この女、意外と怒りっぽい女だ。
何やら怒っていやがる。
あれか?女の生理ってやつか?
それとも・・あれか? 月経前なんとかってやつか?
いや、妊娠したんだから生理はないか・・
「なんであたしがあんたと一緒に住まなきゃならないのよ!」
「あ?なんでってなにがなんでだよ?」
「た、たとえあたし達が同じ苗字になったからって一緒に住む必然性がどこにあるのよ?」
「だいいち、あたしは仕事では牧野つくしを使うんだからね!どーみょーじなんて名前なんて名乗らないから!」
こんな男と同居だなんて!
だいだいあたしたち、付き合ったこともないよの?
ん?
まぁ、付き合う以前の問題で、付き合うつもりなんて無かったし・・・
つき合おうとか言われてもないし・・
そりゃそうよね?あたし達ただの身体だけの関係だもん。
それもたった一度だけ。
それに仮に付き合おうなんて言われても、あたしにはそんなつもりなんて一切ない。
「俺の子供を危険な目に合わせるわけにはいかねぇ」
「な、何が危険な目なのよ?」
「おまえは理解できねぇかもしれねぇけど、俺の子供を身ごもってる女が、ましてや入籍までした女がそのへんフラフラされて子供に何かあったらどうすんだよ?」
司は苛立った表情を浮かべながら言った。
「おまえ、その子供の重要性を理解してないだろ?」
「その子供の命はおまえだけのもんじゃねぇんだよ!」
な、なに言ってるのよ。この子はあたしの子供よ!
「あ、あたし達の結婚が誰かにバレてるわけじゃあるまいし、そんなこと心配ない・・」
つくしはばかばかしいとばかりの顔で言った。
「いつかはバレる」司は肩をすくめてみせた。
「バレない!」
司は大きなほほ笑みを浮かべて意気揚々と言った。
「てめぇ・・バラしてやろうか?」
「な、なんでバラすのよ! バラされて困るのはあんたの方でしょう?」
「いや。俺はかまわねぇ」
司は忌々しいほど毅然とした態度で答えていた。
本当はかまうけどよ。
そうなったらおまえはどうするんだ?
こいつ・・・なんだよその顔は!
ポカーンと口開けてるんじぇねえぞ!
この女の性格はよーくわかったからな!
こいつ天邪鬼だからな。
素直にうんって言う女じゃねぇてことは学習済みだ。
おまえは詰めが甘いんだっ!
俺をやり込めようなんて100年早ぇんだよ!
そんなボケボケした女、ひとりにしといたらどーなるか分かったもんじゃねぇ。
学者センセーは現実社会の厳しさを知らねぇからそんなことが言えるんだ。
顕微鏡の中の世界しかしらねぇような女に何がわかるってんだ。
今のおまえの身体は値千金・・いや値億金か?
まったく始末におえねぇ女だよな!この女はよ!
世の中のルールってのを分からせてやる必要があるようだな。
つくしは一瞬ぼんやりと司を見ていたがハッとしたように言った。
「ちょっと・・・ねぇ。どーみょーじさん。あ、あたし達ふたりとも、契約書の内容を守る義務があるのよね・・だから・・」
ふたりの間に一瞬沈黙があった。
「だから?なんだよ?」
つくしはきまりが悪くなってきた。
「そのぅ・・一緒に住むっていっても寝室は当然別よね?」
「いーや。当然一緒だ!」
司は真剣な顔つきで言った。
「え?うそ!」なんで一緒の寝室なのよ!
「バーカ。嘘に決まってるだろうが!誰がおまえなんかと一緒に寝るか!」
「おまえと一緒に寝るくらいならタランチュラと一緒に寝てやるよ!」
すぐにきっぱりと否定され笑われた。
「全然笑えないっ!」
悔しい!さっきからこの男にいいように遊ばれてる!
あんたなんて・・毒蜘蛛に喰われちゃえ!
***
リムジンのドアが開いて降りたところはマンションの前だった。
「あれ?ホテルじゃないんだ?」
「あほ。あんな所に住んでたらマスコミの餌食になっちまうだろうが」
「おい、きょろきょろしてねぇでついてこい!」
つくしはアッカンベーをして、それでも仕方なく男の後について行った。
エントランスロビーに靴音を響かせながら歩く男が振り向いた。
「おまえ意外と怒りっぽいんだな」
「怒りっぽくなんてないわよ!あ、あんたが・・あたしを怒らせるようなことを言うから・・」
「そんなにイライラしてると子供に障るんじゃねえのか?」
つくしは何かを言いかけたがすぐに口を閉じた。
「い、いいから早く・・早く部屋に連れてってよ」
ふたりでエレベーターに乗り込むと司はポケットに手を突っ込んで後ろの壁へともたれかかった。
司はしずかに上昇する箱のなか、つくしの後ろ姿を見ていた。
この女、俺と結婚した自覚なんて全然なさそうだな・・・
それでも姉ちゃんの子供の話しを聞いてからのこいつは神妙な顔してたよな。
しかし世田谷の邸だって屁とも思ってねぇよな?
あの邸を見たら普通の人間ならかなりビビると思うぞ?
こいつ社会的地位とかほとんど気にしてないみたいだしな。
まあこんな女だから滋とダチでいられるってわけだろうけど。サル女も相当変わった女だしな。
ここはもともと投資目的で購入していたマンションでまだ誰も住んではいなかった。
自分が住むつもりも無かったからモデルハウス仕様のままで、生活感もなにもなかった。
どうせこれからもここで長時間過ごす予定なんてなかった。
つくしは連れてこられた住居を見まわしていた。
司はつくしを連れて部屋のなかを歩きはじめた。
ここがリビングであっちがキッチン。
廊下の先には部屋があってそのひとつがおまえの部屋だと言われた。
バスルームはそれぞれの部屋についているからお互いにプライバシーは保てるだろ?
と言われた。
とにかく今の二人が気をつけるのは人の噂になるようなことは避けるということで意見が一致した。
子供のことは・・まだきちんと話合ってなかったけど、取りあえず二人の間に漂うぎこちなさだけは除かれたような気がした。

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それとも・・あれか? 月経前なんとかってやつか?
いや、妊娠したんだから生理はないか・・
「なんであたしがあんたと一緒に住まなきゃならないのよ!」
「あ?なんでってなにがなんでだよ?」
「た、たとえあたし達が同じ苗字になったからって一緒に住む必然性がどこにあるのよ?」
「だいいち、あたしは仕事では牧野つくしを使うんだからね!どーみょーじなんて名前なんて名乗らないから!」
こんな男と同居だなんて!
だいだいあたしたち、付き合ったこともないよの?
ん?
まぁ、付き合う以前の問題で、付き合うつもりなんて無かったし・・・
つき合おうとか言われてもないし・・
そりゃそうよね?あたし達ただの身体だけの関係だもん。
それもたった一度だけ。
それに仮に付き合おうなんて言われても、あたしにはそんなつもりなんて一切ない。
「俺の子供を危険な目に合わせるわけにはいかねぇ」
「な、何が危険な目なのよ?」
「おまえは理解できねぇかもしれねぇけど、俺の子供を身ごもってる女が、ましてや入籍までした女がそのへんフラフラされて子供に何かあったらどうすんだよ?」
司は苛立った表情を浮かべながら言った。
「おまえ、その子供の重要性を理解してないだろ?」
「その子供の命はおまえだけのもんじゃねぇんだよ!」
な、なに言ってるのよ。この子はあたしの子供よ!
「あ、あたし達の結婚が誰かにバレてるわけじゃあるまいし、そんなこと心配ない・・」
つくしはばかばかしいとばかりの顔で言った。
「いつかはバレる」司は肩をすくめてみせた。
「バレない!」
司は大きなほほ笑みを浮かべて意気揚々と言った。
「てめぇ・・バラしてやろうか?」
「な、なんでバラすのよ! バラされて困るのはあんたの方でしょう?」
「いや。俺はかまわねぇ」
司は忌々しいほど毅然とした態度で答えていた。
本当はかまうけどよ。
そうなったらおまえはどうするんだ?
こいつ・・・なんだよその顔は!
ポカーンと口開けてるんじぇねえぞ!
この女の性格はよーくわかったからな!
こいつ天邪鬼だからな。
素直にうんって言う女じゃねぇてことは学習済みだ。
おまえは詰めが甘いんだっ!
俺をやり込めようなんて100年早ぇんだよ!
そんなボケボケした女、ひとりにしといたらどーなるか分かったもんじゃねぇ。
学者センセーは現実社会の厳しさを知らねぇからそんなことが言えるんだ。
顕微鏡の中の世界しかしらねぇような女に何がわかるってんだ。
今のおまえの身体は値千金・・いや値億金か?
まったく始末におえねぇ女だよな!この女はよ!
世の中のルールってのを分からせてやる必要があるようだな。
つくしは一瞬ぼんやりと司を見ていたがハッとしたように言った。
「ちょっと・・・ねぇ。どーみょーじさん。あ、あたし達ふたりとも、契約書の内容を守る義務があるのよね・・だから・・」
ふたりの間に一瞬沈黙があった。
「だから?なんだよ?」
つくしはきまりが悪くなってきた。
「そのぅ・・一緒に住むっていっても寝室は当然別よね?」
「いーや。当然一緒だ!」
司は真剣な顔つきで言った。
「え?うそ!」なんで一緒の寝室なのよ!
「バーカ。嘘に決まってるだろうが!誰がおまえなんかと一緒に寝るか!」
「おまえと一緒に寝るくらいならタランチュラと一緒に寝てやるよ!」
すぐにきっぱりと否定され笑われた。
「全然笑えないっ!」
悔しい!さっきからこの男にいいように遊ばれてる!
あんたなんて・・毒蜘蛛に喰われちゃえ!
***
リムジンのドアが開いて降りたところはマンションの前だった。
「あれ?ホテルじゃないんだ?」
「あほ。あんな所に住んでたらマスコミの餌食になっちまうだろうが」
「おい、きょろきょろしてねぇでついてこい!」
つくしはアッカンベーをして、それでも仕方なく男の後について行った。
エントランスロビーに靴音を響かせながら歩く男が振り向いた。
「おまえ意外と怒りっぽいんだな」
「怒りっぽくなんてないわよ!あ、あんたが・・あたしを怒らせるようなことを言うから・・」
「そんなにイライラしてると子供に障るんじゃねえのか?」
つくしは何かを言いかけたがすぐに口を閉じた。
「い、いいから早く・・早く部屋に連れてってよ」
ふたりでエレベーターに乗り込むと司はポケットに手を突っ込んで後ろの壁へともたれかかった。
司はしずかに上昇する箱のなか、つくしの後ろ姿を見ていた。
この女、俺と結婚した自覚なんて全然なさそうだな・・・
それでも姉ちゃんの子供の話しを聞いてからのこいつは神妙な顔してたよな。
しかし世田谷の邸だって屁とも思ってねぇよな?
あの邸を見たら普通の人間ならかなりビビると思うぞ?
こいつ社会的地位とかほとんど気にしてないみたいだしな。
まあこんな女だから滋とダチでいられるってわけだろうけど。サル女も相当変わった女だしな。
ここはもともと投資目的で購入していたマンションでまだ誰も住んではいなかった。
自分が住むつもりも無かったからモデルハウス仕様のままで、生活感もなにもなかった。
どうせこれからもここで長時間過ごす予定なんてなかった。
つくしは連れてこられた住居を見まわしていた。
司はつくしを連れて部屋のなかを歩きはじめた。
ここがリビングであっちがキッチン。
廊下の先には部屋があってそのひとつがおまえの部屋だと言われた。
バスルームはそれぞれの部屋についているからお互いにプライバシーは保てるだろ?
と言われた。
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Comment:2
コメント
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サ*ラ様
こんにちは。
相変らず全く噛み合わない二人・・(笑)本当にもう・・ねぇ・・
積極的同居を選択した司はいったい何をしたいのやら・・(´艸`*)
無意識に独占欲が出てきた司はつくしが気になってきました。
今後の共同生活ですね?相変らずの噛み合わない二人だと思われます!
いつになったらこの二人の話しは通じ合うことが出来るのか?(笑)
念の為、このお話はコメディ風味ですからね?(笑)
こんなつかつくでもお許し頂けるサ*ラ様に感謝です。
が、ここだけの話し明日は重い暗い方のお話なんです!
どんよりしたお話ですが読んで頂けるでしょうか?(笑)←え、笑えるお話ではありませんでしたね。
連日のコメント有難うございました(^^)
こんにちは。
相変らず全く噛み合わない二人・・(笑)本当にもう・・ねぇ・・
積極的同居を選択した司はいったい何をしたいのやら・・(´艸`*)
無意識に独占欲が出てきた司はつくしが気になってきました。
今後の共同生活ですね?相変らずの噛み合わない二人だと思われます!
いつになったらこの二人の話しは通じ合うことが出来るのか?(笑)
念の為、このお話はコメディ風味ですからね?(笑)
こんなつかつくでもお許し頂けるサ*ラ様に感謝です。
が、ここだけの話し明日は重い暗い方のお話なんです!
どんよりしたお話ですが読んで頂けるでしょうか?(笑)←え、笑えるお話ではありませんでしたね。
連日のコメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.01.10 22:58 | 編集
