてると聞いた。
「い、いいんですよ?日本でも権利が認められてきましたから。でもなかなか世間は認めては・・」つくしは軽く咳払いをすると言葉を継いだ。
「それに心配しないで下さい。記事になんてしませんから絶対に」
他人の性的嗜好についてはリベラルだと自負していた。
だからもし男性の恋人がいると言われても変な反応を示してしまうことだけはしないようにと思った。だが否定せずいつまでも黙っているところを見ると、もしかしてと言う思いが湧き上がって来た。道明寺司がゲイだなんて・・信じられない思いだ。さぞ世間の女性は残念がるだろう。でもまさか・・?
「それともバイセクシャル?」
つくしは頭の中にあった言葉をそのまま口にすると自分で言っておいて赤面した。
部屋の中に奇妙な空気が流れたような気がして二人とも黙りこんだままだ。
考えてみればあまりよく知らない男性に向かってゲイだのバイだの言うことではない。
「ごめんなさい、よけいなお世話よね。あなたの性・・生活だものね?」
・・まったくその通りだ・・
おまえには関係ない話だ。
この女は今なんて言った?
俺がゲイ?
思わず笑い出しそうになった。
よりにもよって俺のことをゲイだと思ってるだなんてひどく侮辱された気持ちだった。
こいつは俺を怒らせるためにわざと言ったのか?
俺は正真正銘のヘテロ(異性愛者)だ!
司がにやりとした。
「がっかりさせて悪いが俺はゲイじゃないしバイでもない」
さっきまで無表情だった男の顔が変わった。
これで会話の接ぎ穂が出来たとばかりにつくしは聞いた。
「あ、じゃあサドとかマゾとか?」
「あほかおまえは。さっきから聞いてりゃ、どう考えてもおまえは俺に対して何か反感を抱いているように思えるが、俺がおまえに何かしたか?」
「あ、あたしは別に反感なんて抱いていませんが?」
嫌味な男だって思っているだけです。
ただこの男の不興を買って独占インタビューが駄目になるなんてことは避けたい。
どちらにせよこれからの半年間は良好な関係でいたい。
この女についての第一印象はドンくさいのひと言だった。
その印象は昨日まで変わらなかった。
パーティー会場で酒を飲み過ぎた女はわけの分からないことを言ったと思えば、気分が悪いとばかりに座り込んでしまいその場から動くことさえ出来ない始末。
送っていくから家はどこだと聞けばここだと答える女。
ホテルの部屋にでも放り込んでも良かったが、恋人と言う立ち位置の女ひとりをホテルに残していくわけにもいかず仕方なく連れ帰った。
酔って意識のない女をベッドへと横たえるとき見たのは胸元から覗いているレースだった。
胸は大きくはなさそうだが黒のドレスを着た肌はきれいだった。
スカートがまくれ上がって覗いたストッキングを履いた脚の形もよかった。
この女以前はなんの飾り気もない真っ白なパンツだったけど、胸元から覗いているものは女らしかった。
ドンくさい女にも意外と女らしいところがあるもんだと驚いた。
そのとき頭の端に浮かんだのはこの女ベッドではどんなふうなんだ?
真面目で仕事熱心な女は奔放に乱れ叫び声を上げるのかという思いだった。
司はもっと深くこの女について知りたくてたまらなくなった。
とりあえず身体のほうから・・
「おまえ、俺にばっかり答えさせるけど俺の質問にも答えろ」
「男と寝た経験は?」
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この女は26だろ?
「そ、そんなことあなたに関係ないでしょ?」
「まあそうだ。俺には関係ない」
「だがおまえも俺がゲイだのバイだの聞いてきたが?」
「で?」
「でってなにが?」
「俺たちは恋人関係にあるんだ。互いの性生活について知ってるのは当然だろ?」
「だからってどうしてあたしの経験を聞く必要があるのよ?」
どうしてあたしがこの男に自分の男性経験を話さないといけないのよ!
なんであたしがこんなばつの悪い思いをしないといけないのよ!
司は顎に手を添えると考える素振りを見せた。
「まさかおまえレズか?」
「ち、違います!」
どうしてこんな質問に答えなければいけないのかと思いつつも仕方なく話した。
「ろ、6年前から大人ですけど?」口ごもった。
「何人と寝た?」
「本当に経験があるのか?」
「し、失礼ね!男とつきあったことくらいあります!」
ただし大惨事になる前に別れたけど。
あれは短いロマンスだった・・
「おい、まさかおまえSMの女王様とかじゃないよな?」
「違います!」
「も、もういい加減にしてよ!どうしてあたしがあんたにそんなこと言われないといけないのよ!」
「あたしは処女なんだからそんなこと出来るわけないでしょ!」
つくしは自分の口から出た言葉にぎょっとした。
どうしよう・・あたし今なんて言った?
「へぇーおまえ処女か」
司はつくしと目が合うなり片方の眉をあげると挑戦的な視線を送ってきた。
しっかり聞かれてる。
お願い。今のは聞かなかったことにして・・・
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「そうか。おまえまだ処女なんだ」
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Comment:2
コメント
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さと**ん様
笑に突き落とし、御曹司では『エロ才』を命名頂きましたので二人の会話も不正コメントを誘発してしまったようで申し訳ないですm(__)m
とりあえず体の方から・・なんて男なんでしょうね(≧▽≦)
まあこの年齢の男なんてそんなものかと(´艸`*)
なんだかこのつくしはとんでもないことを普通に聞くという人間でして、記者としての好奇心を丸出しにしています。
それも直球ですから(笑)2人して直球勝負してます。
座布団3枚ありがとうございます!(^^♪
20歳で大人ですから、その点をつくしちゃんは協調していますが未経験者です。
処〇←はじかれまくりですか!では明日もはじかれて・・(笑)
処〇と知って頬を緩める司に鼻を膨らませるエ*魔様(≧▽≦)
いい男の対処法了解しました!エ*魔様、力加減はどのくらいがいいのでしょうか?
しかし私は実践出来そうにありませんので、御曹司のつくしちゃんにでもお願いしようかと考えています。
確か具体的にそのような行いをしたと言う記憶がない・・あ、フェラーリであったでしょうか?
そんな話ばかり書くなと言われたらどうしようかと思いつつ舞台の上から叫ばせて頂いています( ..)φ
いつも楽しいコメントを有難うございます(^^)
笑に突き落とし、御曹司では『エロ才』を命名頂きましたので二人の会話も不正コメントを誘発してしまったようで申し訳ないですm(__)m
とりあえず体の方から・・なんて男なんでしょうね(≧▽≦)
まあこの年齢の男なんてそんなものかと(´艸`*)
なんだかこのつくしはとんでもないことを普通に聞くという人間でして、記者としての好奇心を丸出しにしています。
それも直球ですから(笑)2人して直球勝負してます。
座布団3枚ありがとうございます!(^^♪
20歳で大人ですから、その点をつくしちゃんは協調していますが未経験者です。
処〇←はじかれまくりですか!では明日もはじかれて・・(笑)
処〇と知って頬を緩める司に鼻を膨らませるエ*魔様(≧▽≦)
いい男の対処法了解しました!エ*魔様、力加減はどのくらいがいいのでしょうか?
しかし私は実践出来そうにありませんので、御曹司のつくしちゃんにでもお願いしようかと考えています。
確か具体的にそのような行いをしたと言う記憶がない・・あ、フェラーリであったでしょうか?
そんな話ばかり書くなと言われたらどうしようかと思いつつ舞台の上から叫ばせて頂いています( ..)φ
いつも楽しいコメントを有難うございます(^^)
アカシア
2016.03.24 21:48 | 編集
